15 平日は学生
くすくす、と笑い声がかすかに聞こえる。
ああ、なんて美しいんだろう?男は、呟いてその場を離れた。
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「音木さーん!」
パタパタ、一人の少女が走り寄る。
「ねぇねぇ音木さん!お願いがあるの!」
まだ、幼さの残る顔に満面の笑みを浮かべて、少女は話を進める。
「あのね、アレとってほしいんだ」
そういって、指さすのは天井まである高さの本棚。
その一番上にある、本を指さしているらしい。
「どれ?」そう、少女に返すのは美しい少女、白雪である。
「あの、赤い本!」
「わかった、ちょっと待って」
そう一言告げると、白雪は飛び取る。
「わぁ!すごーい!やっぱり、音木さんは運動神経がいいね!」
そういうと、ぱちぱち拍手をおくる少女は、
白雪の同級生でありクラスメイトでもある。
「じゃぁ、いくね」白雪はそっと、その場を離れる。
白雪たち、暗殺者にとって人付き合いは不要である。
よって、友人を一人も作らないように過ごしてはいるのだが、彼女の容姿と性格とか結構好かれるのだ。よって、先ほど話しかけていた少女も例外ではない。
「あー、行っちゃった・・・むぅ、仲良くなれると思ったのにー」
ただ、白雪が歩くだけで視線はすべて白雪に向く。
すべて、は言い過ぎかもしれないがたいていの人は見るものだ。
今も、例外ではなくたくさんの視線を集めている。
「・・・・」
白雪は、その中に奇妙な視線があることに気付いた。
「・・・なに?」
そう、私を・・・どうかするつもり?
そう、ぼそりと呟いて白雪は帰路についた。
暗殺者といえど、教養は必要というのが家の考えである。
学校は、少しばかり面倒。そう思う、白雪はたいていボーっと授業を聞いているが成績は良く素行もいい。よって、教師にも気に入られているが、きっと彼女の正体など考えもつかないだろう。だから、今日も何食わぬ顔をして白雪は学校に行くのだった。
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