12 ”刺殺”と”毒殺”
「今日はどうして」
そう、白雪が呟くとお母様はそれに答えた。
「今日はね、ちょっと動きにくいのよね。ほら、見てごらんなさい。警視庁の面々がいるでしょ?」
「ほんと、面倒。時間も短時間しかないからね」
そう、いって2人は離れる。
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「一緒におどりませんか?」
そういって、美しいドレス、きれいな靴の美しい女性に手を伸ばす男。
「ふふ、私と?」
そう、呟いたのはお母様、麗良だ。彼女は、音木家に嫁入りしたが相当な腕前だ。腕で、嫁を選ぶわけではないが、彼女の腕は凄まじかった。
不敵にほほ笑む麗良に気付かない男は、そっとダンスをかわした麗らを追いかける。そして、男が気付いた時には遅い。
「そこまで、私と?」
人影も、何もない薄暗い場所に立つ麗良と男。
「ええ、美しいあなたと・・・」
そっと、近づく男に麗良も近づく。
「ごめんなさいね、私。旦那様しか愛せませんの」
そういって、ピンヒールを首元に刺す。
「・・・!!!」
その場をそっと、麗良は離れるとヒールについた血をパッとはらう。
「ふふ、私は”王”だけしか、愛せませんのよ?私の、得意な”刺殺”で死ねることを誉れなさいな。」
そうつぶやいて、またそのヒールに足を滑り込ませるとまたパーティーホールへと忍び込むのだった。
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「ふむ、これはおいしい」
そう、綺麗な顔の男は呟いた。
彼の持つのは、年代物のワイン。
彼は、どこの産地だろうかと思考を巡らせつつあたりを見回す。
「おや、気分がすぐれないのですか?」
彼、皇は気分がすぐれなさそうな女性に声をかける。
女は、彼の顔を見た後少しほほを染めて、
「ええ、少し」
「では、外で新鮮な空気でも吸いましょう。そうすれば、少しは落ち着きますでしょう?」
バルコニーにでた、2人。女は、少し嬉しそうにするも・・・・
少し苦しみだした。
「・・・く、るしい・・・」
「そうですね、即効性のない毒ですからね・・・」
皇は、淡々と呟いて不敵にほほ笑んだ。
「・・・ぐ、は・・・あ・な、たは・・・」
「俺の得意な、”毒殺”で・・・」
皇は、床に這いつくばる女を見下ろした。
「永久なる眠りを・・・」
皇は、そうつぶやいてその場を去った。後に残るは、横たわる女性の死体。
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「あら、あなた。」
「シンディー、癒してくれ」
「あら、私のほうこそ」
そういって、そっと抱き合う2人。
「いやだわ、仕事でも。あなた以外の男と近寄るのは」
「俺のほうこそ、」
「でも、もう少しの辛抱ね。ほとんど、私たちのカワイイ”赤ずきん”が終わらせてくれているもの」
そういって、皇の口に口ずけする。
「さすがだな、歴代でもあれほどの者はいなかったようだからな」
皇は、ひとりでに呟いて、カワイイ娘、白雪を思う。
黒髪、なびかせる赤いずきんの少女。今では、女性へと変貌途中だがそれゆえの魅力が現れている。
あの子は、凄まじい才能の持ち主。




