白い空、青い雲。
頭の上でバラバラになったカラフルな雲を、指先でなぞって、繋ぎ合わせるように目を閉じた。
隙間から零れそうになる群青を、必死に白で埋め尽くす。
遠く、遠いほうへ。
端の、端のほうへ。
雲の裏側にある色を想像してみて、僕はただの白、と答えた。
うっすらと浮かび上がる朱色に明日を染めさせて、今を透明にした。
指を筆の代わりにして、白に染まった雲を再び着色しよう。って。
大それたことはできないけれど、とりあえず足元から色を変えてみようと地に手をついた。
こんなに黒く染まってしまった白を、僕は変えていける?
まだ色すらも握ったことのない左手で顔を半分、隠して、また半分で笑ってみせた。
明日はきっとまだ藍色で、どうしようもなく色は濃く、僕の目を抉ろうとするんだろう。
もう1本くらい手があれば、上手く自分で描けるのかな。
前を見つめて、手を顔から離した。
左手の手のひらは真っ赤に染まっていて、頭の中が悲鳴を上げた。
前から目を離して、手を眺めた僕をまた僕が呪う。
右手を執って、僕は目の前の画用紙に穴を開ける。
隙間から零れる群青は、必死に足元の白を、変えようとしていた。
結局、僕はまた筆を執らないといけない。
Twitter:@dakusanno