序章~儀式
結構長いので面倒くさかったら前書きは読み飛ばしてください。
どうもMIDONAです。
『僕たちの八重奏』、通称、僕八のほうもろくに書いてないのに新作です。
僕八とは、書き時(?)が別なので、両方平行して進めて生きたいと思います。更新速度は遅めになると思いますが、よろしくお願いします。
今回は、僕八とは打って変わって、本格派(?)ファンタジーです。
あらすじに、科学と魔法が交差するとき……(以下略)と打ちそうになりましたが、自重しました(笑)
本来、読書をするときはファンタジーが基本なので、学園ものとかよりもファンタジーのほうが本職だったりします。
内容は、あらすじのとおりですが、今後、陰陽師系とか、なぜ科学界(現世?)に魔法が存在しないのかとか、世界の崩壊と創造とか、いろいろ書いていけたらいいと思います。
文体のほうは、冲方さんの『シュピーゲル』シリーズの文体を勝手に起用させていただきました。(著作権とか大丈夫だよね……)
使ってみたら、情報圧縮しやすいし、無駄な接続詞も省けるので、バトル物には結構向いている文体だと思います。
読み方は、記号は読まずに流れで読んでいただければよろしいかと……
文体は、作者なりの解釈なので原版のほうと違ってたらスミマセン。
あと、そのうち普通の三人称に化けるかもしれませんが、その辺は大目に見てください(笑)
そんなんですが、読んでいただけたら幸いです。
あと、感想もらえると作者のやる気がupします。
何が言いたいのか分からなくなりましたが、剣と魔法の物語、よろしくお願いします。
それでは、どうぞ!
「おじさん、何でこんなにラノベが必要なの?」
素朴な質問をする少年/目の前にライトノベルの山。
「神様のお供え物にするためだよ」
答える男性=須藤孝――黒い目+白髪の混じり始めた黒髪=日本人の特徴/防弾チョッキ/長ズボン/後の儀式の警備につくための服装。
顔に笑顔――儀式の準備を手伝える年齢になった少年への成長を喜ぶ笑み。
「ふぅん」
少年――神様がライトノベルなんて読むの、という当たり前の疑問すら返さず/注意深く周りを見渡す。
「炎舞、そろそろ運ぶから手伝ってくれ」 呼ばれて駆け寄る少年=紅蓮炎舞――黒い目+肌色の肌=こちらも日本人の特徴/さっぱりとしたショートカット/長袖のTシャツ/紺のジーパン/スニーカー。大人への階段を上り始めたばかりな勇敢さと幼さが共存。
「これから運べばいい?」
周りを見るのをやめ、一番手前にある本の山へ手を伸ばす。
「ああ、頼む」
炎舞のほうを振り返りうなずく/自分の手にも本の山――炎舞が本を持ったのを見て森の奥へ歩き出す。
慌てて追う炎舞――手にある本の重みでバランスを崩す。
「大丈夫か?」
呼びかける孝――転びかけた炎舞への気遣い。
「うん。有香だって大変だろうから、僕だってがんばらなきゃ!」
少年の力強い返答/同時に悲しそうな様子が見て取れる。
「悪いな、うちの娘のために。そうだな、有香が大仕事を任されたんだから俺たちが出来ることを少しでもしなきゃな」
娘の大仕事=生贄――仕事なんてしていられないほどの悲しみ/同じように悲しい気持ちでいるだろう少年の前なのでその気持ちを押し殺す。
「それに早く終わらせて有香と食事食べたいし」
「そうだな、早く終わらせよう」
再び戻る笑顔/心からの喜び――自分の娘のことを気遣ってくれる少年の気持ち/気を使えるようになった少年の成長。
「それじゃあ、先行くよ!」
炎舞はそういい、走っていった。
「あ、炎舞、お父さんお帰り!」
炎舞と孝を出迎えた少女=須藤有香――毛先のカールした短めのショートヘア/日本人らしい特徴/細い足/膝上までのスカート/レースの白い靴下/ピンクのスニーカー。皿をテーブルに並べ、調理で大変な母を子供ながらに手助け。
『ただいま』
土足のまま家の中へ入る。
入ってすぐにリビング――赤いカーペット/カーペットの上に机/机の上にたくさんの料理。
向かって奥と左に一部屋づつ。
「お帰りなさい。もうすぐ出来るから待っててね」
奥の部屋=キッチンから声――有香の母=須藤宏美。迎えにも出れないほど調理の真っ只中。
「お父さんがこっちで、炎舞はこっち」
有香に指された席にそれぞれ座る。
炎舞――入り口から一番近い席/孝――炎舞の向かい。
有香――最後の皿を炎舞の前に置く/席に着く――炎舞の右隣。
「これで最後ね」
台所から出てくる女性=宏美――胸の辺りまであるパーマのかかった髪/日本人らしい特徴/エプロン/手に先ほどまで作っていたローストビーフ/膝下まである白いスカート。
エプロンをはずす/席につく――有香の向かい=孝の左隣。
机に食べきれないほど沢山の世界各国の料理――しゃぶしゃぶ=日本/エビチリ=中国/フライドポテト=アメリカ/ピザ=イタリア/ローストビーフ=イギリス。炎舞には何の料理かも分からないものまである。
「炎舞君、火をつけてもらっていい?」
宏美の声――シャブシャブ用のコンロをさす。
「わかった」
そういって指をコンロに近づける/指の先から火が出る=発火能力/コンロに火がつく。
「ありがとう。今日は二人のお祝いだから有香も炎舞君も沢山食べてね。村のみんなも色々届けてくれたし、お母さんも頑張ったから」
「今日は有香のお祝いだから俺は関係ないでしょ、おばさん」
炎舞――自分もお祝いということに疑問。
「いいえ、あなたもよ。もしかして忘れちゃってる?」
思案――誕生日・何かに合格――どちらも否/初めての仕事、と一瞬思ったが祝うようなことでもないので即却下――やはり心当たり無し。
「何も思い当たること無いけど…」
「やだ、今日で丁度あなたが来てから六年目の記念日じゃない!」
この村=アラスカにある超能力者の集落=通称隠れ家――世界各国で超能力に目覚めた者を保護/教育――超科学的力を世界から隠す/世界で起こる超自然現象に対抗するため。
炎舞――六歳で能力に目覚める/暴走/自宅に引火――親に怖がられ路上に捨てられる/隠れ家の住民により保護――そのまま隠れ家の住人に。
「いいよね、炎舞は。一年に二回もお祝いしてもらえて」
有香――生まれ/育ち――共に隠れ家。
「そんなことないって」
悲しそうな声――隠れ家に来た日=親に捨てられた日――この日が来る度に親に見捨てられたことに対する傷の深さを実感する。
「それに今日は有香のお祝いでもあるだろ」
「うん」
うつむいて答える有香――触れてはいけない話題に触れてしまったことに気づく。
「とりあえず食べようぜ。あ、最後のピザもらい!」
とりあえず話題転換――最後一切れのピザに手を伸ばす。
「あ、ずるい!」
遅れて手を伸ばす有香――二人の視線がぶつかる。
「いいよ、有香にあげる」
最後の食事だから食べたいものを食べさせてやりたい――炎舞の正直な思い/同時にずっと心の中に抱いていた思いをぶつける覚悟を持つ。
「有香は本当に生贄になんてなるの?」
いきなりきつい口調――慎重に入りだしたいと思ったが気持ちが高ぶり失敗。
「うん」
有香の落ち着いた口調/それが炎舞にさらに火をつけた。
「何でだよ?別に生贄になんてなる必要ないだろ?」
「私が選ばれたから。それに、私がやめたらほかの子がやらなくならなくなるでしょ。私一人が我慢すれば、ほかの子がつらい思いする必要ないならそれでいいの」
ほかの子の代わりに自分が犠牲になる――有香の本心/信念。
「おじさんもおばさんもいいの?」
有香を説得できそうに無いので、親を説得。
「仕方ないだろ、有香が選ばれたんだから」
声を低めて言う孝――自分の娘をこんな形で失うことへの悲しみ/怒り。
「だったら、儀式なんてやめちゃえば…」
「そういうわけにはいかないの。おばさんが子供のとき一回生贄の子が逃げ出して行われないことがあったの。その年はぜんぜん作物も育たず、沢山の人が餓死したわ」
儀式=豊作の儀式――行わない年は必ず不作になり、やめようにもやめられない。
「でも…」
言葉に詰まる炎舞――さすがに言葉が見つからない。
「須藤有香はいるか?」
突然玄関から声――生贄を迎えに来た男=村長――白い肌/淡褐色の目/白く長いひげ/むき出しの頭/顔のあちこちに皺/手に杖/丸まった背。生きてきた年月と威厳が同時に感じ取れる。
周りに三人の従者――白人/黄色人種/黒人――みな20代前半ほど。
「もうそんな時間ですか?」
驚く宏美――食事に夢中になりすぎて時間を忘れていた/すでに儀式の30分前――準備が全て終わり警備などがしかれ生贄が置かれる時間。
「そうだ。有香こちらへ」
村長の落ち着いた思い声/有香が席から立ち上がり、村長の前へ。
「準備はいいか?」
「はい」
落ち着いた声――心に何かを言い聞かせる。
「それじゃあ、行くぞ」
そういい去っていく村長と従者+有香/ただ見送るしかない炎舞+孝+宏美。
「俺も、そろそろ警備に着かなきゃいけないから」
暗く小さな声――外に出る孝。
「おばさん、有香をとめなくていいの?とめるならいまだよ」
「炎舞君はこのままおうちに帰るのよ。一人で帰れる?送っていこうか?」
儀式に携わるもの意外は自宅待機――儀式を邪魔しようとするものを出さないため。
炎舞の家=寮――保護された未成年は成人まで寮で集団生活。
「いいよ、一人で帰れるから!」
慌てて答える炎舞――手と首を振って必死で断る。
「それじゃあ、また明日ね」
今にも消え入りそうな声。
「うん、またね」
そういい残し走り出す炎舞――寮ではなく森の方。
後ろからは、宏美の鳴く声が聞こえていた。
真ん中にそびえる岩の塔/塔を囲うようにして書かれた円形の幾何学模様――村の広場。
それを囲む10人の修道服=儀式を執り行う者達。 そのまた周りを囲む男たち――白人/黒人/黒髪/金髪/碧眼/緑目/さまざまな地域の人達――20代から50代まで20人ほど=儀式を警備する村人。
そこから近くも遠くも無い位置にかすかに輝く炎=発火能力。
その主である炎舞――寮へは行かず道ではなく森の中を横切って広場へ直行/一番警備の薄い塔の裏手が見える位置から有香を助ける方法を思案中。
塔の上に横たわる有香=一糸まとわぬ姿=熟睡中――おそらく催眠術か催眠薬によるもの。
すでに円を囲むものたちがわけの分からぬ言葉を発している――呪文か何か。 光りだす幾何学的模様/光出す塔/有香の上でねじれる景色――おそらく儀式の終わり近く。
あせる炎舞――いまだに手段が見つからず。
儀式に見入る警備の者達――思考を中断/無言で走り出す炎舞。
それに気づく男/炎舞が手のひらに炎を浮かべる。
近づくにつれ、男の顔がハッキリとする/立ち止まる炎舞――男=孝。
「おじさん、有香を助けに行くからどいて」
呼びかける炎舞/手の炎が消える。
「炎舞、戻りなさい」
孝と目が合う/不意に視界が霞む/孝の姿が消える。
異変に気づく炎舞――知覚操作《視覚系》=孝の能力。
前方90度に火炎放射――孝がいるだろう方向を全面的にカバー。
目にも留まらぬ速さで孝に迫る炎/直撃/炎上。
悶える孝/炎に気づき集まってくる大人たち/再び走り出す炎舞。
一斉に銃を向けられる/自分の周りに炎を展開/炎舞の姿が歪む=陽炎。
飛来する銃弾/僅かにずれて通過。
前方からの放水=放水能力/周りに展開していた炎を前方へ。
衝突/立ち上る水蒸気/押し返す炎/術者に直撃/炎上。
再び向けられる銃口/立ち止まる/振り返る。
右手を挙げる/上空に無数の炎=細く短い棒の形。
右手を降ろす/飛び出す炎/銃口に進入――弾の爆薬に引火/暴発――銃がすべて鉄塊と化す。
塔の前面にたどり着く。
「やれ!」
叫ぶ放水能力者=焼き爛れた顔――体の火を自らの能力で消した跡。
階段の一段目で止まる/振り返る。
四方に無数の水の槍――一斉に迫る/全方向に炎の壁を形成/衝突。
炎舞――無傷/再び階段を上り出す。
放水能力者が右手を挙げる/再び槍を作り出す/耐えられず倒れる/周りの大人たちが炎舞に迫る。
「もうよい!」
不意に響く村長の声――警備の大人たちの後ろから。
一斉に止まる大人たち/気にせず階段を登る炎舞。 有香の上の空間のゆがみが激しくなる/穴ができる――2メートルほどの大きさ/森の景色が写る。
有香の体が宙に浮く/炎舞が右手を伸ばす。
「有香ぁー!!」――炎舞の叫び。
有香が穴に飲まれ始める/炎舞がすんでのところで手を掴む/有香の体が完全に飲まれる/地上で踏ん張る炎舞/穴が小さくなる/炎舞の体も浮き始める/飲み込まれる。
穴が消えた後塔の上には何も残らなかった。