暇潰し
「名前はいりません」
いきなりリアの事を睨み出した少女。その豹変っぷりに、リアがたじたじになる。
訳が分からなかった。
まず、リアを除く全ての人間が死んだ筈なのに、彼女は生きていた。
安全地帯が何処にも無いような地獄絵図だったのだ。生存できる人間なんて一人も居る訳が無い。
更にこの少女、何も持ち合わせていない。
名前も出自も何が起きたかさえも、何も分かっていない。外見以上の情報が得られない。
そして今、彼女はリアを睨んでいる。
リアはただ、何も無い彼女に名前を付けてやろうとしただけだ。
何も無い筈なのに――いや、彼女には、何かがある?
「······ねぇ、キミ」
「······なんですか」
リアにビビーンと電流が走った。
これは都合が良いと思った。三日ただ変わり映えのしない風景を歩いているだけで暇していたところだったのだ。
『彼女が何者なのか知る』――これは良い暇つぶしになるだろう。
「ボクと一緒に行動しない?」
直前に彼女の地雷を踏み抜いた事など何も気にしていない様子で、リアが提案した。
言わばこれは謎解きゲームだ。彼女の態度や表情などをヒントに、彼女に関する情報を丸裸にする。
全てが不可解で包まれた様な彼女を攻略対象にすと超高難易度なゲームになりそうだが、不老不死のリアには生憎と時間がたっぷりあった。百年だろうと千年だろうとゲーム出来る。
問題は、未だにリアを睨んでいる少女が承諾してくれるか、だ。
先の一瞬でリアは少女に嫌われた。何故かはまだ分からないが、少女は『名前』の事で何か大切なモノを持っている。
まずはそこから紐解いていこう、とリアはアタリを付けた。
「いいですよ」
「まじで?ヤッタ〜」
そして案外、少女はリアの提案をあっさり承諾した。
しかし、彼女はまだリアの事を睨んでいる。好いているのか嫌っているのか分からないし、行動の動機も読めない。アベコベだ。
まるで、人間と同じ思考回路が出来ないかの様だ。
「――人間じゃないのかな?」
人の形をしているだけで、その中身は違うのかもしれない。
よくよく考えてみれば、外見に汚れ一つ無いのもおかしな話だ。
粉々になった建物や人間の骨が風に乗って運ばれてくるこの環境に置ける彼女は、綺麗すぎて最早「異物」だ。
――「人の皮を被った異物」。意外としっくり来るかもしれない。
「これからよろしくね、異物ちゃん」
「『キミ』と呼んで下さい」
地雷の『名前』に再び触れたところで、改造人間による謎少女解読ゲームが幕を空けた。




