確かに嫉妬はしたけれど〜公爵令嬢は本音を叫ぶ〜
脳内で公爵令嬢が叫び出したのをそのまま書き出して肉付けしたお話。
前後を色々考えていただきたいという希望があります。
「……確かに嫉妬はしておりますわ。けれどそれは問題の令嬢にではなく、あなたにですのよ、王太子殿下」
王立学園の中庭にて。
友人として仲良く付き合っている愛らしい男爵令嬢が、自身の婚約者である公爵令嬢にいじめられていると聞いた王太子は、それは良くないと婚約者を呼び出し「淑女の鑑と言われる君が、よりにもよって嫉妬やいじめなどという見苦しい真似をするとは思わなかった」と咎めたのだが。
恐ろしいほど静かな声音でそう返され、王太子は「え」と、とても間の抜けた声を上げてしまった。
それがスイッチを入れてしまったらしい。婚約者は瞬時に噴火した。
「こちらは学業に加えて王妃教育やら社交やら政務やらで、いっそ四人に分裂したいくらい忙しくしておりますのに!! 一方の殿下は可愛い可愛い令嬢と延々長々イチャイチャイチャイチャ、それはそれは楽しい時間をたぁくさん過ごしていらっしゃるだなんて、何ですのそれずるすぎますわ! わたくしはあなたと婚約しているからこそこれだけ忙しくしているというのに、変でしょうおかしいでしょうそう思いませんこと!? わたくしにも癒しの時間を、せめて丸一日くらいはいただきたいですわ!! ああああモフりたい癒されたい我が家の可愛いお猫様方をぎゅうううっとしたいいいいい!!」
…………魂の叫びであった。
ついでに、「男爵令嬢をいじめるだなんて無意味かつ非生産的なことをする暇があるなら、真っ先に自宅に帰って愛しい愛しいお猫様方に埋もれましてよ!! いっそ婚約を破棄なり解消なりしてくだされば、遠慮なくモフりタイムを堪能できますのに!! 今すぐ即座にそうしてくださるなら、わたくし生涯の忠誠を殿下に捧げますわ!! ご存知のように我が公爵家は、今更王家との繋がりなど不要なほどに栄えておりますし、殿下との婚約がなくなったところで痛くも痒くもありませんもの!!」と、百パーセント本気の目と声で言われた。
よほど疲れて限界なのか、もともと王太子に恋愛感情など抱いていなかったか、抱いていたが綺麗さっぱり消え去ったのか……ともあれ、男爵令嬢をいじめる理由や時間など彼女には皆無だということはよく分かった。分からされた。
何とも言えない気分で額を押さえ俯く王太子に、公爵令嬢は「ご用件はそれだけでしたら、わたくしはこれで失礼させていただきますわ。予定が詰まっておりますので」と見本のようなカーテシーを披露してから、優雅さに似合わぬ恐ろしく速い足取りで去っていった。
……一人残された王太子は、ぽつりとこうつぶやく。
「……欲しいのは、忠誠ではなく愛情なんだが……」
え、無理だろ。
うっかり漏れ出た影たちの本音は、幸か不幸か未来の国王の耳に届くことはなかった。
さて、お二人の婚約は一体どうなることやら(すっとぼけ)
たぶん影の皆さんで賭けにならない賭けをやってそうです。不敬?知られなければ無問題ですよね。
王太子の努力が上手くいけばワンチャンあるでしょうが、公爵令嬢にとっての不動のトップはお猫様、次に家族や友人がずらりと続くのでまあ望みはかなり薄いかと。
話に出てきただけの男爵令嬢が秒で遠ざけられることだけは確定していますけど、別にそれが公爵令嬢のポイント加算になるわけでもありませんしね。
令嬢のパパ公爵が廃太子の可能性も視野に入れて動いてそうなので、半分くらい手遅れの領域に入ってますが王太子には頑張ってほしいものです。婚約者が存分にお猫様をモフれるように。




