プロローグ:シリウスの孫
世界は日々、疲弊していっている。
世界を作った神は、弱っていく地球を見て悲しそうにため息をついた。
『もはやここまで…。わしが初めて作った世界というだけで、これまでいろいろなものから守り、時には恵みを何度も与えてきたが、ヒューマンという生命を作ってから地球はここまで弱ってしまった…』
年老いた神の名はシリウス。これまで、世界を司る神としていろんな世界を作り育ててきたが、歳のせいでこの仕事から退くことを決めた老いぼれであった。
『おじい様…』
昔のことを懐かしんでいたシリウスの後ろに控えていた少女がシリウスに声をかけた。
『おぉ、ルナよ。…ごらん。ここにある世界すべて、わしが育ててきたものだ』
「ルナ」と呼ばれた少女はシリウスが作った世界を見て思わず感嘆の声をあげた。
『きれいですわ。本当に…』
見とれているルナにシリウスは嬉しそうにほほ笑んだ。
ルナは作られた世界を見まわした後、地球を見て目を細めた。
『おじい様、この地球という世界、もう取り返しがつかなくなってますわ』
『あぁ、そうなんだ。だが、わしが最初に作った世界だけあって、思い入れが深くてね…』
気恥ずかしそうに笑うシリウスに、ルナはシリウスの手を取って笑顔で話を始めた。
『おじい様、私にこの世界をくださいませんか?』
『え?地球をかい?!…でもねぇ…』
シリウスはいきなりのことに驚きルナから視線をゆっくり外した。
(困った…ほかの世界だったら、まだ若いルナに丁度いいと簡単に上げることができるが、崩壊寸前の地球は…)
『クスッ…おじい様!私はもう、立派な神の端くれですわ。だから、安心して任せてくださいませ』
とびっきりの笑顔で話すルナにシリウスは根負けし、地球を手に取ると、ルナの手に渡した。
『しょうがない。かわいい孫の頼みだ』
『ありがとうございますわ』
ルナは嬉しそうに地球を眺め、シリウスにお礼を言った。
『それではおじい様。地球をしっかり育て上げますわね!』
ルナはシリウスにぎゅっと抱き着いた後、スキップをしながら家に帰っていった。
『フゥー。後は後任に任せるだけじゃな…』
シリウスは自分の子供たちとも呼べる世界を名残惜しそうに眺めた後、部屋を後にした。
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