第91話 兄妹 THE LAST MASTER その1
はぁ~。ほんと情けないよ……。
あの黒い獣が実体化した瞬間――こっちに流れが傾いたと思ったんだけどな。俺とエイドリアンの連携も悪くなかっし。エデンだって、冷静に周りを見てくれてた。
……なのに、どうしてこうなっちゃったんだか。
結局、言い訳っぽく聞こえるかもしれないけどさ。本当はこの邪神との戦いだって、なんやかんやで上手くいく予定だったんだよ。
でもさ――
今の俺は。邪神テスカポリカの目の前で、無様にも仰向けにぶっ倒れている。それだけはどう言ったって言い逃れは出来ない。
「まぁ早い話が、俺達は奴に……邪神テスカポリカに負けたのだ……」
さて。
この、外界とは隔絶された魔力結界のドームの中ってのは、けっこう神秘的な世界でさ、こうやって仰向けにぶっ倒れながら上を見上げていると、ぼやーっと白く光る天井がまるでシャボン玉みたいなんだ。
多分、魔力の膜が太陽の光を反射して、虹色にキラキラと光ってると思うんだけど……。やっぱ、こっちの世界は不思議だよな――。
魔力だよ?
そんな非科学的なものが実在するって言うんだから、本当に呆れちゃうよな。
でもさ。やっぱ、こっちの世界も変な所で科学的っていうか……常識的っていうか……。
まいっちゃったよ。『火を燃やせば、酸素がなくなる』こんな小学生でも知っている単純なことに、俺達はどうして気が付かなかったんだろうか……。




