表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

75/101

第75話 徴兵官殺し その4

会場に響くのは割れんばかりの歓声。

そして、決勝戦の開始を今か今かと待ちわびる大観衆の熱気。


「お兄ちゃん……」


一年ぶりに立つ大舞台を目の前にしてレイラは小さく呟いた。


今日、この闘技場の中に兄のカイルが来ている。それは勘などと言う曖昧なものではなく、レイラにとってもはや確信だった。





「後始末は俺に任せて、お前は逃げろ」


あの日。そう言って、カイルは静かに微笑んだ。


その笑顔は、妹を安心させる為に見せたカイルなりの精一杯の強がり。そして責任の取り方だった。


その時――


妹が犯してしまった“人殺し”という事実を、カイルは何の躊躇もなく肩代わりした。そして妹を逃がすためなら、あらゆる責任を自らが引き受ける覚悟を決めた。


茂みに倒れている徴兵官と2人の兵士。 はたまた剣を抜いて遠巻きに様子を伺うしか手のない兵士たち。


そして、見えない目で周囲を探るように這いずり回る狡猾な男――


あの場の混乱の結末を、レイラは知らない。


ただ一つ分かっているのは、その後「役人殺し」の罪で指名手配されたのが兄・カイルだったことだ。


そして――


その結果として、実際に剣を振るったはずのレイラには、裁きの手は一切及ばなかった。




兄は逃げる直前に「必ず迎えに行く。だから、それまであの場所で待っていてくれ」と言った。


それは再会の約束のはずだったのに――


待てど暮らせど、兄は二度と姿を現さなかった。 風の便りすら、影ひとつすら、彼女に届くことはなかった。





レイラは、そのゆっくりとした足取りで決勝に残った2人の選手が待つ舞台へと登る。すると会場はより一層大きな歓声に包まれた。


ついに『第三回英雄杯』の決勝戦が始まるのだ。


もちろん試合開始の合図はこの国の救国の英雄レイラ=バレンティン。そして向かい合うはエルドラ人の生き残りドーマ=エルドラドに、謎に満ちた砂漠の少年エデン=カスピ。


二人は試合開始の掛け声と共に激突する。お互い様子見などは無い最初から全力の闘いが――今、幕を開ける。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ