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8

目を開けるとそこは昔使っていた懐かしい台所であった。


鍋がコトコトと音を立てている。


玄関から男性のただいまという声が聞こえてくる。


戻ってきたのである。


男性が近づいて、名前を呼ばれる。


振り返った瞬間、思わず胸に飛び込んでしまった。


男性は、いきなり抱きつかれて戸惑っている。


「清さん、お帰りなさい」

 

「突然、抱きついて来るから驚いたよ」


「ごめなさい、今日は嬉しいことがあって思わず抱きついてしまいました。料理、もう少しで出来るので待っていてください」


料理を作り終えると、服を着替えてきた清さんと二人ならんでテーブルを囲んで食事をする。


あの頃確かにしていた普通のことが、今現実にあるのにまるで夢のようだった。


どうか覚めないで、このままあなたのそばにいたい。


この時間がずっと続いて欲しい。


そう願ってしまう。


今度の休みに映画館に行こう、映画が終わったらどこに二人で散歩しよう。


そんな約束までしてしまった。


食事を終え、洗い物を済ませると、風呂に入り、寝る準備を始める。


彼は、すでに布団に入っており、寝る準備をしていた。


電気を消すが、なかなか眠れない。


眠りたくない、眠ってしまって目を覚ましたときに現実世界に戻ってきてしまっているかもしれないからである。


意識が遠退いていく感覚。


鳥のさえずりが聞こえる。


いつの間には眠ってしまったようである。


身体を起こし、急いで辺りを見渡す、幸いまだ戻っていないようだ。


隣に彼がいることを確かめ、彼の手に触れる。


布団を片付け、部屋を出ると、朝食の準備を始める。


テキパキと朝食の準備をし、白米に味噌汁、鮭の塩焼きが出来上がる。


少しすると、彼が起きてきた。


二人で一緒に朝食を食べた後、彼が仕事に行く準備を始める。


玄関に向かい、彼が私に言う。


「いってきます」


「気をつけていってらっしゃい」


戸が閉じられる。


最後に彼の姿をもう一度、そう思い扉を開けると、眩しい光が辺りを照らし、思わず目を閉じる。



目を開けるとそこは、あの写真館だった。


女性が椅子に座っていたが、立ち上がり老婦に話しかける。


「おかえりなさいませ、朝日さま」



窓をみてみると、薄明かりが部屋を照らしていた。




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