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花火の開始時刻まで三十分になり、祖父と共に準備をする。
美夜は、手さげ鞄に飲み物やタオル、虫除けスプレー、手持ち扇風機などをいれていく。
「美夜、準備できたよ」
「じゃあ、お祖父ちゃん行こうか」
家から外に出てて、少し歩くと人気の少ないベンチにやって来る。
ここに来る前から楽しみで仕方なかった。
美夜は、夏の風物詩で一番花火が好きなのである。
その場所は、祖父が教えてくれた花火がよく見える特等席だという。
今日は、美夜と祖父の二人だけの特等席である。
祖父が腕時計を見るとちょうど開始時刻になっていた。
次の瞬間、花火が上がる音がすると、空に花火が打ち上がる。
美夜は、花火をみる。
「お祖父ちゃん、花火綺麗だね」
「そうだね。美夜」
美夜は、鞄から携帯を取り出すと花火の写真を撮ったり、祖父の写真を撮ったりした。
祖父も楽しそうに花火をみている。
「お祖父ちゃん、こっち向いて」
祖父が振り返ると、美夜が写真を撮る。
カシャ
色々な形の花火が上がって楽しかった。
美夜は、手提げ鞄から飲み物を取り出すと、祖父に渡す。
「お祖父ちゃん、お茶飲む?」
「ありがとう、もらうよ」
そのあと鞄からちょっとしたお菓子などを食べたりして花火大会を楽しむことが出来た。
花火が終わり、写真館に戻る途中、美夜たちのように花火を見ていたであろう人たちが、歩いている。
写真館に着くと、祖父が美夜に尋ねてくる。
「汗をかいただろう。お風呂に入るといい」
「うん。じゃあお風呂に入るね」
美夜は、鞄を置くと、着替えを持って脱衣所に向かうと、風呂場に入り簡単にシャワーをすると風呂場から出てくる。
ドライヤーをしようと思ったのだか暑すぎて扇風機で髪の毛を乾かすことにした。
「涼しいー」
祖父がキッチンで何かを作っているようである。
「出来たよ。美夜」
祖父は出来上がった料理を運んでくるとテーブルに料理が置かれる。
「冷やし中華だよ」
二人分の冷やし中華がテーブルに置かれる。
実は夕食を早めに食べていたためお腹が空いていたのである。
「ありがとう、お祖父ちゃん」
「召し上がれ」
「いただきます」
美夜は、箸を持つと冷やし中華を食べ始める。
美味しそうに食べる美夜の顔をみて嬉しい気持ちになる祖父。
「お祖父ちゃんも食べないの」
「ああ、食べるよ」
祖父も美夜に言われて食べ始める。
食べ終わると、二人で食器を片付ける。
祖父が食器を洗う担当で美夜がその食器を拭く担当である。
それが終わると祖父の部屋に移動すると隣通しに布団を二人分敷くと横になり、電気を消し布団に入ると他愛のない話を祖父とする。
「楽しかったね。お祖父ちゃん」
「そうだな」
「また来年も見たいね」
「お祖父ちゃんで良いのか」
「うーん」
私はちょっと悩むふりをポーズを取る。
「やっぱり友達と見る方がいいか」
「でも、違うよさがあることに気づけたから。きっとどっちも良いんだよ」
「そうか。そうだね。それに気づけた美夜は素敵だね」
「そうかな?」
「そうだよ。もう遅いそろそろ寝よう」
「もう寝ちゃうの?」
「年寄りはもう寝る時間なんだよ」
「わかったよ。お休みお祖父ちゃん」
「お休み、美夜」
しばらくすると、祖父の寝息が聞こえてくる。
私はなかなか寝付けず祖父の方を見ると月夜に照らされている祖父の寝顔が何だか可愛く見てえしまう。
シワシワの顔に優しそうな可愛らし目を瞑って眠っている。
しばらく見ていると、眠気が襲ってきて私も布団に戻ると眠りについた。