19
約束の満月の夜がやってきた。
(舞そろそろ来るかな?)
そんなことを考えていたら、写真館のドアが開かれた。
そこには、いつもとは雰囲気が違う、少し緊張した様子の舞が立っていた。
「いらっしゃいませ、舞。もしかして、緊張してる?」
「まあね、だって何年ぶりの再会な訳だし、何を話そうかなとか色々考えたり…」
「まあ、そうだよね。まだ時間あるから、ゆっくり考えればいいよ」
「そうだね。ありがとう」
そういうと、茶と菓子をテーブルに並べ終えると、スタジオを出ていく。
舞には、1人過ごす時間が必要だと思ったからだ。
2階に上がり、時間になるまでやることがないので、本を読むことにした。
「そろそろかな」
携帯を見ると時間が夜の10時30分を示していた。
そろそろスタジオに戻ることにし、本を片付けた。
その後、機材の準備し終えると、時刻は夜の11時になっていた。
そろそろなので、舞に戻る際の注意事項を説明していく。
「まずは、あの椅子に持ってきた写真と共に座ってもらい、会いたい人を強く思い浮かべる。戻った時の注意事項で、自分が未来から来たことは言ってはいけない。会いたい人とともに戻ることもできない。だから、未来を変えることも出来ない。戻れるのは午前0時から夜明が空けるまでの間。準備はいい?よかったらこの紙にサインを書いて」
「うん」
頷くと、舞はペンを持ちサインを書く。
舞が椅子に座り、写真を眺めている。
「この写真ね、唯一の一緒に撮ったり写真なんだ。この写真がなかったらもう1度会えなかったって考えると、あのとき少し勇気を出して、写真撮ってもらってよかったなぁ」
「そうだね」
時間が刻一刻と迫ってくる。
「そろそろ、時間だね。準備しようか」
「うん。また少し緊張してきた」
「舞なら大丈夫。きちんと気持ち伝えておいで。準備はいい?」
「うん。大丈夫」
「シャッターを押すよ」
カシャ
すると眩しい光が差し、舞は目を閉じたのでした。