18
火葬が終わり、納骨室に呼ばれる。
火葬場の職員の人がおり、母の骨がそこにあった。
細い骨をみて、やるせない気持ちになる。
納骨が終わり、実家に戻った。
数日、実家で過ごした、久しぶりに親父と沢山話せた。
家に帰る日がやってきた。
親父が玄関先に立っている。
「困ったことがあればいつでも帰ってこいよ」
「はい」
親父がポケットから手紙を取り出す。
「これ母さんから、預かっていたんだ。もし智之が帰ってきたら渡して欲しいって……」
手紙を受けとる。
「ありがとう、後で読むよ」
「そうか」
その会話を最後に実家をあとにした。
少し歩くと、誰もいない公園のベンチがあり、そこに座ることにした。
先渡された、手紙を開く。
懐かしい、綺麗な母さんの字が書かれていた。
『智之へ
あの日、母さんがあなたのやりたいことを応援するべきだった。でも、出来ないと決めつけて、あなたのやりたいという頑張りを無下にしてしまった。怒るのも当然のことをしたと思っています。俳優になりたい。あなたには言われたとき、厳しい業界でやっていけるのか不安だったのだと、あなたが遠くに行ってしまうのではないかという感覚になりました。あなたが端役でドラマに出たのをテレビで見たとき本当に嬉しくなりました。父さんと喜びあいました。素直になれなくてごめんなさい。あなたには幸せでいてほしかった。時々、家に帰ってきてくださいね。待っていますからね。
母より』
何で、素直になれなかったんだろう。
涙が止まる方法を忘れてしまったかのように、後から後から涙が溢れだす。
しばらくすると、公園を出て、駅に向かう。
向かう途中に、ある張り紙を見つける。
【もういちど、会いたい人はいませんか?
〇〇県✕✕町 夜明写真館 ■△─△■△■─■△■△】
何だか嘘っぽい、荒手の詐欺とかなのかもしれない。
でも一応、その張り紙の写真を撮っておいた。
数日後、家に戻った俺は、動画配信サイトを開く。
その動画では、特番で噂を検証する番組がやっていた。
実際に体験した人を呼び、どんな体験をしたのかをインタビューしていた。
『私には、もう一度会いたいと思っていた人がいました。ある張り紙を見たんです。“もういちど会いたい人はいませんか?”そう書かれた張り紙を…詳しい場所はいえませんがある写真館でした。カメラの前に座って、光が差して、目を開けたら過去に戻っていました。そして無事、会いたい人に会えました』
そんな内容だった。
あれ?
何処かで見たフレーズだなぁ。
思いだし、携帯の写真フォルダーを開く。
「これだ、夜明写真館」
もしあの人が言っていることが本当なら、母さんにもう一度会えるかもしれない。
俺はさっそく次の日、夜明写真館に電話をした。
電話の呼び出し音がした後、若い女性の声が聞こえてきた。
てっきり、お爺さんくらいの人が出るかと思い、拍子抜けしまう。
「もしもし、お電話ありがとうございます。夜明写真館です。どのようなご用件でしょうか?」
「実は、張り紙をみて、電話をしたんですけど…」
「そうだったのですね。ありがとうございます」
その後、女性から説明を受ける。
過去に戻れるのは満月の日であることや持ち物や注意事項などを教えてくれた。
「ご来店お待ちしております」
電話が切れると、何だかまだ実感が湧かないけど、また会えるんだ。
母さんに…
満月の日まであと数日。