13
鳥のさえずりが聞こえてくる。
久しぶりに祖父の夢を見た、懐かしいあの頃の記憶。
しばらくの間この余韻に浸っていたい。
そして、実感する、もう祖父はいないのだと。
もう会えないのだと。
もうすぐ時計が9時の針を指そうとしていれる。
布団を畳み終えると、昨日買っておいた、菓子パンを食べる。
今日の予定を携帯で確認する。
13時から、両親が実家から持ってきてくれたもの荷解きを手伝ってくれることになっている。
家は近所なのだが、この家で暮らしていくため必要なのものを持ってくるのである。
これから私がこの写真館を継ぐことになるから、もちろんこれまでのお客さんもだけど、もっと沢山の人に利用してもらうために何か良い方法はないかな?
これからもこの写真館を続けていくためには、通常営業だけではやっていけない、やっぱりこの写真館でしか出来ない体験を活用していくとか…
都市伝説サイトとか書く?
いやそれだと、変な人ととか来たら困るし…
町の掲示板とかに張り出したり、それならそんなに多くの人とか来ないけど、本当に使いたい人が来るかもなぁ
そんなことを考えながら時間が過ぎていった。
時計を見ると、13時になろうとしていた。
車の止まる音が聞こえる。
すると、1階から母の声が聞こえてくる。
「美夜来たよ!」
この前まとめておいた荷物を持ってきてくれたのである。
「お父さん、お母さん、ありがとう」
母は小さな荷物を持っていて、その頃は父が大きな荷物を車から下ろしている所だった。
私も加わり、荷解きを始める。
程なくして、荷解きがある程度終わると、休憩することにした。
「はい、お茶」
「ありがとう、美夜」
母がコップを持ち、飲み終えると、口を開いた。
「どう?独り暮らしやっていけそう?」
「まだ、始まったばかりだから分からないけど、頑張れそう」
「そう、それはよかった。でもね、何か困ったときには、頼ってね」
「うん、ありがとう」
休憩を終えると、残りの荷物を運んでいく。
数時間後、荷解きが終わり、1階に行くと父がいた。
父の隣に並ぶと、突然父が話し始めた。
「美夜、父さんはな、この写真館が失くならなくてよかったと思ったんだ、親父の手紙もあると思うけど、それでも美夜が考えて写真館を残したいって言ってくれたとき嬉しかったんだ。美夜がこの写真館を大切なように、父さんにとっても大切だから、だから、何か困ったときには父さんにも頼って欲しい」
「いきなりどうしたの?」
少し照れ臭そうな父。
「いいだろ、今日ぐらい」
いつもは無愛想な父が今日はなぜだか愛おしく感じた。