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面会_5

リーンとエルベルトがテーブルの手前で立ち止まる。


「お待たせいたしました。テリクの第二王子エルベルト殿下をお連れしました」


その声を受けてエルベルトはその場でさっと跪いた。


そして


「初めてお目にかかります。私はカルドリ皇帝陛下のご息女であらせられるフォールシナ姫殿下の婚約者で、テリク王国第二王子のエルベルト・リューリュ・テリクと申します」


と挨拶した。


リーンに促されて、フォールシナの前の席に腰かける。


フォールシナを優しく見つめて微笑んだ。


するとフォールシナも微笑みを返す。


彼女の頬に少し赤みがさしていた。


カルドリは沈黙したままだ。


リーンが声をかける。


「皇帝陛下、ご覧のように、エルベルト殿下は見目麗しく、また、学問、剣術にも秀でた方です。人柄も申し分ありません。そして、先ほどお話しした通り、フォールシナ姫とエルベルト殿下は結婚を約束しています。お二人の婚約はカラチロとテリクにとっても望ましいことのはず。また、テリクの隣国である我が国もお二人のご息女を通じテリクとの友好関係を末永く築けると信じております。どうか陛下もお認めいただけないでしょうか」


カルドリがやっと口を開く。


「証拠がない」


「えっ今なんとおっしゃいましたか」


「その男がエルベルト王子であるという証拠がないと言ったのだ。私がテリクの第二王子に会ったことがあるとしても、即位した折に訪れた一度きり。それも、もう十五年も前のことだ。当時は幼子だったはず。その幼子がここにいるその男と同一人物であるという証拠がない。また三年前のルトリケ敗戦後の調印式には第一王子のミセル殿が王太子としてテリクの代表団におられたが、ほかに王子を見かけた記憶はなかった。肖像も手元にはない」


と一気に話し、


「その男は本当にテリクの王子なのか。平民として暮らしていたフォールシナを、王子を騙って誑かそうとしたのではないか」


と重ねて聞いた。


「おとうさま、そんな言い方はさすがに礼を欠くのでは」


トゥルーシナが咎める。


リーンも少し反発した。


いくらカルドリ帝といえども、一国の王子を前にさすがにそんな言い方はないだろう。


それに、こんなことを言っては何だが、第三者から見れば突如現れたフォールシナ姫のほうこそ眉唾物だ。


何より自分がこの男がエルベルト殿下であることを証明できる。


この城には肖像画もある。


ナイジェルに持ってこさせればよい。


リーンが反論しようとするのをエルベルトが制止した。


そしてカルドリに向かう。


「皇帝陛下、大切なご息女の結婚相手の素性をご心配なさるのは、親心として当然のことだと承知しております。ただ、残念ながら第二王子であるということまでを今この場で証明することはできません。ですが、お許しいただければ私がテリクの王族であることであれば証明いたします」


カルドリは渋々頷く。


「ありがとうございます」


エルベルトは軽く礼を言って、フォールシナにやさしく微笑みかけた。


「ルシィ、そのブローチをドレスから外して、テーブルの真ん中に置いてくれる?」


フォールシナ姫はエルベルトに言われた通りに、襟元から外したブローチを彼の指さす場所に置いた。


一同がそのブローチに注目する。


今度はエルベルトが徐に懐から短剣を取り出した。


短剣の柄に埋め込まれた青い宝石がブローチの青い宝石に並ぶように隣に置く。


そして自分の右手を二つの石の上にかざした。


「皇帝陛下、石をごらんください」


手にかざされた部分が光り、二つの宝石にそれぞれ何かの図柄が浮かび上がっている。


「いかがですか」


カルドリが石を覗き込む。


「これはフクロウ。テリクの王族の紋章か」


「その通りです。私がフォールシナ姫に預けたブローチも、この短剣もテリク王家のもの。私がテリクの王族であることを信じていただけましたか」


カルドリは黙って頷き、


「私がカラチロ帝国の現皇帝カルドリ・カラチロだ」


とエルベルトに初めて名乗った。


エルベルトの行為に驚いたのはリーンだ。


「エルベルト殿、貴公、魔法が使えるのか」


と思わず尋ねた。


「はい、テリクの王族として」


「なんと。それではどうして、あの日、私がフォールシナ姫を連れ去ろうとした時、抗わなかったのだ」


エルベルトはブローチをそっとつまみフォールシナ姫に返してやった。


そして自分も短剣を再び懐にしまいながら


「それは私も考えないではありませんでした。もしルシィが平民であればそうしたでしょう。もちろん、その場合は私も最後まで己のことを明かさず、王子としての身分は捨てて。けれどその時点でルシィがカラチロの皇女であることは陛下によって明かされていた。そこでまだその場では本名も身分も明かしていない私が抵抗したとして、一体誰が幸せになりますか。それに前も国王陛下にはお話ししましたが、どこかの国の姫であれば王子としての自分の身分を利用できます。ことをその場で荒立てずに後で交渉すればよいのですから」


と微笑んだ。


いきなりカルドリがカラカラと大きな声を出して笑う。

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