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面会_1

翌朝、朝食を済ませたあと侍従に呼ばれて、リーンはルトリケの城のかなり奥まったところにある特別室に向かって歩いていた。


隣にはエルベルトとアンリがいる。


そこは城のかなり奥に位置していることもあり、信頼された限られた人間しか入ることのできない場所だ。


その場所にエルベルトが入室することを許可するということは、要するにリーンは彼をすでに全面的に信頼したということである。


特別室はその名の通り、重大な決定をする会議はもちろん、誰にも妨げられたくない業務や気の置けない貴賓を招いてのもてなしなど、ここぞというときに使用される特別な空間だ。


室内の装飾は最小限で、華美なものは控えられている。


その分、集中してことを行える工夫と、寛ぎながら自由に時間を過ごせるような工夫の両方が、家具や調度品の随所に凝らされていた。


今はそこに賓客を待たせている。


カラチロ帝国の皇帝カルドリと第二皇女でリーンの婚約者のトゥルーシナ、そして彼女の妹のフォールシナである。


今ごろは三人で再会を喜び、十八年間という隔たりを少しでも縮めるべく、時間を使っているはずだ。


ナイジェルが昨夜のうちに連絡し、カルドリ帝とトゥルーシナの朝食の時間に間に合うように手を回して、フォールシナを連れてきたのだ。


しかもナイジェルの母のクララベルの配慮で、彼女がフォールシナにつけた侍女、オルカもついてきている。


これでもし、フォールシナがこのあとこのまま城に滞在し、婚約式まで過ごすことになっても何とかなるだろう、とリーンは安心した。


あとは今これからについての手はずだ。


つまり、エルベルトとカルドリ帝の面会を実現するためにどうするかということだ。


ただ引き合わせるのではない。


二人を恋仲だと紹介し対面を成功させて、何としてもエルベルトとフォールシナの婚約を叶えてあげたい。


リーンは、アンリと話をしていたエルベルトのほうに向いて言う。


「特別室の隣の部屋にこれから案内する。私が声をかけるまで、その部屋にいてくれないか。隣の部屋といってもいつもは特別室とひと続きの場所だ。それを今日だけ特別に蛇腹式の間仕切りで分けている。だからカルドリ帝らと私たちの話す内容はそのまま聞こえるだろう。驚くことや腹立たしいこと、可笑しいことなどがあるかもしれない。貴公に頼みたいのは、万一そんなことがあってもそこは抑えて、私が呼ぶまでは待っていてほしいということだ」


我ながら妙な物言いだなと苦笑する。


エルベルトは急に緊張した面持ちになり、黙って頷いた、


今度はアンリの顔を見て言う。


「アンリは私と一緒に来てくれ。私が余計なことや変なことを言いそうになったら止めてほしい。ナイジェルに言わせれば、私はこの分野に関してはポンコツらしいから」


「なんですか、兄上らしくもない」


リーンが最初から心細げなのを見て、アンリが声を抑えて笑った。


つられてほかの二人も笑う。


「よかった。笑ったおかげで少し緊張が解けました」


エルベルトがほっとしたとように言った。


「なら、よかった」


「実は昨日はあまり眠れなかったのです。皇帝陛下やルシィと会うと思うと」


「いや、それなら私も同じだ。実は眠れなくて中庭を散歩したが、余計に眠れなくなった」


また三人でクスリと笑う。


そのうちアンリが目的の部屋が近づいたのに気づき、


「もうすぐ特別室です。声を抑えましょう」


と注意を促した。


特別室の扉の前を通り過ぎ部屋を囲む廊下の角を左に折れて、先に、臨時に拵えた隣の部屋の入口までエルベルトを連れていく。


「ここにあるものは自由に使用してくれてかまわない。ただすぐ隣で話をしているので、音は立てないように」


またまた我ながら妙な注意だなと思いながら、リーンはエルベルトを中に案内した。


部屋の中央にはテーブルが置かれ、木でできた風変わりな立体のパズルや手をかざすと回る不思議な風車など、奇妙なものが置かれていた。


エルベルトはアンリから小声で勧められてテーブルそばの椅子に腰を下ろす。


それを見届けてからリーンとアンリは部屋を出て、先ほど歩いてきた場所に引き返した。


角を右側に曲がり、特別室の部屋の扉まで戻る。


「アンリ、開けるぞ」


小声で言い、扉を開いた。


扉と直角になるようにテーブルが置かれ、その向かって左側に奥からトゥルーシナ、カルドリ、フォールシナが座っているはずだ。


「失礼いたします。お待たせいたしました」


そう言ってリーンとアンリは入っていく。


三人が一斉にこちらを向いた。


自分を見るフォールシナの表情はとても固いように思われる。


無理もない。


自分が彼女に会いに行ったその日のうちにもう、彼女の意思など全く無視して、有無を言わさずここまで連れてきてしまったのだ。


さぞ、恨んでいることだろう。


リーンは向かって右側の、ちょうどカルドリ帝の向かい側の席に立った。


そして


「皇帝陛下、ようこそおいでくださいました」


と挨拶したあと、腰かけた。


続いてアンリも「おひさしぶりです」などと挨拶してトゥルーシナの向かい側に座った。

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