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露見_3

命じられてナイジェルとアンリが執務室を出て行った。


その背中を見ながら、執務室にひとり残されたリーンは


「わかっていたさ」


とぽつんと漏らす。


認めたくなかったのだ。


本当はフォールシナ姫を連れ帰ってきた翌日には何となく気づいていた。


エディがエルベルト殿下ではないかと。


しかしそれを認めてしまえば、考えなくてはならない多くのことがある。


そこから始まってしまう何かが怖くて、蓋をしていたのだ。


逃げてはいけないな。


リーンは、テーブルの上の水差しを取り上げ、グラスに注いだ。


そして一気にそれを飲み干す。


乾いた土に浸み込むように、それは喉を通っていった。


満足してグラスを置く。


その時ノックの音がした。


マキシムとバルトリスを連れて戻ってきたアンリだ。


リーンは三人に声をかけ、ナイジェルを待った。


やがて肖像を手にしてナイジェルも戻る。


イーゼルに若い男の肖像が立て掛けられた。


「マキシム、バルトリス、どうだ。この顔に見覚えあるか」


マキシムは何も知らされないまま、いきなり肖像を見せられて、目を白黒させる。


「えっと、これはどなたの」


身に着けているものから、高位の者だと連想したのだろう。


「先入観なしによく見てみろ。こういう目をした男を見たことないか」


リーン自身は、絵を見てすぐに確信した。


ああやはり、エディはエルベルト殿下だったのだ。


だが、第三者のもう一押しが欲しかった。


マキシムとバルトリスは先日スイネ教会に行った際、エディと会っている。


マキシムは肖像に近づいたり、三歩下がったり、さらに遠くに離れたりしている。


そしてややあって言った。


「ああ。髪色ばかりに気を取られていました。深い青色の目、彫りが深い。って、もしかしてこれ、エディですか」


肖像の男は金髪、エディはブラウンだ。


バルトリスも同感だというように頷く。


「これはテリクの第二王子エルベルト殿下だ」


と言うリーンの言葉を受けて、ナイジェルが納得した顔をする。


「なるほど、つまり、エディとエルベルト殿下は同一人物なのですね」


「そして、フォールシナ姫の恋人はエルベルト殿下であると」


アンリの言葉にリーンは渋い顔をして頷き、マキシムは声にならない声を上げた。


「エディ、王子殿下だったんですか。知らなかったとはいえ、俺、すごく失礼なことをしてしまいました」


マキシム、気にするべきはそこじゃない。


それを言えば、私も権力を振りかざして、大概みっともなかった。


私も王とはいえ、今の国力はルトリケよりテリクが上だ。


どちらの立場が上かは、見る側によって微妙に代わってくるだろう。


何を悔やんでもしょうがない。


あの時のことはもうよしとしよう。


問題は、二人が結婚する可能性が高いということだ。


エルベルト殿下の様子を見るに本気だった。


しかも正妃に据えるつもりだろう。


そしてもう一つの問題は、フォールシナ姫の龍痕の秘密。


おそらくこれは、エルベルト殿下はもちろんフォールシナ姫本人も知らないはずだ。


またしても、カルドリ帝の言葉が頭をよぎる。


「結婚するかしないか、結婚するなら誰とするのかというのは、とても重大な問題なんだよ。それは結婚する相手にとってだけでなく、我が国にとっても」


婚儀によって、相手に恩寵をもたらすという龍痕がトゥルーシナ同様フォールシナ姫にもあるはずなのだ。


それが、本来は祝福すべき婚姻に自分がこだわりを持つ理由。


だが、これはまだみなには話すわけにはいかない。


リーンは頭の中で頭を抱えていた。


そんな彼をよそに、ほかの四人は大いに盛り上がっている。


「テリクの第二王子とカラチロの第三皇女か、申し分ないね」


「それにつけてもシエラディト辺境伯は策士だな。どこまで知っていたのやら」


「この組み合わせはさすがのカルドリ帝も文句ないのでは」


「テリク側もカラチロと結ぶなら損はないだろうしね」


「エルベルト殿下はどう動くのかな」


「外野ながら、再会をどう演出するのか、わくわくするな」


「そうそう、二人が顔合わせする婚約式が楽しみじゃん」


そうはしゃぐナイジェルの声を聞いて、リーンははっと我に返った。


本当だ。


婚約式。


どうするのだ、あの二人は。


というか、主に仕掛けるのはエルベルト殿下のほうだろうが。


エディとして対峙してきた時の彼の真剣なまなざしが目に浮かぶ。


あの時の彼の判断の一つ一つを思い出しても、間違いはどこにもなかった。


頭は切れるのだろう。


それにあの場にはシエラディト辺境伯もハーリード辺境伯も来る。


カルドリ帝の手前、フォールシナ姫を黙って連れ去ることはさすがにないにしろ何が起こるか予想がつかない。


それとも、婚約しの前に何か仕掛けるのか。


なら、先に仕掛けるのはこちらかもしれない。


その時、またノックの音がした。


側近は全員ここにそろっている。


他に誰かを呼んだ覚えもない。


ナイジェルが返事した。


「はい」


侍従が衛兵を連れて入ってくる。


「実は、テリクの第二王子と称する者が門の前に来ております。王に面会の要請が」


困ったような衛兵の言葉に執務室にいる全員が驚いた。


「聞いてないぞ、おひとりでか」


「はい」


衛兵の返事にアンリが黙って頷く。


それを見てリーンは


「そうだな」


と呟いた後、一呼吸おいて


「隣の応接室に通せ」


と侍従に命じた。


第二王子と面識のある騎士のマキシムが


「本当に本人でしょうか。確認しに俺も行きます」


と言って、後に続く。

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