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恋人_1

「失礼します」


この間聞いたばかりの愛しい声と似ているような気もするし、違うような気もする。


扉を押して、一人の少女が入ってきた。


部屋の奥側にいる教会長が彼女のほうを優しい目をして見る。


扉を斜め後ろにして立つ四人は少しだけ振り返るようにして彼女に注目した。


ルシィはおそらく、部屋にいるのが教会長だけだと思って入ってきたのだろう。


扉を開けてすぐの位置に四人もの男性を目にし、一瞬驚いたように目を見張って立ち尽くした。


だが、それでもその中に顔見知りのジョエルの顔を見つけたのか、少しほっとしたような顔になる。


そして入口そばに立ったまま軽く礼をした。


肩までのピンクブロンドがさらりと揺れて、また元に戻る。


「ルシィ、私の隣へいらっしゃい」


教会長に促されてルシィは四人の左わきを通り抜けた。


そして教会長の右側、リーンらに向かって左横に立つ。


すると小柄な彼よりもさらに少しだけ小さいのがわかった。


襟のない白い長袖のブラウスに膝下より少し長めの赤いスカートを身に着けている。


来ているもののせいか、トゥルーシナよりもややふっくらとしたからだつきに見えた。


全体に少し日に焼けているようにも思う。


ピンクブロンドが肩までかかっていて、うなじから右肩にかけてあるはずの傷はここからは判別できない。


フォールシナ姫なのか。


いや、ほぼ間違いなくそうなのだろう。


そう思いつつ、リーンは事ここに及んでもまだ確信が持てなかった。


教会長がルシィの両肩に手を置いて紹介する。


教会長の頭には先ほど話題になったおふれのことが頭にあったのかもしれない。


「お探しの女性です。おふれにあった人物です」


と取ってつけたように言い、ルシィは


「ルシィと申します」


とリーンたちに向かってきれいな挨拶をした。


その瞬間。


そのしぐさにリーンは確実に突き動かされてしまった。


間違いない、フォールシナ姫だ。


そう確信した途端、思考が停止した。


そのまま、体が動いてしまう。


自分の前に立っていたマキシムとジョエルの間を大きな歩幅ですり抜けた。


突然のことにその場にいるほかの者は唖然として何も反応できない。


リーンは思わず知らずルシィの前に跪いていた。


そして急な状況に動けなくなっているルシィの手を取り、口づけようとする。


ルシィの指先がさらにこわばる。


ところがそのとき割って入ってきた男がいた。


男は、おそらくルシィが教会長に呼ばれて前に歩いていくあたりからこの部屋に入り、様子を見ていたのであろう。


「エディ」


身を固くしたまま、ルシィが小さな声で言った。


エディと呼ばれた男はリーンとルシィの間にすでに仁王立ちになっている。


名前を呼ばれて、リーンのほうに顔を向けたまま頷いた。


「ちょっ、リーン、何を。そんなことして」


我に返ったマキシムが小声でそう言いながら、慌ててルシィからリーンを引きはがそうとした。


思わず素を出したマキシムにリーンはたしなめられる。


そしてようやく立ち上がった。


打ち合わせに反して、暴走してしまったリーンにマキシムはひどく怒っているようだ。


リーンもそこでやっとマキシムに牽制されていたことを思い出した。


マキシムがリーンの前に立ち、彼をかばうようにエディと対峙する。


長身の三人が並び立った。


ややあって落ち着いた表情でエディが言う。


低いが不思議とよく通る声だ。


「いったいどういう用件ですか。この女性は私の大切な人です。四人もの男性が押し掛けて、か弱い女性をどうするつもりですか」


リーンはあらためてエディをじっと見つめた。


左肩にゆるくまとめたブラウンの髪に、瞳は海のように深い青、目鼻立ちの整った彫りの深い顔立ち。


この国によくある風貌とは少し異なる。


この男の顔をどこかで見たことがある。


髪色が違うかもしれないが。


いつだったか。


けれど言葉を交わした記憶はない。


初めて聞く声だった。


リーンが反応しないでいると、代わってマキシムが名乗った。


「私は第一騎士団の団長で、マキシム・ヴェルダーと言う。本日は三か月ほど前にリーン国王によって出されたおふれに該当する人物を保護するためにここに来ている」


エディは目を瞬かせたが、すぐにさっとマキシムの足元に跪いた。


「失礼いたしました。私はエドアルドと申します。姓はここではご容赦ください」


「ふん、名乗れない事情がおありか。それでエドアルド殿の先ほどの行為はいったい」


マキシムがエドアルドと名乗った男とルシィを交互に見ながら尋ねた。


リーンとルシィの間に突然割って入ったことを咎めているのだろう。


ルシィはまだ状況を把握できていないのか、身を後ろにある机ぎりぎりまで後退させ、固くしていた。


目はずっとエドアルドを追ったままだ。


問われてすぐ、エドアルドは顔を上げてマキシムをまっすぐ見つめながら毅然としゃべった。


「ヴェルダー様、私はここにいるルシィと結婚を誓った仲です。そんな大切な女性の手に誰であろうと別の男性が触れることを黙認できませんでした」


マキシムがリーンのほうを見てくる。

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