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騎士の迷い_2

自分の吐き出す言葉に緊張する。


「この調査が終了しても、フォールシナ姫が見つからなかった場合は、少なくともこの国にはいらっしゃらないと思います」


少なくともこの国には、というのはマキシムの精一杯の譲歩だった。


正直、この世に生きていないということだと思ったが、もちろんそんなことは口に出せない。


マキシムの言葉に頷きながら聞いていたリーンが静かに口を開いた。


「マキシムのやっていることや考えはよくわかった。ありがとう。本当に感謝する」


その宥めるような口調に、マキシムは自分でも気づかないうちにまた興奮していたことに気がつく。


胸に手を遣りふっと息を吐いて


「陛下、そんな」


とだけ、言った。


リーンはアンリとナイジェルに目配せをしてから


「先ほど、ルティル教の教会、と言ったな。マキシムがこれまで調べてくれていたのは、すべてルティル教の教会ということでよいな」


と尋ねた。


「それが何か」


リーンに代わって、アンリが説明をし始める。


「マキシムが来る前に、セレナの生家であるシエラディト辺境伯とその領地について確認していました。その領民は古くから他国にルーツを持つ者が多いこともあり、独自の宗教や文化があるようです」


「独自の宗教ですか」


「そうです。テクレ教というそうです。ルティル教に比べれば、信者はごく少数ですが、シエラディトの領民の縁者が国を跨いで布教活動も行っています。教会もあります」


マキシムははっとした。


「セレナの言っていた教会は」


隣に座るナイジェルが


「つまり、そういうことです」


とマキシムの右肩に自分の左手を置いた。


リーンが改めて


「すまないが、テクレ教の教会も当たってくれないだろうか。場所はマキシムを待っている間にリストアップしておいた。君がさっき残していると言っていた西部の地域を中心に十数か所だ。負担をかけるがよろしく頼む」


と、リストを取り出して依頼する。


マキシムは渡されたリストを見た。


ルティル教の教会が少ない地域にはテクレ教の教会が割り込むように位置していた。


確かにまだ、調査の余地はある。


もちろん、見つかるかどうかはわからないが。


そう思ったとき、突然、先ほど抱いていたもやもやした気持ちが首をもたげてきた。


もやもやした気持ち、それは、フォールシナ姫を探し続けることに対する疑問だった。


一度抑えたはずのものだが、それが膨らみ始めると、もうだめだ。


マキシムの中で、堰を切ったように思いが溢れてきた。


こんなにまでして、なぜ、フォールシナ姫を探す必要があるのか。


探すきっかけは、もちろんバルトリスの夢見だった。


魔術師バルトリスの占いは、現在の国情を安定させる術がないのかという目的でなされたものだ。


そしてその鍵が青い傷のある人物だった。


つまり、現状を打破するには青い傷を持つ人物を見つけるしかないというのが、夢見の内容だ。


それは突き詰めれば、青い傷を持つ人物を見つけなければ、現状を打破できないということになる。


しかしその時、陛下は確かに


「私が危惧しているのは、これまでバルトリスの夢見に助けられることが多すぎたために、今回もまた、この占いの結果にすがりすぎて、青い傷を持つ人物を探すことばかりに労力をすり減らすことだ。王への不信の払拭はともかく、民の生活のためにはもっとやれることもあろう」


と、言っていた。


夢見の人物を探すよりも、民の生活のためにもっとやれることがあるはず、と彼は確かに言ったのだ。


それなのに、今、陛下はその人物を探すことに躍起になっている。


それはどうしてなのか。


それがマキシムの疑問だった。


セレナやカルドリ帝の証言によって、青い傷のある人物がフォールシナ姫であることが明確になったからか。


フォールシナ姫でなければ、さっさと諦めて別の手段を講じていたのではないか。


フォールシナ姫だからこそ、執拗に行方を捜しているのではないか。


そこまで思って、自分の悪い癖を思い出す。


細かなことに気がつきすぎるあまり、全体が見えなくなるのだ。


今はそんなことないよな。


物事の全体をきちんと捉えられているはずだよな。


自省しながら、マキシムは手元のリストからリーンのほうに視線を移した。


リーンは黙って先ほどの言葉に対する返事を待っているように見える。


たぶん、自分はいつのように、承知しましたとか畏まりましたとだけ言えばいい。


だが、マキシムの口をついて出たのは、別の言葉だった。

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