皇女たちの秘密_1
カルドリがトゥルーシナのほうを向き、目を細めて微笑む。
「ようやく話そうと思っていたところまでたどり着いた」
そして
「龍痕だよ」
と短く言った。
リーンが問う。
「その、りゅうこんとは」
「龍痕というのは青龍の痕跡のことだそうです。私のからだにある痣のことです」
トゥルーシナが説明した。
「先ほどから話に出ているように、フォールシナにも龍痕があった。アリシアナは何らかの方法で、その気配を感じ取れたのだろう。ただ、翌日にはもう、気配を感じ取れなくなったと。あの時のアリシアナの肩を落とした様子は今でも痛恨の極みだ」
「気配を感じ取れないとはどういうことですの」
憂いを帯びた目でトゥルーシナが聞く。
「わからない。行方がわからなくなった、ということだろう」
「生死については」
「それもわからないんだ」
そう答えた後、今度はリーンの目を見ながら言った。
「私はまだ、フォールシナのことを諦めていない。それはもちろん、龍痕など無関係に。何と言っても大切な娘なのだ。さっき、リーン殿は、今のところはみつかっていないと言ったろう。それが少しうれしかったのだよ」
リーンは先ほどからのカルドリの様子を思い出す。
やはりカルドリ帝は私もアンリも知っている通りの家族への愛に溢れた皇帝なのだ。
「そうそう、さっき二人の区別はつかないと言ったけど、龍痕の場所で区別ができることになるね」
「それを侍女たちも知っていたのですね」
「いや、トゥルーシナのことはメリーしか知らないし、セレナはフォールシナのことしか知らないと思う。衣服から見える痣の部分は二人とも同じ場所にあるから」
ではセレナはトゥルーシナに痣があることを知っていたかもしれない。
ただ、トゥルーシナのものとフォールシナのものが同じだと思っていた可能性はあるが。
リーンは考えを巡らせた。
トゥルーシナが口を開いた。
「今までの話を伺ってから、ずっと気になっていました。メリーはなぜ、妹のことや妹を連れ去った侍女のことを教えてくれなかったんですか」
カルドリがそれに答える。
「メリーはトゥルーシナ第一だ。命にかけても守りたいと思っているのだ。悲しませるとわかっていることを言うはずないだろう。もちろん、私も口止めはした。それに、時が来れば私から話すとも約束した。でも、黙っているのはメリーも辛かったことだろう。言うまでもないが、トゥルーもメリーのことを大切になさい」
「もちろんです、おとうさま」
トゥルーシナは短く答えたが、リーンにはその思いがよく分かった。
「ただ、侍女は二人とも痣が龍痕であることまでは知らないはずだ」
カルドリが思い出したように口を開き、
「ああ、さっき言った重大な秘密というのは龍痕にまつわる話だよ」
と続けた。
「どういうことですか」
二人が同時に尋ねる。
「アリシアナから聞いた話だ。トゥルーシナとフォールシナが生まれてすぐ、アリシアナは私を部屋に呼んだ。それはさっき話したね。そして、人払いをして話してくれたんだ」
カルドリが言うにはアリシアナが侍女たちにお茶の準備を命じたらしい。
はじめアリシアナの体調を気遣ったカルドリがお茶など不要といったんは遠慮した。
しかし、アリシアナのただならぬようすに何かあると気づいて、彼も同意したのだという。
「アリシアナの母方は遠く東国にルーツを持つらしい。そこには龍神が関わっているという。そして、双子は必ず二対の青龍の痕跡、龍痕を体に宿して生まれてくるという言い伝えがあるのだと。青龍の恩寵を受けている印だそうだ」
「リーンさま、その話については私もすでに伺っています。そしてその龍痕は、婚儀によって、相手に恩寵をもたらすものなのだとも」
トゥルーシナの視線がリーンの瞳をまっすぐ射貫く。
カルドリが言葉を引き継いだ。
「だから、結婚するかしないか、結婚するなら誰とするのかというのは、とても重大な問題なんだよ。それは結婚する相手にとってだけでなく、我が国にとっても」




