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[完結]王と青龍を抱く乙女  作者: 文近成季
第一部 第一章
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皇帝の昔語り_2

トゥルーシナも何も言わない。


リーンはふと思いついて、今度は恐る恐る尋ねた。


「そう言えば、双子はカラチロでは忌避されているのでは」


するとカルドリはむっとした顔をして


「何を言う。そんな根も葉もない話。トゥルーの姉の、つまり私の長女のアイリーシナも双子を出産している」


と言った。


リーンは先ほどのトゥルーシナとの話を思い出す。


彼女は双子の叔母になったと言っていた。


そして、今この国の皇帝による明確な否定。


やはりハニウェル夫人の「カラチロでは双子は忌避されている」という話は嘘だったのだ。


しかし、カルドリ帝が機嫌よく思い出に浸っているところを邪魔してしまったようだ。


リーンはトゥルーシナの気持ちを慮りながらも、カルドリに畏まって


「申し訳ありません。お続けください」


と促した。


傍らのトゥルーシナの様子を窺う。


思ってもいなかった事実をまだ十分には受け入れられていないようだった。


無理もないことだ。


それなのにカルドリは気にしていない。


かまわずに話し出す。


「もしかしたらとは思っていたんだ。妊娠中もお腹が大きかったからね、でも本当に、一度に二人の子がアリシアナとの間に恵まれたんだ。本当にうれしくて、自分でも喜びでいっぱいの顔になっているとわかった」


「それでアリシアナさまのご様子は」


「愛らしい娘たちをありがとうと、彼女に言うとね、もちろん疲れてはいたはずだ。それでも柔らかく微笑んでいたなあ。侍女に子どもたちを自分のところへ寄越すように声をかけたんだ。それで侍女たちがアリシアナに子どもたちを抱かせるような形で預け、私も二人の寝顔をよく確かめることができたよ」


「似ていたのですか、私たちは」


幾分気を取り直したのか、トゥルーシナが尋ねた。


「ああ、そっくりだった。まあ生まれたての赤ん坊と言うのは皆よく似ているがね」


リーンはカルドリの言葉のあてのなさに少しがっかりしながら問う。


「二人は見分けがついたのですか。たとえばその、、髪色や瞳の色と言うのは」


「二人とも髪の毛はうっすらだったし、目は閉じていたからね。自分では確かめていない。

ただ、瞳の色はアリシアナが見ていた。二人とも同じだと言っていた。あと、赤ん坊では見分けがつかないので、侍女で区別した。姉を抱いているのがメリー、妹を抱いているのがセレナ」


リーンが思わず声を出した。


「セレナ」


「そうだ。メリーが抱いていたのが、トゥルーだよ」


「ではセレナが抱いていたのは」


「フォールシナと言う」


そこで話をいったん切った。


カルドリからは先ほどのうわついた様子は消え、そこはかとなくせつなさを帯びていた。


他方、リーンの気持ちは少し高揚していた。


セレナとフォールシナが結びついた。


やはりセレナがフォールシナを連れ去ったのは間違いないだろう。


だが、カラチロでは双子を忌避するという話は偽りだった。


とすれば、カルドリの命令だったというセレナの話も疑わしい。


リーンはやや沈んだ表情を見せているカルドリの姿に何とも言えない気持ちになった。


「それで」


トゥルーシナが口を開く。


おそらく彼女が一番心配していることを聞くのだと、リーンにもわかった。


「妹は、フォールシナはどうなりましたの」


声が震えている。


カルドリが少しだけ俯く。


「次の日の朝にはいなくなっていた。侍女のセレナとともに」


リーンはカルドリの命だったというセレナの言葉を思い出す。


双子の忌避という彼女の話していた動機は否定された。


とはいえ、連れ去りがカルドリ帝の指示による者かどうかはまだ判断できない。


カルドリの顔を注視するリーンをよそに、彼はその時のことを一つ一つ丁寧に、また淡々と語り始めた。


「知らせを聞いて、思わずバタバタと足音をさせて、アリシアナの部屋に入った。少しでも早く来たかったから。彼女の顔色はよくなかった。産後の肥立ちがよくないからか、フォールシナを心配しているからかわからない。一番ありうるのは、その両方だろう。肩で息をしながら、それでもはっきりとした口調で言ったんだ。フォールシナがルトリケとテリクの国境付近の森にいると。そして今のところは無事だと」


「なぜ、おかあさまは妹の、フォールシナの行方や安否を知ることができたのですか」


トゥルーシナの疑問はもっともだ。


カルドリは、それについては後でね、とお茶を濁し


「で、フォールシナの保護のためにすぐその森に向かわせたが、見つけることはできなかった。双子の妹ということを明らかにできないがなかったから、制限はあったが」


と言葉を切った。


「探さなかったのですか、そのまま」


リーンが追及する。


「探さないわけなかろう。ずっとずっと探して、探しても探しても見つからなかったときの虚しさ」


カルドリの淡々とした口調は、かえってリーンの胸に響いた。


「それで、二年後にアリシアナを亡くしたとき、フォールシナに伴うすべての思いを封じ込めたのだ」


三人ともまた黙り込む。

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