表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
[完結]王と青龍を抱く乙女  作者: 文近成季
第一部 第一章
27/230

皇女と王の散歩道_3

そのとき、


「トゥルー、これは。もしかして」


リーンがトゥルーシナの髪のリボンをやさしく撫でた。


初めて気がついたようだ。


「そうです。リーンさまがくださった花束のリボンです。大切な日なのでお守りにと思って」


「お守り?」


リーンはちょっと考え込んだあと、


「そうか、トゥルーもお守りを持ってきたんだね。実は」


と少し照れたように、リーンが上着の内ポケットから何かを取り出した。


「えっと、それは?」


リーンが手にしたそれをそっと広げてみせる。


「覚えてる?トゥルー」


少し色褪せた布にトゥルーの名前とスズランの花が刺繍されている。


あっ、それは、小さいころいつも持ってたハンカチ。


どうしてリーンさまが持ってらっしゃるのかしら。


「私がどこかで失くしたと思っていたお気に入りのハンカチです」


リーンは少し寂しそうな顔をして


「確かに覚えてないかも」


と呟く。


えっ、どういうこと。


トゥルーシナはまじまじとリーンの顔を見つめてしまった。


そして気を取り直して、思ったままを尋ねる。


「どうしてリーンさまが持ってらっしゃるのですか。お守りって、どういうことですか」


リーンは目をそらしてはぐらかした。


「うんと小さかったころにね、私のお城のお庭でね、私よりもっと小さい愛らしいお姫さまに会ってね、このハンカチをいただいたんだ」


お姫さま…


それってもしかして私のこと?


そんなこと、あったかしら。


ごめんなさい、覚えてません!


メリーは何か知ってるかな。


帰ったら聞いてみなくちゃ。


「ずっと持ってらっしゃるんですね」


「ああ、大事にしてる」


でも、それが私のものだとしたら、そんな幼いころから、私のことを?


うれしい。


「ありがとうございます」


トゥルーシナは自分のことかどうかもわからないのに、にこにこしながらお礼の言葉を口にした。


リーンは目を丸くする。


そうだ、とトゥルーシナはリーンに尋ねた。


「この道を覚えていらっしゃいますか」


リーンはあらためて周りを見た。


そして目を眇める。


「これは」


と言葉を一度切った。


「もしかして、この先にはスズランの花園が?」


「ふふっ、そうなのです。覚えていてくださったのですね。今ちょうど見ごろなのです」


とトゥルーシナはうれしくて肩を揺らした。


ハンカチのことを私は思い出せなかったけど、リーンさまはりぼんのこともスズランの花園のことを覚えてくださってた。


トゥルーシナの心がほわんとなる。


「リーンさま、この先に四阿があるのです。何年か前にスズランの花園を広げてくださって、その時に作ってくださったのです。そこに参りましょう」


歩く道すがらトゥルーシナは、今日リーンと会ってからうれしいと思うことがずっと続いていることをかみしめていた。


それから、先ほどリーンに抱きしめられたことを考えた。


私はもうだいじょうぶ。


そして、会話が途切れたところで、意を決したように、口を開いた。


本当は、今日話すかどうかずっと迷っていた。


でも、私はもうだいじょうぶ。


髪の毛に編み込まれたリボンにそっと触れる。


力を貸してね。


「リーンさま。お話しておかなくてはならないことがあります」


「なんですか。あらたまって」


「私の」


とトゥルーシナは首元に手をやり、うつむいた。


「私のからだにはお見せできないような醜い痣のようなものがあるのです」


一気に言ってしまう。


リーンのからだが震えた。


トゥルーシナにはリーンがひどく動揺しているように思われた。


けれど、何も言わない。


やっぱり、引いちゃったのかな。


リーンさま、がっかりしてる?


「あの」


と言うと、リーンはトゥルーシナの目をじっと見つめた。


その目は彼女の次の言葉を待っているようにも見えた。


けれども、いつの間にかもう花園の中心の四阿に来ていた。


そして四阿にはすでに先客がいて、二人の到着を待っていた。


「おとうさま!」

いいね、ブクマ、いつも本当にありがとうございます。

励みになります。

頑張ります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ