表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
[完結]王と青龍を抱く乙女  作者: 文近成季
第一部 第一章
20/230

皇女、皇帝に呼ばれる_2

トゥルーシナはしまったという顔をした。


私の価値、という言葉が、何か違うように思ったからだ。


けれどカルドリはそこには反応せずに言う。


「トゥルーには、龍痕があるよね」


「りゅうこん?」


「そう、トゥルーの首から左胸にかけての…」


「ああ、この痣のようなものですね。これはりゅうこんというのですか」


トゥルーシナは、自分の胸元に手を当てて、こともなげに言った。


幼いころからカルドリに隠すようにと言われて、首の詰まった服を着ている。


秘密を知っているのはあとは侍女のメリーだけだ。


確かに青く盛り上がった皮膚を見て、もしもこれがなかったら、と思ったことは何度もある。


これのせいで、胸元の開いたドレスは着られないし。


ただ、それを醜いとか恥ずべきものだと思ったことは、生まれてから一度もなかった。


「龍痕というのは、つまり、龍の痕跡と言うことだよ。トゥルーのかあさまの血筋には龍神が関わっていてね。トゥルーのその痣のようなものは、トゥルーが青龍様から力を賜ったしるしなんだそうだよ」


トゥルーシナはひどく驚いた。


この痣、というか、龍痕にそんな意味があったなんて。


思わずそっと首筋から左胸をなぞった。


「その龍痕は、婚儀によって、相手に恩寵をもたらすものなのだよ。だから、結婚するかしないか、結婚するなら誰とかというのは、とても重大な問題なんだよ」


カルドリの話はさらに衝撃的なものだった。


「おとうさまはそれをご存知の上で、リーンさまに嫁ぐようにとおっしゃるのですね。おとうさまは、リーンさまに私の力を渡すべきだとお考えなのですね」


「そうだよ。やはり、トゥルーは聡いね」


トゥルーシナは一瞬だけカルドリのほめ言葉に喜んだが、父の本心を訝った。


「ほんとうにリーンさまなのですね」


「トゥルー、私がリーン殿を選んだ理由は先に話した通りだ。だけどさっきも言ったとおり、相手のあることだから、二人でよく話し合いなさい。できればリーン殿を好きになれるといいね。そうでなくても心から信頼しあえる相手に」


そして、一呼吸おいてから、言った。


「急な話だが、二週間後に即位のあいさつも兼ねて、こちらにやってくるそうだから」


トゥルーシナは耳を疑う。


なんですって、二週間後?


というか今の話だと結婚前提のような。


どうしてかわからないけど、すごく困る。


会いたくないわけでは決してなくて…


でもやっとのことで気を取り直し、これだけは確かめておかなくてはと思うことを尋ねた。


「それは、龍痕の話もしていいということですか」


「うーん、それは、トゥルーが話してもいいと思ったらね。自分から話すかどうかは、自分で判断しなさい」


それってどういうこと?


私が言わなくてもおとうさまがお話をなさるってことかしら。


部屋に戻ったトゥルーシナはひどく混乱していた。


今日は情報が多すぎた。


いつものように、家庭教師に勉強を教わっているほうがずっと平常心を保てる。


そもそも婚約って、何。


今も続いていたって本当なの?


いつの間にか、自分は誰とも結婚はしないのだと思い込んでいた。


トゥルーシナはベッドの上で足をバタバタさせた。


もうどうしたらいいの。


それに二週間後にいらっしゃるですって。


カルドリがトゥルーシナから貴族令息を遠ざけたせいで、リーン以外の若い男性とはほとんど話したことがない。


そのリーンだって、会う機会じたいが少なかったし、最後に会ったのは何年も前だ。


今更どんな顔をしてあの人と会えばいいのかしら。


そりゃあ、リーンさまはすらっとしていて、お顔が小さくて。


目鼻立ちがくっきりしていて、凛々しいのに、柔らかく微笑んで。


青みを帯びた銀色の少し長めの髪がなびくのもすてき。


それだけじゃないわ。


ほんの少し話しただけでも、聡明で誠実な方だとわかった。


それに、いつだったか、自分の望みや思うことを話し合ったとき、心が震えるほど共感した。


でも。


トゥルーシナには、正直なところ自分の気持ちがわからなくなっていた。


好きか嫌いかと問われれば、もちろん好きだ。


嫁ぎませんとは言ったが、それは、これまでずっと音沙汰なく放っておかれた、宙ぶらりんの自分の矜持を保つための言葉だった。


好きは好き。


政略結婚ということもわかる。


そして龍痕のこと。


おとうさまは恩寵だとおっしゃったけど、人によっては気味が悪いと思うかもしれない。


私は気にしていない。


むしろ、これは私の一部だもの。


それにおかあさまの血を受け継いでいることの証ならなおさら。


けど、リーンさまは、こんな痣のあるからだをご覧になったらどう思うかしら。


触れてくださるかしら。


いいえ、これが理由で、私のことを嫌うのなら、こっちからお断りよ!


トゥルーシナは何度も何度も同じことを考える。


考えても考えても答えは見つからなかった。


いいね、ブクマ、ありがとうございます!

励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ