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[完結]王と青龍を抱く乙女  作者: 文近成季
第一部 第一章
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先王の失政

ルトリケ王国はちょうどニワトリの卵のような形をしている。


卵でいえば丸みを帯びた下半分をコルツ海が取り囲んでいる。

南北に広がるとはいえ国土はそこまで広くはない。

どの地域も概ね温暖な気候である。

一番丸い部分でコルツ海を臨むようにラトリ港があり、海を隔てた南の国々との交易の中心となって栄えていた。


東西にはレキラタ王国、テリク王国が接し、ルトリケも含めた三国はそれぞれ北側で超大国のカラチロ帝国と接している。


ルトリケとそれぞれの国境付近には深い森が広がり、人が住むことは難しい。

ルトリケ王国の民が住める場所は、面積でいえば国土全体の三分の二ほど。

それでも、人が住居を構える土地は比較的肥沃で、気候が温暖なこともあり、干ばつなどが起こらなければ、税も重くのしかかってくることはなかった。


王都ケトリルは民が住める地域の中央部にあり、現王リーンの高祖父カールの時代にその礎が築かれ、港のある南側から王都に向かう地域は特に賑わいを見せた。


当時のルトリケは、カラチロを除いた三国のうちでは一番栄えていた。


ほんの数年前まで。


だが、現王リーンの父である先王キーツが即位して状況が一変する。

約三年前のことだ。


ルトリケでは、国王の年齢が六十歳に達した時点で、譲位するという慣例がある。

その慣例に基づき、サーシがキーツに譲位した。


カール帝即位から百年の記念の年だった。


ところがキーツは即位するやいなやサーシを辺境の地に幽閉し、我欲のためだけに戦争を引き起こした。


隣国レキラタに侵攻したのだ。


しかし東のレキラタと西のテリクが同盟を結んでルトリケを攻めたため、戦いはわずか一か月で決してしまった。


おかげで犠牲者の数は最小限にとどめられたが、敗戦国として不公平な関税がかけられ、貿易はままならない。


国の技術を支えていた若い優秀な頭脳は敗戦による研究環境の急激な悪化を嫌い、大国カラチロに流出してしまっていた。


三国随一と言われたルトリケの国力は、戦争によって、キーツの即位後半年と経たないうちに三番手に落ちてしまう。


国力の衰えは、すでに打撃を受けていた国内の産業に追い打ちをかけた。


国民は納税に苦しみ、モノの値段は上がる。


民はみな生活の質を落とさざるを得なくなり、民衆の心も荒んでいた。


一方で戦後の王宮内では贈収賄が横行する。


そして一部の高位貴族に力が集中し、政治は彼らに蹂躙され、腐敗した。


当初自分の意のままに振る舞い、強引に物事をすすめた先王は、即位後数年でお飾りの王にすぎなくなってしまったのである。

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