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[完結]王と青龍を抱く乙女  作者: 文近成季
第一部 第一章
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隣室にて

ハニウェル夫人を応接室に残し、バルトリスが四人の元に戻った。


話し声が外に漏れないよう、念のため防音の魔法を施す。


だが、夫人の語った話の内容が衝撃的すぎて、しばらくは誰も言葉を発せないでいた。


それでも、どうにかアンリが口火を切る。


「あまり長い時間、夫人をそのままにしておくことはできません。とりあえず先ほどのバルトリスの聞き取りからわかったことを整理しましょう。もちろん、ハニウェル夫人の言葉がすべて真実だということが前提ですが」


手元にペンと紙を用意し、口に出しながら、書き留め始めた。


「まず、バルトリスの夢見の人物は実在するということ。


 そして、その少女は、夫人の言葉によれば、類を見ない髪色と瞳の色をしている。


 さらに、カラチロ国第三皇女トゥルーシナ姫の双子の妹であるということ。


 つまりトゥルーシナ姫と同じく、髪の色は薄い桃色がかった金色、瞳は翡翠色の可能性。

存命ならば、現在の年齢は十八歳。


  そして十三年ほど前に、教会で目撃されている」


 「あっ、まだトゥルーシナ姫と同じ容貌と決めつけないほうがよいのではありませんか。まだ彼女に確認していません。それから、瞳の色はともかく、髪の色はあまりこだわらないほうがよいかもしれませんね」


マキシムが言った。


「染められますから。教会の場所ももう少し詰めたいところです」


と続ける。


マキシムはよく気がつくが、その分、視野が狭くなってしまうことが時折ある。


マキシムの話が細かくなり、長引きそうな予感がして、リーンが牽制した。


「夫人を待たせている。マキシムの言うように彼女の話していた内容の精度は高めたいが、それ以外にも聞く必要のある話がある。今は質問事項を整理し、細かなところはその聞き取りが終わってから詰めたい。また、夫人の身の安全を約束している関係上、彼女の希望を聞いておきたい。護衛をつけて帰宅させるか、とりあえず城に留めるか。留めるならいつまでか。罪の意識に苛まされてという彼女の告白が、おふれとはいえ、なぜこのタイミングでなされたのかは、知りたいところではあるが」


質問事項が出そろったところで、我慢できなくなったのだろう。アンリが、


「今ここで問題にするべきことではないんだけど」


と遠慮がちに口をはさむ。何だ、とリーンに促されて静かに言った。


「正直、カルドリ帝がそんなことをするとはどうしても」


と言葉を切り、そうだな、同感だとリーンも頷き、ナイジェルやマキシムも同意した。


アンリの言う「そんなこと」とは、カルドリ帝が生まれたばかりの自分の実の娘を侍女に命じて捨てさせた、という先ほどの話をいっている。


そもそもカルドリ帝の温厚な性格については、部屋にいる五人ともよくわかっている。


また、彼がこよなく家族を愛していることも広く知られていることだった。


「もし本当に、皇帝がそんなことをしていたのなら、トゥルーシナ殿下と関係があるその少女を探すのは、いろいろな意味でちょっと怖い気がする」


とマキシムが正直な気持ちを吐露する。


バルトリスだけは先ほどまで夫人と直に話していた余韻で様々な感情を制御することができないのか、反応しないままだ。


時間を確認してから、ナイジェルが


「とりあえず、話を詰める件については僕が行きましょう。質問については先ほど四人でいるときに

話題に出たこともあります。まあ任せてください。うまく聞き出しますよ。それにしても、またしてもトゥルーシナ殿下の名を口にすることになるとは」


と引き継ぎ、曖昧に微笑みながら、部屋を出て行った。


それを合図に王も側近も退出し、各自の仕事へと戻っていった。

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