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プロローグ
三年前、当時王太子だったリーンは、ルトリケ国王に即位したばかりの父キーツから告げられた。
「リーン、貴様の婚約は破談となった」
あまりにも突然のことだった。
「っ、なぜですかっ!カラチロ帝国からはなんと?」
「ふんっ」
リーンが問うても、父王は鼻で笑うのみ。
(トゥルーシナ…)
桃色がかった金色の髪、翡翠色の瞳。愛らしい微笑みが目に浮かぶ。
十七歳だったリーンは黙って自室に戻り、こぶしを思い切り壁に突き当てるしかなかった。
そのあとすぐ、父王は隣国レキラタに侵攻した。