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「な、なんでそのことを?」
頭がエリアノーラの言ったことについてかない。なぜ、そのことを知っている奴がいる。いやまて、答えは目の前にいた。
「店長に聞いたから」
「やっぱりそうか」と目を店長に向ける。
くそ、俺のフレンドにはなんでまともな意識を持った奴はいないんだと心の中で憤慨していると「嬢ちゃんがちょうどいるときにメールを送ってくる奴が悪い」と自分はまるで悪くないかのように責任をこちらに擦り付けようとする店長に対し「それで通ったら、警察はいらねんだよと」鼻息を荒くする俺「それに、いつもそんなもん言わなくても店長だったらメールの意味に気づくだろうが」と吐き捨てるように言う。
「単純な話だおめぇ、嬢ちゃんがおめぇの情報を買ったそれだけだ」
「おい、いつからプレイヤーの情報売買に手染めてやがった」
「俺が売買できるほど情報持ってんのは、俺んとこでよく物買っていくおめぇか嬢ちゃんしかいねえよ」
「おい、俺の質問に答えてねえぞ」
「おめぇの情報を欲しがる奴がいるとでも思ってやがんのか?」と呆れた声で問いかけてくる店長。
「いねえな」と再び吐き捨てるように言う。
「ここにいるよ!」とよく通る声で元気にエリアノーラが発言する。
その声にげんなりしながら、なに言ってんだこいつと思う。
「ちょうどね。店長さんのところでファクトの行先知らないかって聞いてた時に、ファクトからメールが来てね。私も店長さんと一緒にこようかと思ったんだけど、準備できてなかったから、急いで準備してから来たんだ」と顔が見えてたらさぞにこやかなんだろうと思えるほどの声で話しかけてくるエリアノーラ。
俺はその発言に顔を引きつらせながら、苦笑いで場を流すことを選択した。
「まあなんだ、来てくれて助かったよエリアノーラ。さすがに片腕なくしたままのフィーネでこいつをドックまでもっていくのに難儀していたところだ。人が多いに越したことはないからな。ちなみに俺がこいつを倒したことは秘密で頼む」
「はーい」と間延びしたエリアノーラの声を聴きながら、本当に秘密が守られるかどうか不安になる。
まあ、その事についてはドックに着いてから、きちんとお話をすればいいだろう。
とりあえず今は、ドックまでの移動である。戦力としてエリアノーラが加わることについては、両手を上げて喜ぶべきことである。なんせ、エリアノーラはランカーなのである。そもそも、ランカーとはサーバ内のトッププレイヤー(多くの場合はそれで金を稼いでるプロがなっていることが多い)がPVPで明確に強さの順位を決めたことから発生した概念である。ランカーとは要は上澄み中の上澄みで戦闘において
は、俺なんかとは比べるもなく強い存在なのである。そして目の前にいるエリアノーラはランカーとして、トップクラスの第二位の称号を得ている化物中の化物なのである。なぜ、そんな化物が俺に付きまとっているかは甚だ疑問ではあるが、これを利用しない手はないということである。
「じゃあ、積載完了したから店長頼む」と声をかける。
「おう」という声と共に店長の機体が動き出す。
それを追いかけるように俺とエリアノーラはトレーラーの左右に分かれ移動を行う。
さすがに左腕はないが、ここに出で来るようなMOBなら片腕でも後れを取ることはないだろう。
来た時に持ってきていたライフルは、ユニークとの戦闘中にぶん投げてしまい行方不明となってしまったため背部の右肩に接続している懸架ラックを起こしライフルを右腕で持ち上げる。
レーダーを見ながら、カメラ映像で周りを見渡しながら周囲にMOBがいないことを確認していると「ファクト、こっちのレーダーで敵影を補足したよ」とエリアノーラから通信が入ってきた。
「こっちは異常なしだ。そっちの数はどんくらいだ?」
「MOBが十機くらいかな。砂嵐の影響で正確には補足しきれてないや。このまま移動するとぶつかっちゃうかも。どうする?殲滅する?」
「殲滅で頼む」
「りょーかーい」
「援護は?」
「ファクトってば心配性すぎだよ。MOB程度が私に傷付けられ訳ないでしょう?」
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