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メールの内容に何度目を通しても意味が分からない。
「消滅しないことが報酬ってどういうことだ?」
消滅しないこと、消滅しないことと考えているとふと頭に天啓が落ちたかのように一つ思いついたことがあった。
「もしかして、こいつの全部が報酬ってことか?」
それなら、専用武装って意味もわかる。なんせ鉄と鋼の狼の全てが手に入ると考えれば専用武装の一つや二つ作れるだろう。
だが称号とは一体どういことだ。まさか、こいつの首でも掲げ俺が打ち取ったぞとでも言わんばかりに喧伝しろと言っているのか。冗談じゃない、実力で倒せるような連中ならいざ知らず、俺は百パーセント運のみでこいつを打ち取った男だぞ。
「そんなものを誇ってどうするってんだ」
恨みがましくそう言いながらこいつを持ち帰る方法を考える。
フィーネの左腕は破損して使いものにならんし、さすがに右腕一本で持ち上げられ程の重量はしていないだろう。
だが、せっかくのユニーク諦めて置いていくにも行かないだろう。
「どうして、こういう時のためにフレンドを登録していないかなぁ」とつぶやくが、なんせこちとら人見知りだリアルどころかゲーム内ですら緊張するのにフレンドが多いわけがない。
しかも、フレンド登録しているやつらは全員どこかおかしい奴しかいない。
決して俺がおかしい奴ではないぞと考えるも頭の片隅に類友という言葉がちらつく。
俺はほらあれだ、ただのロボットオタクなだけで別におかしい奴ではないぞ。と一人で弁明している頭のおかしい奴がそこにはいた。
閑話休題、ともかくフレンド内で俺が信用できる口が堅い奴は一人しかいない。
急いできてほしい旨と座標を添付しメールとわずかなチップを送り付けコクピット内で、今のMWM情報を集める。
スレッド内はユニークを誰が倒したかで持ち切りだった。
なんせ、数多のランカー連中を一蹴したユニーク様だ。
スレッド内の誰もかれもがランカー連中の中でも、トップであるレノックスではないかという論調で染まっていた。
良いぞこのままなら一般プレイヤーである俺に目を付けられることはないなと俺はその様をほくそ笑みながら見ていた。
このままなら、俺の代わりにユニークを打倒した英雄はレノックスという話で終わるはずだ。
どこぞの一般プレイヤーが倒したなんて言葉よりも説得力が多分にある。
だが、レノックス本人が出てきて否定したことによってスレッド内は混沌と化し、しまいには、ランカーの中の誰かが倒しそれを秘匿しようとしているなんてなんて話になっていた。
スレッドを眺めていたら、レーダーに接近している機体反応があることに気が付き気を引き締める。
「連絡を取ってからにしては、来るまでが早すぎるな」
砂塵の中のためレーダー障害があるが信用できない程ではないため、反応があった方向に目を向けるとそこにはカーキー色の脚は四脚、胴体は人型のケンタウロス型の機体がトレーラーを引いていた。
「ずいぶん早いご到着で」
「おめぇが急いで来いって言ったんだろうが」
俺が呼んだフレンドとは、店長であった。
「まあ、なんにせよ助かったよ。あんがと」
「感謝の言葉とはずいぶんと面倒ごと見てえだな。まあ、俺を急いで呼び出すっほどってことはよぉ」
「人をなんだと思ってやがんだ」
「面倒な客」
まったくもってその通りであるが、この男は自分が客商売をしている自覚があるのか甚だ疑問である。
「で、物の運搬っつてたが随分と派手にやられたおめぇさんの機体か?」
「いや違う、なあ店長」
「なんだ」
「店長は俺の知る限り最も口の堅い男だと思ってるからの依頼だ」
「だから、チップなんてらしくねぇことしやがったのか。まぁそこらの分別はついてるよ」
「さすが、店長そういうところ好きだぜ」
「やめろ気色わりぃ」
「物は俺の後ろにあるもの一式だ。なるべく人目に触れないように俺のドックまでよろしく頼む」
「おめぇの後ろだぁ、おいおいこりゃまさか」
「そうご想像通り、ユニークだよ。店長のとっておきに文字通り貫かれたみたいでね」
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