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 アレに勝てるわけがない、俺の腕で何がワンチャンあるかもだ馬鹿か俺は。

目の前のアレはこちらをじっと見つめている。

思わず手持ちのライフルを撃ってしまいたくもなるが、恐怖で呼吸が荒い今なら目の前に相手がいても当てることはできないだろう。

アレがこちらを探るように目を見つめている気がした。

畜生、仮想空間でなんでこんな恐怖を覚えなきゃならないんだと訳の分からない憤りを自分自身で感じていた俺は、目の前のアレに対してこの憤りをぶつけてしまおうかと考える。

だが、そんなことをしたところでアレに勝てるわけがない。

待て、今俺は「アレに対して勝とうと思ったのか?」と自問自答していると突然大きな咆哮が聞こえてきた。

瞬間、自分の出せる限界速度でブーストペダルを踏みこんだ。

その瞬間、自分の後ろで大きく地面が砕け散った音が聞こえてきた。

「避けれた?」

スレッド内だと回避不能だとか言われていただろうになんでだ。

「くそ、理解が追い付かない」

少しでも声に出すことで恐怖を押し殺そうとした俺は大きく息を吸い込み「あああああああああああ!」と叫び声を上げた。

その声が、聞こえているわけでもないだろうに目の前のアレは面白いと言わんばかりに身をよじった。

取り敢えずアレと戦うためには、なんで鳴き声を回避できたか考える必要がある。

だが、考える暇は与えないとばかりにアレは咆哮を響かせ続ける。

ブーストペダルをベタ踏みしながら大きく旋回するように回り込む。

このための背部四基のスラスターだ少しでも止まるわけにいかない。

アレの咆哮のせいか、地面の砕ける音も今は聞こえない。

「他の奴がやっていて俺のやっていないことはなんだ?」

アレの咆哮を回避しながら必死になって考える。

「くそ五月蠅い、鳴き声だ」

奴の咆哮は止まらない。

「いつまで鳴き続けるんだよ、呼吸が必要ないからって」

操縦桿を握りながら攻撃をしようかと手持ちのライフルを構える。

操縦桿のトリガーを押し込む瞬間にふと気が付く「他の奴と俺の違い、もしかして攻撃したかどうかか?」だがそれに気が付いたとして、何の意味がある。

「咆哮が止まらない限り近づくこともできな・・いやまさか」

今はまだ、回避できているが俺の腕じゃあ何時までもつかわからない。

なら「一か八か賭けてみるか、狙いは奴の頭だ」

大きく旋回させていた機体を奴の顔の前で止めライフルを投げ捨てて奴の咆哮を機体の両腕で受け止める。

「やっぱり、なんともねえ!」

奴の咆哮は敵対者に対するカウンターだ。

ならばいまだ攻撃していない俺が攻撃を食らう謂れはない。

機体を奴に突貫させる「おおおおおお!!」奴が迎え撃つかの如く牙をむく、そしてお互いのクロスレンジへ入る。

奴が右爪でこちらへ攻撃してくる、だがこちらはまだ近づく必要がある。

右爪が近づいてくる、爪を振り回させるわけにはいかない。

重量バランスを取るためにつけていたフィーネの左腕につけたバックラーで奴の爪を弾き飛ばすように叩きつけ受け止める。

金属通しのこすれる嫌な音が聞こえバックラーの中頃まで奴の爪が食い込む、バックラーを超えて左腕まで吹き飛ばさんかと思えた奴の爪が左腕のフレームに食い込み止まる。

その一瞬で十分だった「とっておき持っていけええええええ!!!」

奴の口に右腕をとっておき事ぶち込んでパイルバンカーを起動させる。

電磁加速したバンカーは奴の体内をぶち抜いて余りある威力だった。

奴が吹き飛んだ反動でフィーネの左腕が半ばから吹き飛んでいった。

「はぁはぁはぁ」と口から息が漏れる。

吹き飛んだ奴はピクリとも動かないが、リザルト画面が出ていない以上これで終わったとはとても考えられなかった。


 ソレは今満ち足りていた、我が身を外ではなく内から破るようなものがいることを、我が爪を受け止めることができるようなものがいることを。

身を焦がすような衝動はもはやない。

だが、これで終わりを迎えるのはひどく残念であるとも。

我が身を打倒したものは、恐怖を怒りに変え立ち向かってきたそれは酷く自分と似たありかただと思った。

そろそろ限界が来たことを悟ったソレは自分と似たありかたを持つものとともに行くことを望んだ。


 MWM世界に突然ワールドアナウンスが流れた、過去緊急メンテナンスに入るときにしか流れなかったものだそれが突然流れた。

「ユニークMOB僭帝が倒されました。繰り返しますユニークMOB僭帝が倒されました。残るユニークMOBが六体となりました。繰り返します」


 

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