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第84話 パメラ出所の報告

 帰りの馬車の中、ずっと店の中を覗き見していたという人物の事が気になって仕方が無かった。いっそ、デリクさんのようにノックして店の中に入ってきてくれればいいのに、ただじっと窓から店内を覗いていたと言うことに言いしれぬ不気味な物を感じる。グレタが感じた視線と、ジムさんが見かけた人物は同一人物なのだろうか?それとも別の人物…。


「こんな時…監視カメラがあればいいのに…」


私はため息をついた。

しかし、悲しい事にこの世界には監視カメラ等という便利な物はまだ存在しない。それどころか、私が喉から手が出るほど欲しいミシンすら恐らく存在しない世界なのだ。


「ふ〜…ミシンがあれば、もっと効率よく沢山品物を作る事が出来たのに…」


私にミシンの設計図を書くことが出来れば良かったのだが、あいにくその様な知識は持ち合わせていない。


「やっぱり地道に手縫いを続けていくしか無いわね…」


私の頭の中はいつの間にか、監視カメラからミシンの事に切り替わっていた―。




****



 馬車を降りて屋敷に戻ると、リビングを覗いてみた。するとそこには珍しく家族全員が勢ぞろいしていた。父は新聞を読み、母は編み物をしている。そして兄は読書をしていた。


「ただいま帰りました」


リビングから部屋にはいり、声を駆けると家族は一斉に顔を上げて私の名を呼んだ。


「「「アンジェラッ!!!」」」


「え?え?一体どうしたのですか?」


すると本を閉じた兄が真っ先に駆けつけてきた。


「アンジェラッ!良かった!無事だっんだな?!」


「え?」


一体何の事だろう?


「あ、あの…。お兄様…?」


すると今度は父が駆け寄ってきて、いきなり強く抱きしめてきた。


「良かった…心配していたんだぞ?」


「え?え?」


父が私の身体から離れたところで尋ねた。


「あの…一体どうしたのですか?」


すると父が神妙そうな顔つきで言った。


「アンジェラ…。実は今日パメラが出所したそうなのだよ」


「えっ?!もう出所したのですかっ?!」


昨日話を聞いたばかりなのに…まさかもう出所したなんて…。


「警察署から連絡が入ったのだよ。今日パメラが出所したと。それでどうやらあの娘は酷く我が家の事を恨んでいるようで、「仕返ししてやる」等と物騒な言葉を口にしていたらしい。一応、警察の方では彼女に厳重注意したらしいが、それだけでは刑期を延期することが出来ないらしく…本日出所してしまったそうなのだ」


「そう…だったのですか…?」


それじゃ…あの視線はパメラだったのだろうか?けれど…彼女は私の店の場所を知らないし…。


私が黙り込んだ様子に母が声を掛けてきた。


「アンジェラ、万一の為に暫くは出かける時は1人で行動するのはやめたほうがいいわよ」


「ああ、そうだ。追い詰められた人間は何をしでかすか分からないからな」


兄が腕組みしながら言う。


「そうですか…分かりました」


明日も開店準備に店に行こうと思ったけれども、やめておいた方が良いかもしれない。


「ところで、パメラは今どこにいるのですか?」


私の質問に父が教えてくれた。


「パメラは今教会で保護されているそうだ。何しろウッド家の財産は何もかも差し押さえられてしまったからな」


「そうですか…分かりました。明日は大人しくしていることにします」


仕方ない…明日は家で作品作りに専念しよう…。


それにしても未だにパメラに足を引っ張られてしまうことになるとは…ここは何か対策を考えなければならないかもしれない。


私は心の中でため息をついた―。




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