第71話 4人でランチ
「それじゃ、アンジェラ。お昼休みに絶対に話を聞かせて頂戴ね?」
Aクラスの前に来るとペリーヌが言った。
「ええ、勿論よ」
「あ、あの…アンジェラ様。ペリーヌ様」
「私達もお昼ごはん…お2人とご一緒させて頂いても宜しいでしょうか…?」
すると一緒にここまでやってきたグレタとイレーヌが遠慮がちに声を掛けてきた。
「ええ、私は構わないけど…ペリーヌはどう?」
ペリーヌを振り返った。
「私も構わないわ。2人からパメラの話も聞きたいしね」
その言葉にグレタとイレーヌは少しだけ困った表情を浮かべると頷いた。
「はい。何でもお話します」
「私達でよければ喜んで」
キーンコーンカーンコーン
すると丁度タイミングよく授業開始5分前の予鈴が校内に鳴り響いたので、私達4人はその場で別れ、それぞれの教室へと入って行った―。
「アンジェラさん、ニコラス様が退学処分になったって本当ですか?」
「噂によると家を追い出されたって聞いたけど?」
「婚約破棄したのですか?」
「パメラが捕まったんだってっ?!」
教室へ入った途端、まるで待っていたかのようにクラスメイトたちが集まってきて、私はあっという間に取り囲まれてしまった。
「え?ちょ、ちょっとまって!皆っ!」
何故?どうしてこんなに早く学校中に広まってしまったのだろう?!
「と、兎に角皆さん、落ち着いて!」
押し寄せてくるクラスメイト達に大きな声を上げると、彼等はすぐに静かになった。変に隠し立てをして騒がれるよりはいっそここで余計な事は話さず、最低限の事だけ伝えよう。
「私とニコラス様は婚約破棄をしました。婚約破棄の理由は双方の家の事に関わることなのでお話出来ません。そしてニコラス様は退学して家を出たそうですが、理由は私には分かりません。以上です。納得して頂けますか?」
私の言葉に静まり返るクラスメイト達。
しかし、やがて私の説明で納得したのだろう。
「まぁ、そうね…ニコラス様は乱暴な人だったから…」
「アンジェラさんという婚約者がいるのにパメラと付き合っていたしな」
「退学になってむしろ安心だわ…」
クラスメイト達は次々にニコラスやパメラの事を口にしながら、自分達の席へと戻っていった。
「ふぅ…」
ようやくクラスメイト達から解放されたので、自分の席に座ると私は授業の準備を始めた―。
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キーンコーンカーンコーン
4時限目の授業終了後―
教科書やノートを片付けていると、既に授業が終わったペリーヌが教室に迎えに来ていた。グレタとイレーヌも一緒だ。
「おまたせ、3人共。それじゃ食事に行きましょうか?」
ランチボックスを持って廊下へ出ると3人に声を掛けた。
「ええ。行きましょう」
ペリーヌが返事をし、グレタとイレーヌは頷いた。
そして私達は4人で学食へと向かった―。
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「ええっ?!そんな事がたった2日間の間にあったのっ?!」
バゲットを食べながらペリーヌが驚きの声をあげる。
「ええ、そうなの。本当に目まぐるしい週末だったわ」
ペリーヌに説明を終えた私は学食で購入したオレンジジュースをを飲みながら返事をした。
「私達も驚きました。まさかパメラと両親が警察に逮捕されたなんて耳を疑いました」
「でもこれでパメラから解放されたので、本当に嬉しいです。アンジェラさん、ありがとうございます」
イレーヌの後に、グレタが私に頭を下げてきた。
「いいのよ、別にそんな事気にしなくて。単に話の流れでそうなっただけなんだから」
「フフフ…それにしてもパメラに引き続き、ニコラスも芋づる式に処罰されたのね。その上、婚約破棄も出来たのだから本当に良かったわね。おめでとう、アンジェラ」
ペリーヌが笑顔で私を見た。
「ええ、これでお店の準備に専念出来るわ」
「え?お店?」
「準備って何の事ですか?」
グレタとイレーヌが質問してきた。そうだった。ついいつもの癖でお店の話を持ち出してしまったが…彼女達にも私のお店を知ってもらう良い機会かもしれない。
「ええ、実はね…」
私はグレタとイレーヌに来月オープンする私の店の事について話すことにした―。