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第67話 次の婚約者候補の話題

 その日の夕食の席―


早速今夜の話題はコンラート家の話でもちきりだった。


「父上、それで結局あの馬鹿はどうなったのですか?」


兄がワインを飲みながら父に尋ねた。


「ニコラス様だが…今朝早くに半強制的に家を追い出されたそうだよ。幸い領地内には何件か空き家があってね…その中でも比較的まともな空き家を与えたそうだ。一応将来渡すべきはずだった財産の5分の1を渡してな」



「そうですか…空き家の提供にあの馬鹿に渡す予定だった財産5分の1を分け与えるとは…まだまだコンラート伯爵も甘いですね」


兄は手にしていたワインを一気にグイッと飲み干した。それにしてもとうとうニコラスは我が家では『あの馬鹿』呼ばわりでまかり通るようになってしまった。この事実をプライドの高いニコラスが知ったらどう思うだろう?


「でも、使用人は誰もつかず、たった1人空き家で暮らしていかなければならないそうだからな…。果たしていつまで持つだろうか…。ニコラス様はフットマンとメイドを1人ずつ連れて行こうとしたらしいが、全員激しく拒絶したそうだ。指名されそうになった使用人たちは『ニコラス様についていくぐらいなら退職します』と涙混じりに訴えてきたたらしいからな…。結局は1人で屋敷を出る事になってしまったのだよ。彼がもう少しまともな人間で使用人たちと良好な関係を築けていれば…誰か1人位はニコラス様を哀れんでついてきてくれたかもしれないが…」


やんわりと、父は言うが…よくよく聞いてみると、結構ニコラスを批判している所が凄い。


「でも拒絶されるのは当然ですわ。だって甲斐性なしのニコララス様には到底、使用人達のお給料等支払ってあげられるはずもないでしょうからね」


母は優雅な手付きでローストビーフを切り分ながら言った。


「確かにそうですね。ニコラス様は働く術など知らないでしょうし、お金の価値観も疎いと思います。あっと言う間に頂いた財産を使い果たしてしまいそうですね」


ニコラスがどれほどの財産を分けて貰えたのかは不明だが…私の勘では恐らく1年と持たないのではないだろうか?そしてお金が底を着いた時…ニコラスはいったいどうなるのだろう?


「確かにアンジェラの言う通りだが…大丈夫だ。アンジェラ。もうお前には何の関係もない相手なのだ。一切彼のことは気にする必要は無いからな?」


父が笑顔で私に言う。


「ええ。そうですね」


すると兄が口を開いた。


「そうだ、アンジェラ。父上の言う通りだ。もうあの馬鹿の事は気にすることは無いよ。あれが何処でどうなろうと、我々には一切関係の無い事なのだから」


「はい、分かりました」


とうとう兄は『あの馬鹿』どころか『あれ』呼ばわりするようになってしまった。そして兄は再び父に向き直ると言った。


「それよりも今一番話題にするべき事は次回の婚約者候補の事についてです。彼の詳しい情報を教えて下さい!」


「ええ。私も詳しく聞かせて頂かないと」


母も父に凛とした態度で尋ねる。


「ああ、分かった。彼の名前はデリク・ホフマン。コンラート伯爵家とは遠縁の親戚で子爵家の次男だ。既に家督は長男が引き継ぎ、長女は伯爵家に嫁いでいるそうだ。彼は教師をめざして大学の教育学部卒業後は…何とアンジェラのいる学園の臨時講師をしているそうだが…アンジェラは教わっているのかね?」


「いいえ、私達の学年は受け持ちをしていないようです」


「まぁ…意外なところで繋がりがあるのね」


母が目を丸くした。


「ひょっとしてアンジェラ…そのデリクさんという人には会ったことがあるのかい?」


「え?!」


兄の突然の言葉に私は思わず顔が赤くなってしまった―。


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