第47話 ウッド氏の破滅。そして…
「終わり…ですか？」
私の質問に兄が頷いた。
「ああ、もう終わりだよ。ほら、あれを見てご覧」
兄に言われた方向を見ると、そこにはウッド氏がスーツ姿の男性たちに取り囲まれている姿が目に入った。その中には父の姿も見える。そして彼らの側に母娘が怯えた様子で見守っていた。
「お父様…」
すると私と兄の視線に気付いたのか、父がスーツ姿の男性達に何やら声を掛けた後、こちらへ向かって歩いてきた。
「お父様、パメラの父親はどうなったのですか？」
私は父に尋ねた。
「ああ、彼は色々不正行為を働いて利益を得ていることが発覚したよ。これから内部調査と外部から専門家も入って本格的な調査が始まる事になる。とりあえずウッド氏には業務停止命令が下され、事務所に立入禁止を命じられたよ。でもそれだけじゃない。家宅捜索もされるし、ウッド氏は容疑が固まるまでは警察に勾留される事になりそうだ。先程農園組合の幹部達と話し合いで決まったことだけど、ウッド氏の経営権利は剥奪され、業務停止命令が下された」
「えっ？！そうなのですか？！」
あまりのスケールの大きな話に驚いた。
「どうしたのだ？何をそんなに驚いている？」
「い、いえ。あまりにスケールの大きい話で…少々驚いているだけです。まさか警察に勾留される事になるとは思わなかったので…」
すると兄が言った。
「当然だろう？ウッド氏は雇用契約書すら交わさず、彼らを不当な労働条件ではたらかせていたのだから。しかもどうやら裏帳簿もあるらしい。警察が動くのは当然だろう？」
「えっ？！裏帳簿っ？！」
そんな事までしていたなんて…。
それを耳にした1人の労働者が質問してきた。
「あ、あの…ところで先程業務停止命令が下されたと話されていましたけど…そうなると我々は職を失ってしまいます」
「一体我々はどうすればいいのですか？働けなければ食べていけません！」
「生活の保障はしてもらえるのでしょうか？」
ここに呼び出された5人のリーダー達は口々に訴えてきた。でも、たしかに不安になる気持ちは良く分かる。
すると父が口を開いた。
「ああ、それなら大丈夫。当面、ウッド氏の農園経営は私が引き継ぐことになったから実際ここで働く労働者達が仕事を失うことは無いよ」
「本当ですか？！」
「ありがとうございますっ！」
「これで安心です」
彼らは次々に礼を述べてきた。その時―。
「アンジェラさんっ！！」
突然大きな声で名前を呼ばれた。振り向くと、パメラが睨みつけながらこちらに向かって歩いてくる。
「あぁ…彼女がひょっとしてパメラなのかい。ニコラス様の恋人を名乗っている？」
父が尋ねてきた。
「はい、そうです」
「それにしても随分激怒している様だな。追い払おうか？」
兄の言葉に首を振った。
「いいえ、一応何と言って来るか彼女の言い分を聞いてみたいと思います。」
そんな話をしている内にパメラは私の前にやってくると、父や兄の前だというのにお構いなしに文句を言ってきた。
「アンジェラさん！私達一家がこんな事になったのは全部貴女が仕組んだ事なのでしょうっ？！一体何の恨みがあってこんな事するのっ！何処まで嫌がらせすれば気が済むのよっ！この悪女っ！」
驚くべき事に、パメラは皆の前で私を悪女呼ばわりしてきた―。
