第113話 最終決戦?アンジェラVSパメラ 4
「まぁ…これ、本当に素敵ねぇ…やっぱり一品物はいいわね」
「本当、とても丁寧に作られているわ」
「工場で大量生産されているものとは違うわね…」
「どれにしようかしら…迷うわ〜」
令嬢達は私の過去の未熟?な作品を手に、喜んでいる。それを見ていると非常に申し訳無い気持ちになってきた。
元々今ここで並べられている作品は売りに出すつもりで作った物ではないし、パメラにわざと盗ませて窃盗犯扱いしようと思っていただけだったのに…。
まさか店から盗んだ品物をビラまでまいて宣伝し…しかも私の前で堂々と売りに出すとは思いもしなかった。
やはり私は元々クリエイターなのだろう。
作品を盗まれた事への怒りよりも、手馴しの気持ちで作った半端な作品を中々の高値で売りに出しているパメラとニコラスへの恨みの方が勝っていた。
一方のニコラスは、私が怒りで肩を震わせている姿を勝ち誇った様に見つめているが…パメラの方は様子が違う。
何故令嬢達が私の作品を手にしているのに、この状況をいつまでも私が黙って見ていられるのか気がかりなのだ。
恐らくパメラは私が自分を盗人呼ばわりするのを待っているに違いない。
そして、盗んだ証拠は何処にあるとでも言うつもりだったのだろう。
けれど―。
パメラ、そしてニコラス。
私は貴女の思い通りに等なってあげるつもりは更々無いのだ。逆にここまでくだらない茶番劇に付き合ってあげているのだから2人には感謝して貰いたい位だ。
私は…2人に付き合っていられる程、暇人では無いのだから。
もうすぐ私のパメラとニコラスを追い詰めるための作戦が動き出す。
私はその時を静かに待った…。
「それじゃ、私はこの商品を貰うわ!」
「私にはこれを頂戴」
「これを頂くわ」
商品を吟味していた令嬢達がパメラとニコラスから自分達が選んだ商品を買おうとした矢先―。
「ちょ、ちょっと待って下さいっ!」
パメラがついに声をあげた。恐らく、私が無言のままで商品を買われていっては困るのだろう。
「え?パメラ。一体どうしたんだ?売らないのか?」
一方、愚かなニコラスはパメラの考えなど一切気付いていないのだろう。慌てた様子でパメラに尋ねてくる。
そこへすかさず、集まった10数人の令嬢達は次々と文句を言い始めた。
「あら?何よ。ここまで待たせて、ようやく商品を並べたと思ったら、今度は買わせないつもりなの?」
「そうよ、貴女…おかしいんじゃないの?!」
「さっさと買わせなさいよっ!」
するとパメラは悲痛に叫んだ。
「お願いです!少しだけ待って下さいっ!」
そして次に私を睨みつけると文句を言ってきた。
「ちょっと!アンジェラさんっ!貴女…一体どういうつもりなのっ?!この状況を見て何か言うことが無いのかしら?!」
すると、その時1人の女性が口を開いた。
「あら…この商品、よく見ると刺繍がしてあるのね…イニシャルかしら?」
彼女が手にしていたのは裏布付きの巾着袋で、裏部分に私の名前のイニシャルが刺繍されているのだ。
「え?そうなの?」
別の令嬢が驚いたように尋ねる。
「ええ、可愛らしい刺繍よ。貴女の手にしている商品にもあるんじゃないかしら?見せてくれる?あ…あったわ!」
女性は令嬢から預かったポシェットのタグに刺繍されたイニシャルを見せた。
「ほら、多分全ての商品にイニシャルが刺繍してあるはずだわ。」
女性の言葉に別の令嬢が声をあげた。
「あ!こっちにも刺繍があったわ。何かしら…人の名前かしらね?」
「このイニシャル刺繍…可愛らしいわね〜」
次々と女性客達の声は大きくなっていく。
「え?イニシャルの刺繍…?な、何の事…?」
パメラの顔色が青くなっていく。やはり愚かなパメラは私の作品にイニシャルが刺繍されていたことに気付きもしなかったのだろう。
「おい?どうしたんだ?パメラ?」
そしてもっと愚かなニコラスはパメラが青ざめている姿にすら気づいていない。
その時―。
「ちょっと!パメラッ!」
大きな声が背後から上がった。その声にその場にいた全員の視線が集中した。
やっと…ついに、来てくれた。
私の顔に笑みが浮かぶ。
現れたのは私のクラスメイト達だったのだ。中には男子学生まで混ざっている。
そしてクラスメイト達は私がプレゼントした作品を手に、怒りに満ちた目でパメラを睨みつけていた―。