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第11話 私のお店

「それじゃジムさん。納品だけ済ませたらすぐに馬車に戻るのでここで待っていてもらえますか?」


ペリーヌと一緒に馬車を降りた私は御者のジムさんに言った。


「はい、お待ちしております。急がなくても大丈夫ですよ」


「ありがとう。それじゃ行ってくるわ。行きましょう、ペリーヌ」


「ええ」


傍らで待っていたペリーヌに声を掛け、鍵を開けてアーチ型の木の扉を開けるとお店の中へと入って行った。


 

 約5坪の小さなお店…それが半月後にオープンする私の初めてのお店、その名も『アンジュ』。店舗としてはかなり小さいかもしれないけれども、週末に1人でお店を運営するのだから今の私にとっては丁度よい広さ。町の中心部にあり、しかも大通りに面している。立地条件は最高だ。

床も壁も天井も全て板張りになっていて、店内は仄かに優しい木の香りがする。

とても落ち着く空間になっている。


壁にピッタリ寄せた木製の陳列棚には既に納品済みの商品が種類ごとに工夫をこらしてディスプレイされている。


「まぁ…開店まで後半月もあるのに、もうこんなに沢山納品が済んでいたのね」


棚の上に綺麗に陳列された手作り雑貨を目にしたペリーヌが感嘆の声を上げる。


「フフフ…頑張って作っていたからね〜」


私は上機嫌でエコバッグの中から本日納品の為に持ってきた商品を籠に入れていく。


「ねぇ、今日は何を納品に来たの?」


ペリーヌが私の並べている商品に興味を持ったのか覗きにきた。


「これ?これはねぇ…化粧ポーチよ。中にもポケットが付いているから中身がごちゃつかないようになっているの」


「まぁ!なんて素敵なの?私、絶対にこれを買うわ!」


ペリーヌが目をキラキラさせながら言う。


「何言ってるの。ペリーヌからお金を取ろうなんて少しも思っていないわ。はい、これあげる」


一番カラフルなデザインの化粧ポーチをペリーヌに渡した。


「えっ?!そ、そんな…。貰えないわよ!ちゃんとお客として買うわ!」


慌てて首を振るペリーヌに言った。


「いいのよ、貰って頂戴。だってペリーヌは私の大切な親友であり、しかもこの店舗を貸してくれた恩人だもの」


「アンジェラ…。ありがとう。私…これ、大切に使わせて貰うわ」


ペリーヌは大事そうにひしと胸に化粧ポーチを抱きしめると、私を見て笑みを浮かべた。


「さて、それじゃ納品も済んだ事だし…屋敷まで送るわ」


「ええ、ありがとう」


そして私達は店を出ると、しっかり戸締まりをしてジムさんの待つ馬車へと向かった。




****



「それじゃ、また明日ね」


馬車から降りたペリーヌが手を振った。


「ええ、また明日」


馬車の中から手を振ると窓から顔を出してジムさんに言った。


「ジムさん、馬車を出して貰える?」


「はい、アンジェラ様」


そして手綱を握ったジムさんは馬車を走らせ、私は手を振るペリーヌに見送られながら帰路に就いた―。



****


 屋敷に到着したのは17時半を過ぎていた。少しお店でゆっくり過ごしすぎてしまったかもしれない。


「ただいま戻りました」


扉を開けて屋敷の中へ入る、すぐに母とミルバが出迎えてくれた。


「おかえりさない、アンジェラ」


「お帰りなさいませ、アンジェラお嬢様」


しかし、出迎えてくれた母とミルバの顔色が何だか優れない。


「どうしたのですか?お母様。それにミルバも…何だか顔色が悪いようですけど?」


「え、ええ……実はニコラス様が来ているのよ」


「え?ニコラス様が?!」


珍しいこともあるものだ。彼の方から訪ねて来ることなど滅多に無いのに…。


「それが…何だかとても怒ってらっしゃるのよ…先程から早くアンジェラを呼んでこいと言って…」


「え?!そうなのですか?!今、どちらにいらしてるのですか?」


「ええ。ニコラス様は応接室に…」


「!」


最後まで母の話を聞く前に私は廊下を走り出していた。ひょっとするとニコラスは今日の出来事に根に持ってやって来たのかもしれない。


「全く…なんて人なの…」


応接室が見えてきた次の瞬間…。



「遅いっ!いつまで待たせるんだっ!」


扉の奥でニコラスの怒声が響いてきた―。

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