第109話 闘志を燃やす私
「ふ〜ん…成程…そうきましたか…」
くしゃくしゃのビラを見つめながら、ポツリと呟く私。
するとペリーヌが切羽詰まったように訴えてきた。
「ちょ、ちょっと。アンジェラ!な、何故そんなに落ち着いていられるの?分かってる?この売られる商品て言うのは…」
「ええ、そうね。間違い無く私の作った作品を売るのでしょうね。あ、このビラ…預からせてもらってもいいかしら?」
「え、ええ。そんなクシャクシャなビラでも構わないらあげるけど…ってそうじゃなくて…」
興奮したペリーヌが次の言葉を言おうとした時―。
キーンコーンカーンコーン
朝礼開始5分前のチャイムが校舎に鳴り響いた。
「大変!ペリーヌ。このままでは私達、完全に遅刻よ!早く教室に行きましょう!」
そして私はペリーヌの手を引き、急ぎ足で教室に向かっているとペリーヌが話しかけてきた。
「ええ…。確かに遅刻はまずいけど…で、でもまだ話が終わっていないのに?!」
「大丈夫、ちゃんとお昼休みに説明するわ。ついでにシビルとイレーヌとグレタにも話さないといけないしね」
「分かったわ。絶対説明してね?」
「勿論よ」
念押ししてくるペリーヌに私は頷いた―。
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慌ただしく教室に入った途端、クラスメイト達が私を振り向いた。
え?な、何?
するとすぐに数人の女子学生たちが駆け寄ってきた。
「アンジェラさんっ!」
「な、何?どうしたの?」
返事をすると、すぐに別の女子学生が声を掛けてきた。
「パメラ・カストロフ・ウッドが、今日13時から青空マーケットを開くそうじゃないの?!」
そう言うと、ポケットから丁寧に畳んだビラを広げて見せてきた。
「あ…やっぱり貴女達もビラを見たのね?」
「ええ、勿論よ!」
さらに別の女子学生が興奮気味で頷いてくる。
その時―。
キーンコーンカーンコーン…
朝礼の鐘の音と共に担任の男性教諭が教室に入って来たので、この話はお開きになってしまった―。
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「…」
1時限目は歴史の授業だった。
しんと静まり返った教室では女性教諭の声が響き渡たっている。
そして私は教科書を広げ、女性教諭の説明を聞きながら先程のビラの内容を思い出していた。
パメラ…。
まさかビラまで用意していたとは、ほんの少しだけ驚いた。
あの愚かなパメラがそこまで頭が回るとは思えない。恐らく、パメラの単独の犯行では無いだろう。
多分彼女に入れ知恵した人物…もしくは協力者がいるはずだ。
それにあのビラ…。
急場しのぎで作られたビラにしては中々の出来だった。恐らく事前に用意していたのだろう。
私の商品を盗み、売りに出す。これは想定範囲内だった。けれども店のオープン前日を狙って来るとは思わなかった。
私はてっきり同じ日を狙って来るのでは無いかと思っていたからだ。
きっとパメラは私よりも先に出店して自分の手作り品として盗品を堂々と売るつもりなのだろう。
けれど…パメラ。
みてなさい。絶対に貴女の思い通りになどさせないのだから。
何よりも一度ならず二度までもパメラは私の作品を盗み出したのだ。
絶対に許さない。
彼女にはそれ相応の罪を償って貰わなければ。
私は心の中で闘志を燃やした―。