“好き”と“好き”が重なるまで
「ん…今何時?」
引っ越してきてから数日たったとはいえ、まだ慣れないベットのせいでまだ起きなくてもいい時間に目が覚めてしまった。このまま二度寝しようと思ったが、昨晩一緒にベットに入った人がいないことに気づいた。
「もう起きたのかな?」
確認するために眠気が残る頭を無理やり起こして寝室を出る。すると、リビングから音が聞こえてくるのでリビングに向かう。リビングに顔を出すと、調理中のためなのか夜空のように綺麗なストレートの長い濡羽色の黒髪を後ろで一つ結びにしている女性がいた。同性としては少し、いやかなり羨ましい理想的なプロポーションを持った女性がこちらに気づくと振り返って、これまた同性でも見惚れそうな端正な顔立ちが私の視界に写る。
「おはようございます。今日は早起きですね。もうすぐ朝食ができるので少しだけ待っていてください。」
そう言った彼女は釣り目気味の目を垂れさせ、形のいい口元をほころばせて微笑んだ。再三不要だと注意した敬語が抜けきっていない彼女に向って私も微笑みながら挨拶する。
「おはよう。そっちも早起きだね。」
食卓の椅子に座り、制服の上にエプロンを着てキッチンを右往左往している彼女を見ながら彼女との出会いのきっかけを思い返そうとした。