第八章<求婚>
「えーーーーーーーっ?」
気が付けば、そう叫んでいた。とりあえず、アレン様と別れた後の私の行動を振り返ってみようと思う。
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アレン様の馬車が見えなくなった途端、アンナと父様に部屋まで連行された私は、いまだに状況を把握しきれていなかった。わかるのは、アレン様が、あの忌々しい毒花が咲き乱れていた社交界の、虫けら以下が流しまくっていた噂を静め、ルーク様とアメリア嬢を沈め、さらに私を連れ出し、自宅(といってもお城)まで送ってくれたということだけだ。
そして、父様の部屋に連れていかれ、ずっとニコニコ笑っているアンナが父様と私にお茶を出し、自らは部屋の隅に移動する。出ていく気はない、ということか。まあ、それは大した問題ではない。それよりも、アレン様の置き土産こと、爆弾発言、
「また、日を改めて迎えに来る。」
って、どうゆう意図で言ったのあの人!?本気で意味わかんないんですけど!?
気持ちを静めようと、アンナが淹れてくれたお茶を飲む。アップルティーのようだ。ふわっと鼻腔をくすぐるリンゴの香りと、ややあって通り抜けるお茶の香り。ハチミツを少し入れたようで、ほんのり、甘い。量も丁度良い。入れすぎてもおいしくないので、相変わらずアンナの能力には感服する。それ専門の魔法も持っているんじゃないかと思う。残念なことに彼女が持つのは、ものの形を操る魔法だけだ。そもそも、下級貴族の娘であるアンナが、複数の魔法を宿すことはあり得ない。複数の魔法を宿す者は、この国では王族と私の一族の本家の者だけだ。私も一応、治癒魔法と人間以外の生物、動物はもちろん、植物や精霊とも、会話することができる魔法を持っている。ただ、フィオなどの大国ともなれば話は別だ。あの国では、中級貴族以上なら、複数の魔法を宿しているのは当たり前だ。アレン様も、詳しくはわからないが、かなりの数の魔法を持っている。数十年後のこの世界の頂点になることが内定してるんだから、当然っちゃ当然だけどね。
アンナのお茶のおかげで、毒舌的思考全開でささくれ立っていた精神が少しだけ落ち着いた。少しだけ。すぐに現在抱えている問題を思い出し、父様に尋ねた。
「あの…父様…あ、アレン様がおっしゃった、迎えに来るとはどういうことなのでしょうか…?」
「そのことだな、うむ。」
楽しそうに笑う父様。ご機嫌なところを悪いが早く言え。出し惜しみするんじゃねーよ。
「もったいぶらずに、早く教えて下さいな。父様。」
うん、我ながら、凄い。一瞬で丁寧語に置き換えるとか、偉い。そういえば、ルーク様に毒舌炸裂した時も、一応丁寧語にだけはなってたなあ…丁寧語でも、失礼以外の何でもないけど。まあ、それはアレン様がかばってくれたしね!
私がそんなことを考えていると、父様が口を開いた。
「アレン様がお前に、結婚を申し込んだ。」
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アレン様が、私に結婚を申し込んできた。父様やアンナの笑顔の理由は理解できたが、あまりに衝撃的過ぎたため、受け止めるのに、かなりの時間を要した。(具体的に言うと、5分)
求婚ですか!?Σ(゜Д゜)