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第四章<運命の変化は夜会で3>

 広間を飛び出し、街灯の少ない中庭までやってきた私は、そこで正気に戻った。

 

 ……やらかした。

 

 今まで封じ込め続けていた毒を、思いっきりぶちまけたことに対する爽快感がないと言えば噓になる。

 しかし現在は、そんな心地よさよりも、この後私に下されるであろう処罰への不安が勝っていた。

 

 最悪の場合、もしかすると……

 

 ――これ、私の首が物理的に飛ぶのでは?

 

 しかも、下手をすれば父様が爵位を返上させられるかもしれない。

 事態をさらに悪化させてしまったことに対して、心に重い負荷がのしかかる。

 

 ……でも、絶対に謝りたくなんてない。

 

 ここで謝罪するということは、私の主張を自分で否定することと同じことだ。

 同時に、ルーク様が正しいと認めるということでもある。

 

 あの人たちを、肯定したくないから。

 

 私は、唇を嚙みしめ、次々と湧いてくる感情の波に耐えていた。

 

 それから、少し時間が経ったとき。

 

 私は、強い魔法を持った者――強い魔力の気配が近づいて来るのを感じ、思わずピクリと体を震わせた。

 

 ――魔法。

 

 それは、人間が誕生してから、一定数存在するとされる魔力と呼ばれる力を宿す者――魔法使いと呼ばれる者たちが操る不可思議な力のことだ。

 

 ある者は炎や水を変幻自在に操り、ある者は植物を意のままに使役した。

 

 そんな力を持った者たちは当然、他の魔力を持たない者たちの指導者となった。

 それから文明も技術も進み、魔法使いという呼び名は貴族や王族というものに変わった。

 

 そして、現在に至る。

 

 また、基本的に強い魔力を持つ者が高い身分を持ち、弱ければ弱いほど身分は低くなる。

 だから、国の領土の大きさも、その国の貴族、王族の総魔力の大きさにほぼ比例する。

 

 ――だが。今私の後ろにいる人間は、この国の王よりも遥かに強い魔法の気配を放っている。

 

 警戒しながらも、私はおそるおそる振り向いた。

 

 ……そこにいたのは、薄茶色の長い髪を後ろで束ねた、全体的に色素の薄い美しい男性だった。

 しかし、その瞳は恐ろしく冷たい。

 

 殺人的にモテるのに、なかなか結婚できないタイプといったところか。

 

 ――待て。我ながら初対面の相手に、何を考えているんだ。

 

 冷静な自分が、そんなことを考えた私を戒める。

 

 そんなことを考えていながらも、私は努めて平静を装って、

 

 「どうか、されましたか?」

 

 と、尋ねた。

 私はともかく、暗い中庭まで来るような人は珍しい。

 そんな純粋な疑問だったけど、その男性は逆に、こう聞き返してきた。

 

 「――お前こそ、どうかしたのか」

 

 「え?」

 

 まさか聞き返されるとは思わなかったので、返答に困ってしまう。

 そんな私の動揺をよそに、その人はこう続けた。

 

 「そんなに、泣いて」

 

 ――え?

 

 言葉にならない疑問が頭に響く。言われてみれば、頬が濡れているような気がする。


 ――私は、泣いているの?

 

 それ、ならば。

 私が涙を流したのは、

 

 ……ああ。あの、自分の生き方を決めた、12歳のあの日以来だ。

 思っていたよりもずっと前だったことに、少し驚いた。

 

 ――でも、それなら。

 

 私は、何故泣いているのだろう。

 どんなことを言われても、泣かないで耐えられるようになったと思っていたのに。

 

 ぐるぐると考え込む私の横に、その男性は何も言わずに腰かけ、私にハンカチを一枚、渡してきた。

 断るのも失礼かと思ったので、ありがたく借りることにする。

 目元を軽く押さえてから、ハンカチを返したとき。

 

 その人はボソッと、呟いた。

 

 「――あまり、ため込みすぎるな」

 

 「どういうことですか?」

 

 意味が分からずにそう聞き返せば、こんな答えが返ってくる。

 

 「いずれは爆発する」

 

 ――要約すると、我慢したって、さっきみたいにいつかは爆発してしまうんだから、そんなに我慢しなくてもいい、といったところか。

 

 ……つまり、さっきの私を見て、慰めてくれている?

 

 戸惑いを感じながらも、私は素直にお礼を述べた。

 

 「ありがとう、ございます」

 

 「気にするな」

 

 そう言い残して、その男性は去っていった。

 一挙一動が優雅で、隙がない。

 

 内心、怒らせなくてよかったと安堵していると、

 

 《――先ほどのお前の言い分は正論だから、あまり気に病むな》

 

 突然、そんな声が聞こえた。

 ――否、頭の中を通り過ぎた。

 

 自分の体を、何かの魔法が通った感覚がある。

 まさかこれは、あの。


 ――テレパシー。

 

 魔法の中でも、使えるものの少ない、非常に珍しい魔法。

 現在この魔法を使えるのは、周辺国の中でも群を抜いて、豊富な魔力に強い魔法を持つ者の多い国、フィオの王と、その息子である皇太子だけ。

 

 ……つまり、あの男性は。

 

 フィオの皇太子、アレン。

 

 私は、あの強い魔力だからと納得する気持ちと、激しい動揺が入り混じった気持ちで、しばらく呆然としていた。



説明ばかりダラダラと書いて、毒舌少なめになってしまいました…(m´・ω・`)m ゴメン…


2022年12月9日、改稿。

説明パートや心理描写が多かったので、一番大きく変化したと思います。

リリさん、相変わらず口が悪すぎる……

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