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05.ハウラ室長、そして薬草園


 調合室の外に繋がるドアを開けると、薬草の独特な香りと辺り一面の薬草畑が目に飛び込んだ。

 私はその光景に目を輝かせて歓喜に包まれた。


「ここは調合師が扱っている薬草園です」


 色んな薬草があり、山で取れなかった薬草まで、そこにはあった。


「結構な種類の薬草を育ててるんですね」

「はい、ここの薬草の種は全て、室長自らが山で採取してるんです」


 その室長という人とは何処か話が合いそうだ。

 薬草園を抜けた先にレンガで造られた小屋が見えた。

 ジースさんは小屋の前で止まる。

 どうやら、そこに室長がいるらしい。

 ドアをノックした後、『どうぞー!』と女性の声が聞こえた。

 そして、ドアを開けた先には白衣を(まと)った女性がそこに居た。


「あら、殿下にジース様ではありませんか。こんな所までどうされたのですか?」

「突然すみません。少し話をよろしいでしょうか?」

「ええ、構わないですけど」


 そう言って、女性は手を止めて、椅子に座るよう促す。


(きっ綺麗…)


 女性は綺麗な顔立ちに薄い緑のウェーブ掛かった超絶美人さんだった。

 ボーッと見惚れていると、女性が私の視線に気付いたのか、これまた超絶美人スマイルが炸裂した。

 

(やばい、女性なのにドキドキする!!)


 私の顔は今、めちゃくちゃ真っ赤っかであろう。


「それで、こちらの可愛らしいお嬢さんは?」


 生涯生きていた中で可愛らしいなど言われたことなかった私は、どう反応したらいいのか分からず、照れながら俯く。


「おい、コイツの何処が可愛いらしいんだ? ハウラ、お前の目はどうかしているぞ?」


(…………うん、この王子は毒殺で決定ね!!)


 頭の中でどういった毒草を使おうかと巡らせながら、不気味な笑みを浮かべる。

 そんな私を見たジースさんが、何かを察したのか苦笑しながら落ち着くよう促す。

 当の本人である王子は、ハウラ室長が出したお茶を何食わぬ顔で飲んでいた。

 そんな光景を終始見ていたハウラ室長は、クスクスと笑い始めた。


「……すみません。とても珍しいものを見たので、つい……」


 まだ、クスクスと笑う。

 笑っている姿すら綺麗に思う。

 暫くして皆落ち着いて来た所で、本題へと話を進めた。


「こちらはカリンさんといい、薬師をやっている方です」

「初めまして、カリンといいます」


 私は丁寧に自己紹介をする。

 次にジースさんはハウラ室長の自己紹介を始めた。


「カリンさん、この方が調合師室長のハウラ=ミレイシス室長です」

「ハウラ=ミレイシスです。ここの総管理をしていますわ」


 ハウラ室長も丁寧に自己紹介をして、お互い握手する。

 手も細くて羨ましい……。

 私の手なんか、薬草とかで手が荒れてしまったりでとても綺麗とは言えなかった。


「今日ここへ来たのは、カリンさんが調合師のお仕事がどんなものか見学したいとおっしゃったからなんです」

「調合師の仕事ですか?」

「はい、先程自己紹介した時にも言いましたが、カリンさんは此処ではかなり珍しい薬師なんです。それで、ハウラ室長に一つ提案をしたくて来たんです」


 ジースさんは執務室で私と話をしてた内容をハウラ室長にも話した。


「どうでしょう? 面白い話だと思うのですが?」

「そうですわねぇ、確かに面白い話ですわね。特にカリンさんの知識に興味がありますわ。わかりましたわ。その案、お受けしますわ」

「そう言って頂いて感謝します」


 この案件はどうやら通ったようで、私は調合師の仕事を見学させてもらうことになった。

 その前に一つ私は気になる事があり、ハウラ室長に聞いてみた。


「あのぉー、見学の前にここの薬草園を見て周りたいのですが、よろしいでしょうか?」


 そう、ここに来てからずっと薬草園の方が気になっていたのだ。

 薬草オタクの血が騒いで、見ずにはいられなかった。


「どうぞ、ご覧になってくださいな!」


(やったぁーー!! どんな薬草があるんだろうなぁ? 楽しみだなぁ!!)


 ルンルン気分が止まらなかった。


「それでは、薬草園の方から行きましょうか」

「はい!!」


 元気良く返事をする私に対して、ジースさんや王子はそんな私の態度に苦笑してた。

 だが、そんなことなど全然気にせず、ハウラ室長の後を追った。





 小屋から出た私達は薬草園の方へ来た。

 私は目の前にある薬草畑に再び目を輝かせていた。


(やっぱり、薬草っていいわ〜!! この香りとかぁ、色合いとかぁ、ちょーたまらな〜い!!)


 薬草に鼻を近付け、ムフムフと笑う姿は三人にとってかなりの不審者だろう。


「…おい、お前さっきから気持ち悪いぞ」

「なっ!?」


 王子は私を変な目で見ていた。

 いや、王子だけではなく、ジースさんやハウラ室長含め、私を変な目で見ていた。

 でも、だからって気持ち悪いはないでしょうよ。


「…それにしても、カリンさんは薬草が好きのようですわね」

「はい!! 大好きです!!」


 ハウラ室長に言われ、興奮気味に返事をする。

 あまりにも熱烈に返事したものだから少し引き気味になっていた。

 だってしょうがないじゃない。

 大好きなんだから。

 好きな物が目の前にあれば、誰でも興奮するでしょう。

 周りの人達の痛い視線が突き刺さりながらも、気にせずに薬草を眺める。

 見た事ない薬草があるか見ていると、とても珍しい薬草を発見した。


「これ、ムラサキですよね?」

「ええ、そうですわ」


 このムラサキと言う薬草は絶滅危惧種に指定されている珍しい薬草だ。生薬としては、紫根と言われている。

 効能としては、抗炎症作用、創傷治癒の促進作用、殺菌作用などがあげられる。外用薬としても使われている。

 また、薬だけではなく染料としても使われていたりする。

 種からの発芽率が低い上に、ウイルスにも弱い為、栽培がとても困難だと聞いたことがある。

 それが薬草園で見られた事に、私は目をキラキラ輝かせていた。


「栽培がとても難しい薬草だと聞いたことあります。ここまで増やせたなんて凄過ぎですよ!!!?」


 興奮が治らない。

 今見ている光景は、それ程凄いものだった。


「そんなに栽培が難しいのですか?」


 ジースさんが少し興味を示したようで、ハウラ室長に聞いてみる。


「ええ、種を採取して植えたのですが、中々繁殖せず、ここまで増えたのも長く掛かりましたわ」

「そうなんですねぇ」


 ハウラ室長の並々ならぬ努力を感じた。

 私は他の薬草園も見て周り、沢山の薬草を堪能して満足したところで、本来の目的である調合師の仕事の見学へと移動した。



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