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04.調合師、そして提案

お待たせしました。

投稿遅くなってすみません。

仕事復帰で執筆時間が中々取れなくて遅くなると思いますけど、これからも気長にお待ちください。

 

 城の中に入っての第一印象、めちゃくちゃ広い。こんなの本とかでしか見たことない。外国とかで見る城より大きい様に感じる。

 私達を出迎えるのが侍女達だった。


「「「お帰りなさいませ、アルカ殿下!!」」」


 メイド達は皆若く、だけど何処かしっかりした印象をしていた。

 王子は深々と頭を下げるメイド達に一言も言葉を交わさず、そのまま奥の方へと進む。


(ただいまぐらい言ったらいいのに、素っ気なさ過ぎじゃない!?)


 だが日頃からそういった態度なのか、メイド達は動じてないようだ。

 王子は歩みを止めず、どんどん先へと進む。


「ねぇ、何処に向かってるの?」

「俺の執務室だ」


 黙って着いてこいと言わんばかりな顔をする。

 まず、私の歩くスピードに合わせるなんて微塵も無い感じだ。

 若干小走りで王子に着いて行くと、他の扉とは少し違う作りをしたドアの前で足が止まる。

 どうやら執務室とやらに着いたようだ。

 王子は扉を開け、ただ入れと一言残して進んで行った。

 執務室の中に入ると、目の前に立派なデスクが目に付いた。

 その少し右横に来客用であろう椅子と机が置いてあった。

 ジースさんは来客用の方に座る様促した。

 来客用の椅子は高級な作りをしていて、クッションもめちゃくちゃふかふかしていた。


「今メイドにお茶をお持ちしていますので、しばらく寛いでいて下さい」

「……はい」


 正直、この豪勢な空間の中でどう寛げばいいのか分からない。

 全く落ち着かない。

 落ち着けず、周りをキョロキョロしていると、王子が何故か隣にドカッと座り出した。


(何故横に!?)


 おまけに足を大きく組み、手は私の後ろに回していた。

 私はこの状況にどうしていいのか分からず、身体が硬直する。


(近い!? めちゃくちゃ近い!?)


 そんな私の心境など知ってか知らずか、平然と寛いでいる。

 ジースさんも何を言うわけでも無く、ただ目を閉じ、前横に待機していた。

 私は男性経験ゼロで、今までモテた事がない。

 大学には行っていたが、人付き合いが苦手な事もあり、友達が少ない。

 大学では医学部を専攻していたが、そもそも医学部の人達は変わった人が多く、他の人からは引き目で見られていた。

 私なんて薬草オタクとして結構知られていた。

 まぁ、それを隠すような事もしなかったし、知られていたからといってどうてことなかった。

 そんな事もあってか、男の人と遊ぶとかそういったことは全く経験無かった。

 だからこんな近くに男の人がいるとドキドキして挙動不審になってしまう。


「おい」

「っ!?」


 急に声を掛けられ思わず身体が跳ねる。


「なっ、何!?」

「何故驚くんだ?」


(貴方が急に声を掛けたからでしょう!!)


 バクバクする心臓を押さえながら、心の中で突っ込む。


「まぁいい。それよりお前、薬師をしてどうするつもりだ?」

「どうするって、そうね。一応考えていたのは薬屋を開く事かしら」


 なのに訳も分からず強制的にこんなお城に連れられ、何故かこの王子の横に座っている。


「お前がもし王都で薬屋を開業したとしても客は来ないと思うぞ」

「どうしてよ?」

「王都にはポーションが出回っている。効果も即効性も優れてる。お前の作る薬も効果は抜群だ。だが、ポーションに比べて即効性に欠ける」


 つまり、薬屋を此処で開いたとしても売れないということか。

 でも、ポーションだって欠点の一つ二つあるんじゃないのだろうか?


「ポーションは効果としては何処まであるの?」


 その質問にジースさんが答える。


「そうですねぇ、ポーションには大きく分けて三段階御座います。一つは初級ポーション、二つは中級ポーション、三つは上級ポーションです。効果も段階によって異なります。初級ポーションは殆どが王都の方に卸しております。中級ポーションや上級ポーションは主に城に仕える騎士団などに使われます」


 効果的面みたいだ。

 ジースさんの話からは全くと言っていい程、欠点なんて見つからなかった。

 特に上級ポーションなんて効果としては最高なんじゃないだろうか。

 こんな話を聞いたら、この世界で薬屋を開くのは無謀なんじゃないかと思い始めた。

 少し表情を暗くしていると、王子が口を開いた。


「別に薬屋を開く事に拘らなくてもいいんじゃないか?」

「え?」


 まぁ、お爺ちゃんにこの世界で薬師をして欲しいって言われて、何となく薬屋を開けばいいかなぁと思っただけだから、そこまで拘らなくてもいいって言えばそうなんだけど。


「もし拘ってないなら一つ提案がある」

「提案?」

「ああ、お前を俺の専属薬師になってもらう」

「……え?」


 聞き間違いだろうか。

 なんだかとんでもない提案を出して来た気がするのだが……。


「ついでに、調合師の中で優秀な奴を何人か厳選する。そいつらにお前の薬師の知識を教えてやってほしい。以上だ」


 しかも一つと言っていたのに二つになっている。


「何だ?」

「いや、『何だ?』じゃないわよ! 貴方の専属薬師って本気で言ってるの!? それに内容が増えてるわよ!!」

「別にいいだろう? 何が不満だ?」


 いや、不満だらけだ。

 そもそも専属薬師は何をしたらいいのだろうか。


「因みに、その提案を断ったらどうなるの?」


 その質問に王子は顔色一つ変えずに答えた。


「オマエに拒否権なんて無いぞ!」


 その一言だった。

 どうやら、私には断る事すら許されないらしい。

 何か言い返してやりたいと思ったが、この俺様な態度に何も言い返すことが出来ず、素直に従う事にした。


「……分かったわ……」


 返事を聞くと、王子は満足げな顔をする。

 すると、タイミングを図ったかの様にドアをノックする音がした。


「どうぞ」


 ジースさんが入るようドアの外に居る人に言った。

 ドアが開くと『失礼します』と声がし、ティーセットとお菓子を乗せたワゴンが現れた。

 ワゴンを押しているのは、侍女で先程出迎えをしていた内の一人だった。

 侍女はティーポットを持ち、カップに紅茶を注ぐ。

 一瞬にして紅茶の良い香りが広がる。

 紅茶が入ったカップとお菓子がテーブルに並ぶ。

 侍女はある程度済ませるとそのまま帰って行った。

 王子は出された紅茶の入ったカップを手にして、口元へ近付ける。

 優雅に紅茶を飲む姿は様になっていた。

 私もカップを手にして、ゆっくり口元へ近付ける。


「……美味しい」


 さっきまで沈んでた気分が落ち着いついて来た。


「貴方の提案は引き受けるわ。ただ、その調合師って人達がどんなポーションを作っているのか少し見学したいの。いいかしら?」

「別に構わないが、何故だ?」

「ただの興味本意よ」


 そう、言葉で説明されても分からない事もあるし、自分の目で見てみたかった。


「でしたら、飲み終わった後にでもご案内致しましょう」


 ジースさんの言葉に甘え、私はゆっくり紅茶とお菓子を頂いた。





 ティータイムを終え、私達は調合師のいる部屋へ向かった。


「何で貴方もついて来るの?」


 私は横にいる王子の方を見る。


「何故ついて来て悪い?」


 逆に聞かれた。


(別にジースさんだけで事足りると思うのだけれど……)


 王子は普通について来てた。


(貴方王子なのだから仕事いっぱいあるんじゃないの?)


 ジト目で王子を見ていると、王子が奇妙な顔した。


「何だ、そのバカ面は?」


(……うん、この王子一回殴ってもいいですか?

 いや、一回と言わず何回も殴りたい!!)


 けど、そんな度胸も無い私は、心の中で叫び散らした。

 そんな奮闘を続けてると、調合師の居る部屋に着いたようだ。


「此処が調合師の居る調合室です」


 ジースさんはドアをノックしてドアを開ける。


「失礼します」

「じっ、ジース様、それに殿下まで‼︎」


 中に入ると、ジースさんと王子の顔見るなりザワザワし出し、皆頭を下げる。


「良い、頭を上げよ。今日はお前達の仕事を見学しに来ただけだ」


 王子の一言に皆頭を上げ、更にザワザワし出す。


「見学、ですか?」


 一人の調合師が不安そうな面持ちで聞く。


「はい、こちらのカリンさんがあなた方の仕事を見学したいとおっしゃったので。忙しい所アポも取らずすみません」


 ジースさんは丁寧に謝礼をする。

 そんなジースさんを見て、慌てる調合師。


「頭をお上げください、ジース様。(わたくし)共にその様な事なさらないで下さい」

「そうだ、ジース。下々に頭下げるなど威厳が無かろう。やめろ」


 王子はさも偉そうに言う。

 その偉そうな態度どうにかならないのだろうか?

 横目で王子を見る。


「いえ、急に来たのですから。それより、ハウラ室長はおいでになりますか?」

「ハウラ室長ですか? ハウラ室長なら薬草園に居るかと……」

「そうですか…」


 ジースさんは少し考え、私の方へと向く。


「カリンさん、すみませんが薬草園に行きましょう。そちらにここを取り締まる室長が居ますので、紹介します」

「分かりました」


 そう言って、奥に繋がるドアの方へと向かった。



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