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28.分からない王子の事、そして多過ぎる思量

 

 ティナに案内された部屋に入るなり、私はベッドにダイブした。


「疲れたぁーー……」


 馬車に乗っていた間、空気が重過ぎて気疲れをした。正直、あの状態が続くのはしんどい。まだウェンディース国は遠いというのにこのままで大丈夫なのだろうかと心配になる。

 考える事が多過ぎて唸っていると、ティナが飲み物を差し出してくれた。


「カリン様、ココアをお持ちしました。これを飲んで少しは落ち着いて下さいませ」


 ティナは優しく微笑む。


「ありがとう。ティナ!」


 私は温かいココアを受け取り、ゆっくりと口付けた。甘いカカオが口一杯に広がり、身体の疲れが取れてく感じだ。

 するとティナは私の前で屈み、目線を合わせるようにして見詰めて来た。


「カリン様? 何かお悩みがあるのでしたら(わたくし)にお話し下さいませ!」

「え?」

「殿下と何かあったのではないですか?」


 ティナにも気付かれていたようだ。

 私は少し俯き、馬車の中での事を話した。


「私も何であんな風になったのか分からないの。私が寝てる間に何かしたのかと思って聞いてみたんだけど、何も答えてくれなくて……」

「そうで御座いましたか」


 ティナは私の手をそっと握る。


「カリン様、殿下は少々分かりづらいところはありますが、決して理不尽な態度を取るお方では御座いません。恐らくですが何か考え事をなさっていて頭の中を整理しているのだと思われます。ですのでカリン様ももう少々お待ちになられて、御心が落ち着きましたら改めてお話しなさっては如何ですか?」

「……話、してくれるかなぁ?」

「大丈夫で御座いますよ。殿下はお優しい方ですからきっとお答えになりますよ」


 ティナは笑顔を向け、私の手を強く握った。

 私はティナの言葉に勇気を貰い、もう一度頑張ってみようと思った。


「ありがとう、ティナ。私、もう一回理由を聞いてみる」

「その粋で御座いますよ!」


 こうしてティナのお陰で気分が晴れたのだった。


「それにしてもアレク団長が居たのは驚きだわ」

「あの時は色々ありましたし、霧も深かったので無理もありませんね。(わたくし)は事前にジース様から知らされていましたので分かっていたのですが」


 何故、私には情報が回らないのだろうか。いつも唐突に知らせが来る。

 私は頬を膨らませ、ティナをジト目で見詰める。


「カリン様、(わたくし)にではなく、ジース様に仰ってください」


 そう言われても当の本人は外出中でいない。

 私は再び、ベッドに倒れ込んだ。


(出発したら、また王子に聞いてみよ……)


 私は色々な疲れが出て来て、少しばかり眠りに付いた。





 一方、王子の方も色々考えていた所為か、疲れが溜まっていた。

 先程、神眼を使った事もあって、かなりの疲労感が出ていた。


「……やはり、神眼はあまり使えぬな……」


 俺はそのままベッドに倒れ込み、先程の事を考える。

 そう、先程神眼を使った相手はカリン(あいつ)だ。

 あいつの身辺調査をジースに頼んでいたが、あいつに関する情報は一切掴めずにいた。

 そこで神眼を使って探りを入れてみたのだ。

 俺の神眼に間違いはない。正直、信じられない事だった。


「……此処とは別の世界……」


 神眼を使って見た光景はあいつの記憶だった。神眼の能力の一つである。

 俺が見たあいつの記憶は此処と別の世界の光景だった。

 そう、あいつは異世界から来た人間だった。

 だが、少し引っかかる事がある。

 あいつの持つ本は此処の世界にある物だ。あいつの祖父の形見と言っていたが、此処にある物が何故、あいつの世界にあるのかという疑問だ。

 可能性としてはあいつの祖父が此処の世界の人間で、何らかの理由で世界に飛ばされたという説だ。現にあいつの祖父を調査したところ、情報が少しだけだがあった。それでもほんの一握りの情報でしかない。殆ど謎のままだ。

 シラン=サウレスト。あいつの祖父の名だ。ジースがあの事件で話ていた王家専属一等医師で、しかも今向かっているウェンディース国の前王の専属医師をしていた事が分かった。

 今回、ウェンディース国へ向かうのもその件に関して調べる為でもあった。


「考える事が多過ぎるな……」


 一気に色々な情報が入ったのと、神眼を使った疲れが出て、俺はゆっくりと瞼を閉じ、眠りに着いた。



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