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26.王子の家系、そして王子の瞳

 

 王子に人生初のお姫様抱っこをされ、馬車に乗り込んだ私はまだドキドキが収まらないでいた。

 王子はあれから一言も喋らず、それが余計に苦しかった。

 この沈黙な空気に耐えられず話題を考える。


「あっ、あの!!」

「ん?」

「さっきの、陛下って貴方のお父さん、なんだよね?」

「ああ」

「他人の父親を悪く言うのは良く無いって分かってるんだけど、その……嫌な感じがして……」


 本人の前、言っていいのか悩んでいたが気になって仕方なかった。

 王子は窓の景色を眺めながら答えてくれた。


「親父が俺を気に入ってないのは話したよな。親父は何でも自分の思い通りに事を運ばないと許せない性格なんだよ。親父は俺を子として見ていない。政治の道具に過ぎないんだよ」


 王子は何処か遠くを見詰めて語る。その顔には少し寂しさを感じた。


「親父は使える人間が居ればどんな手を使ってでも利用する。母上でさえもだ」

「お母さん?」

「ああ。母上はあまり親父のやる事には口を出さない人なんだ。少し変わっているが、人に対して凄く優しいんだ。そんな優しさに親父が漬け込んでるんだ。元は公爵家の身分だった癖に……」

「え? 王様の方が身分低かったの?」

「親父はデリスタン公爵家の長男として母上と婚約を交わしてたんだ。クラウリス家とデリスタン家は代々交流があったからな。所謂政略結婚だ」


 クラウリス家に産まれたのは男児ではなかった。王子のお母さんのお母さん、つまり王子のお祖母さんは身体が弱く、子供が中々出来なかったそうだ。そんな中、やっと妊娠出来て、産まれたのが王子のお母さんだった。やっと出来た子供に城中が歓喜したそうだ。

 だが、男児で無かった事もあり、クラウリス家を継ぐ者が居なかった。そこで代々交流のあるデリスタン家の長男である王子のお父さんがクラウリス家の婿養子になったそうだ。


「それだけじゃない。親父のコネで命を受けた大臣もそうだ。大臣は親父の弟で、俺の伯父になる。アイツも大臣になってからは王家にまで口を出す様になった。母上が何も言わないのをいい事に」

「…………」


 王子の言葉一つ一つに苛立ちが見える。

 大臣という人は会った事ないのでどんな人かなんて分からないけど、あの王様の雰囲気からして、何となく想像が出来た。

 中に漂う空気が重くなる。さっきよりも気不味くなり、私は違う話題に変えた。


「そう言えば、これから向かうウェンディース国ってどういう所なの?」

「ん? ああ、ウェンディース国は水の都と言われてる国だ。水が豊富で綺麗な所だ」

「へぇー、何だかイタリアのベネチアみたいだね」

「ベネチア? 聞いた事ない国だなぁ?」

「えっ!? あっ、えっと……――――」


 まずいと思い、慌てる。自分が違う所から来た事をつい忘れてしまう。それ程、異世界に慣れてしまっているようだ。

 取り敢えず、笑って誤魔化してみる。

 だが王子には通用せず、問い詰められる。


「前々から気にはなっていたんだが、お前はこの国の人間じゃないだろう? それにお前はこの世界の知識が無さ過ぎる。子供でも知っている知識を何故お前は知らないんだ?」

「うっ……」


 グイグイと攻めて来る王子に、私はどう説明しようか考える。

 こことは違う世界から来たなんて言っても、そもそも信じるはずが無いし、最終的には頭大丈夫? みないに思われるかもしれない。


(この王子の事だ。絶対に変な目で私を見る筈!)


 私の答えを待つ王子。一体どう答えようかと悩む。


「えーっと……」


 本当にどうしたらいいのだろうか。

 考えても考えても思い付かず、オロオロしていると王子が痺れを切らしたのか、攻めるのをやめてくれた。その代わりに、何故か私の方をジーって見詰めて来たのだった。


(えっ!? なっ、何!?)


 王子の視線に目を逸らしたくなる。


「目を逸らすな。俺の目を見ろ」


 目を逸らそうとしたら、王子が間髪入れずに言って来た。

 その気迫に圧倒され、私は目を逸らせなくなってしまった。

 お互い見つめ合っていると王子の瞳が変化した事に気付く。


(ん? 何か目の感じが変わったようなぁ……)


 すると突然視界がぐらつき、段々意識が保たなくなって来た。


「なっ……な、にぃ……――――」


 こうして私は意識を手放したのだった。



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