24.優秀な二人、そして突然の知らせ
講習を始めて二時間。
ハウラ室長とスタンさんは仕事の為、持ち場に戻って行った。
私は薬草の名前、種類、煎じ方を教えていく中で、二人が選ばれた理由が何となく分かった。
(確かに優秀だわ……)
二人は黙々と私の教えを聞き、吸収していく。
サーラはオドオドと少し挙動不審にも見えたが、薬草や煎じ方に興味が出て来たのか、熱心に私の話を聞いていた。
メイリに至っては文句の付けようがないくらい優秀だった。私の教えた事を直ぐ覚え、問題を出しても完璧な答えだった。ただ一つ問題とするなら、私を嫌っている事だけだった。必要最低限の会話しかしない。
(せっ、精神的に耐えられるかしら……)
私は小さく溜息を吐く。
すると急にメイリが声を掛けて来た。
「ねぇ、少し質問してもいいかしら?」
一体何だろうか。分からない所でもあったのだろうか。疑問に思いながらもメイリの質問を聞く。
「何かしら?」
「あなたは何故薬師になろうなんて思ったのかしら? そもそもどうしてあなたは薬師である事を隠さないのかしら?」
メイリは少し険しい顔を浮かばせ、次々と質問をして来た。
どうしてと言われても、お爺ちゃんに憧れていたからだ。
だが、最後の何故薬師である事を隠さないのと言う質問には頭を傾げる。一体どう言う事なのだろうか。
「えっと……」
どう答えていいのか分からず戸惑っていると、急に扉の方からノック音がした。
扉の方に目を向けると、そこにはジースさんが立っていた。
「ジースさん……」
「お邪魔してすみません。カリンさん少しお話しても宜しいでしょうか?」
「あっ、えっと……」
私はチラッと二人を伺う。
サーラはオドオドしながらも大丈夫だと言っていたが、メイリは話の途中だった為かやり切れない顔をしていたが大丈夫と答えた。
「えっと、大丈夫です。なんですか?」
「すみません。少し急を要する話になりまして、急ぎ伝える様殿下に申されましたので」
ジースは少し申し訳ない顔を浮かばせ、話を切り出した。
「実は先日に起きた件で同盟国を結んでいるウェンディース国の陛下からお礼の便りが届きまして、改めてお礼をしたいのでウェンディース国へ招待すると書かれていまして」
「そうなんですね」
「はい、ウェンディース国も多くの人が被害に遭われていたので助かったと申されていました。
それで殿下と私でウェンディース国へ出向く事になりまして、その際カリンさんも同行する様になったので伝えに参りました」
「わっ私も、ですか?」
「ええ。ですので身支度をする様お願いします。出るのは明日の正朝。ティナも同行お願いします」
「畏まりました」
ティナは頭を下げ、私の方へ振り返る。
「カリン様、私今から身支度を整えて置きますので、もし必要な物等御座いましたら申し付け下さい」
と言われても、身支度する程の荷物を持ち合わせていない。城に来た時も少量の薬とお爺ちゃんの本ぐらいだ。服も今着ている服とジースさんが用意してくれた服以外持っていない。
私が少し困り顔をしていると、ティナが透かさずフォローを入れた。
「では私の判断で身支度の御用意を致しますね」
そう言って、ティナは早々準備をする為出て行った。
「それでは私も殿下の身支度をしに参りますので失礼します」
ジースもティナの後に続く様に出て行った。
急な展開に頭が付いて行かず混乱していると、サーラがオドオドしながらか細い声で話し出した。
「あっ、あの、カリンさんが居ない間は、そっ、その、授業はどうなるんですか?」
その質問にハッとなり、居ない間どうするべきか考える。
今日が初授業だって言うのに、いきなり休業する羽目になった。
「……そう、ね……取り敢えず薬草の本や資料を渡しておくわ。後、実際目で見て覚えて欲しいから、ハウラ室長に頼んで薬草園を見せてもらう様頼んでみるわね。
それと薬草のスケッチもやって欲しいわ。私が帰って来る間に色々な薬草をスケッチして欲しいの。スケッチする際は良く観察して描いてね。薬草の名前も忘れずに!」
「えっと、宿題って事ですか?」
「ええ、私が帰って来たらそれらを提出して貰うわ」
本当はもっと教えてから遣らせたかったのだが、こうなってしまったからには仕方無い。帰って来てこの二人がどう成長したか見ものだ。
話は終わり授業を再開しようと思ったその時、メイリが眉間に深い皺を寄せて怒っている顔が視界に入った。
私は完全に忘れていたのだ。いや、寧ろこのままメイリも忘れてくれたらよかったのに、世の中そう簡単には上手くいかないのだと思い知る。
そう、私はまだメイリの質問に答えていなかったということを――――――。




