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23.反省文、そして招待状

 

 久々に朝稽古をした帰りの道中、見知った顔が三人居た。そのまま声を掛けようと思っていたら、三人は俺の話をしているのが分かった。そのまま聞き耳を立てていると、


「――――しかし、それが理由だとしたら、別に気にしなくてもいいと思うんだがなぁ。例え殿下が小さかろうと誰も指摘なんてしないのになぁ」


(…………)


 隣を見るとジースが笑いを堪えていた。

 俺は背後に立っている事など夢にも思ってない本人に目掛けて声を発した。それも低い声で――――。


「ほぉーう、俺はそんなに小さいのかぁ……」


 本人であるアレク=レイビンは肩をビクッとさせ、ゆっくりと俺の方へ振り返る。アレクの顔が真っ青になっているのは言うまでもない。

 俺はそのままアレクを連行し、執務室へと向かった。





 執務室へ着くと中へ入る。

 中に入るなり、アレクをその場で正座をした。


「…………」


 俺は無言で圧を掛ける。

 アレクは終始俯いたまま微動だにしない。


「――アレク」

「っ!?」


 俺の一言に肩が跳ね、更に真っ青な顔になる。

 隣に立つジースはそんな様子を見兼ねて助け舟を出した。


「殿下、もうその辺にしてあげては? アレク団長も悪気は無かったのですから。それに、あの様に言われるのも仕方無い事ですよ。殿下のサボり癖は城中に知れ渡っている事ですから」


 ジースの助けに、アレクは涙目になりながらジースを見詰めていた。

 しかし、俺が怒っているのはそう理由では無い。アレクの最後の一言に腹が立っているのだ。

 そう、俺の最大のコンフレックスである、あの一言に――――。


「………………」


 怒りが収まらず、アレクに圧を掛け続ける。

 そんな俺に対して、ジースはやれやれと首を振った。


「殿下、今回の件に関してはアレク団長に反省文を提出させるのはどうですか?」

「反省文?」

「ええ、殿下が納得出来ない様なので、アレク団長に罰として反省文を書かせるんです」


 ジースの提案に俺は暫く考える。

 確かにこのままでは腹の虫が治らない。

 考えた末、俺は条件を付けて反省文を書かせる事にした。


「アレク、今回の件は反省文の提出で許してやろう。但し条件を付ける」

「条件、ですか?」

「ああ、一つは俺の指定した枚数で書く事、二つは俺の長所を十以上文に入れて書く事、三つはそれを明日までに書き上げる事だ。以上」

「あっ、明日!?」

「何だ?」


 俺はアレクを睨み付ける。

 アレクは少し間を空け、諦めた様に返事をした。


「…………いいえ、何でも有りません」


 アレクは俺の指定した枚数の用紙を持ち、重い足取りで執務室を出て行った。


「…………」

「何だ、ジース」

「いえ、殿下も容赦が無いと思いまして……」


 言い出しっぺの本人が何を言うのか。俺はジースの提案に条件を付けたまでだ。それに俺の性格を良く知っている癖に今更だ。知っていて言っているのだから、ジースの方が余程性格が悪い。

 俺は机の上に置かれている書類の山の中から一つ手紙を手にする。早朝に届いた手紙だ。差出人はウェンディース国の陛下、ヴァルト=ウェンディースからである。内容はシミによる件で国を救ってくれた感謝の気持ちと御礼をしたいのでウェンディース国に招待したいというものだった。


「……どうされるので?」

「………………」


 ジースが伺いながら聞いてくる。

 正直悩んでいる。

 ウェンディース国には俺の神眼と禁書庫にある古い文献で対処法を見つけたと伝えていた。もしあいつの持つ本で分かった等言えば、色々と面倒な事になりかねないからだ。

 今回の招待状に関しても一応出向くつもりだ。

 だが、そうした場合あいつをどうするかだ。一緒に連れて行くべきか、城に残しておくべきか、俺はそれに悩んでいた。


(一緒に連れて行けば、ヴァルト陛下に詮索される可能性がある。だが城に残すのも色々不安だ。それに――――)


「陛下がお戻りになられますしね」


 ジースは俺の言わんとする事を先に答えた。

 そう、近々親父が城に戻って来るのだ。

 あいつの情報は既に親父に知れてるだろう。城に戻れば必ずあいつに接触するのは分かっている。

 正直、俺の居ない間に接触されるのは困る。色々吹き込まれて欲しくない。そうなっては一緒に連れて行く他無い。


「ジース、あいつに伝えてくれ。明日早朝に城を出る」

「カリンさんもご一緒で?」

「ああ」

「畏まりました。その様にカリンさんには伝えて置きます」


 ジースは早々執務室を出た。

 俺は机の上にある大量の書類を見詰める。


「……徹夜だな」


 このいつ終わるかも分からない書類を今日中に終わらせないといけないと思うと頭が痛くなって来た。

 だが遣るしか無い。

 俺は書類を手に取り、溜息を吐きながら作業に取り掛かった。



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