22.クセのある二人、そしていよいよ講習開始
思わぬアクシデントにより、城の案内はティナがしてくれた。
ティナの案内はとても丁寧で分かりやすく、まるでバスガイドのお姉さんの様だった。
城の案内も終わり、昼食を済ませ、私とティナは調合室へと向かった。
「何か気が滅入りそう……」
正直、先生なんて柄じゃ無い。
「大丈夫ですよ! カリン様ならやり遂げられます! リラックスして下さい!」
ティナの応援に少し救われる。
重い足取りでいると調合室へ着いた。
ティナがノックをして先に入る。
「失礼します」
調合室に入ると皆ポーションを作っていた。
薬品の匂いが鼻を掠める。
この独特な匂いは私にとって落ち着く空間だ。
私達に気付いた調合師の一人が近付いて来た。
「どうも、ハウラ室長達はもう部屋でお待ちしていますのでご案内します。着いて来て下さい」
私達は調合師の後ろに着いて行く。
「この前は手伝って頂きありがとうございました。とても助かりました」
「いえ、あんな光景見て手伝わない訳にはいかなかったので」
「それに、黒いシミに関しても凄かったですよ! 恥ずかしながら僕は何も出来ませんでしたから……」
情け無いと調合師は言う。
「あっ、すみません。自己紹介がまだでしたね。僕、スタン=フォッドと申します。以後お見知り置きを」
スタンさんはそう言って、掛けている丸眼鏡をクイッと上げる。
「よろしくお願いします」
見た目からして優等生っぽい感じがする。学校とかだと委員長とか生徒会長とかやってそうだ。
「スタンさんは調合師としては長いんですか?」
「そうですねぇ、一応ハウラ室長とは同期ですから。
因みに僕は調合師のチーフ兼ハウラ室長の補佐をしています」
チーフということは調合師達を統率する立場なのだろう。言うなればリーダーだ。
「もし調合師で分からない事があれば僕に聞いて下さい」
「ありがとうございます!」
話をしながら歩いてると、前を歩いていたスタンさんが足を止めた。
「着きました。ここが講習場になります」
私は立ち止まり、建物を見上げる。
この前、アウラ室長が居た小屋よりも少し大きく、見た目も倉庫代わりに使っていたにしては立派な建物だった。
「さぁ、皆待っていますので中に入りましょう」
スタンさんは再び足を動かす。
ドアを開け、中に入る。
中は外観とは打って変わり、簡素な木造建てになっていた。廊下を歩いていると床がギシギシと鳴り響く。良く見ると床や壁には舗装された所が幾つも見られた。
「すみません。倉庫として使っていたので人の出入りが無く、所々破損している部分が見られたので応急処置として治してあります」
「あっ、いえ、大丈夫です」
山に残して来たお爺ちゃんの小屋も結構傷んでいた。それに比べたらまだ綺麗な方だ。
軋む床の上を慎重に歩いて行くと、一つの扉に差し掛かった。
スタンさんが扉を開けると、中にはハウラ室長と選ばれたメンバーであろう調合師達が数人程席に着いていた。
「いらっしゃい、カリンさん」
「こんにちは」
私は軽く会釈する。
ハウラ室長は席を立ち、私達の方へと近付く。
「今日は宜しくお願いしますわね」
「いえ、此方こそ宜しくお願いします!」
そして席に座っているメンバーの方に目を向ける。
(あれ? この子達は確か……――――)
席に着いてるメンバーで見知った顔が居た。確か見習い調合師と言っていた気がする。
すると、またあのツンツンした女の子と目が合った。目が合った瞬間、凄く不機嫌な顔付きになり、そのままプイッと顔を逸らした。
(……まただ。私何かしたんだろうか……)
会話等した事も無い筈なのだが、何故か嫌われている感じだ。
何もしてないのに嫌われている事に軽くショックを受けていると、隣に居たスタンさんが少し呆れた声を漏らした。
「すみません……。彼女はメイリ=イステリカと言いまして、この講習メンバーに入った事が納得出来ないみたいで……」
「どうしてです?」
「……彼女はハウラ室長の事を凄く尊敬してまして、調合師になったのもハウラ室長が居たからなんです。なのに講習メンバーに入れられてはハウラ室長の下で働けなくなると思っているんでしょうね」
その気持ち分かる気がする。尊敬している人を目指して調合師になったのに、その人の下で働けないのは確かに納得出来ないだろう。
「メンバーを変えてあげる事は出来ないんですか?」
嫌々講習を受けさせるのもどうかと思うし、そもそも興味が無ければ幾ら勉強をしても覚えられないし、楽しく無いだろう。楽しく出来ないのはストレスに繋がる。無理強いはさせたく無い。
だがスタンさん曰く、調合師は数が少ないのもあり人員を割きたく無いらしい。まだ見習い調合師である二人なら割いても然程支障が出ないので、仕方無くこのメンバーになったらしい。
「仕方無いですが、メイリには我慢してもらうほか無いんですよ」
そこまで言われてしまっては私からは何も言えなかった。
「因みに、メイリの隣に居る少し気弱そうな感じの彼女はサーラ=マキュアスと言います」
スタンがそれぞれ紹介していると、今度はサーラと目が合った。目が合った瞬間、サーラは何故かオドオドし始めて、何だか落ち着きを無くしていた。
「?」
そんな姿に疑問を抱いていると、スタンさんがメイリ同様説明してくれた。
「サーラは少し人見知りな所がありまして、調合師の人達には慣れて来たのですが、知らない人とかを見ると、あんな風に落ち着きを無くしてしまうんです」
それを聞いて、このメンバーで本当にやっていけるのか不安になって来た。どうやら今回集まったメンバーは少々クセが強い人達のようだ。
「まぁ、立ち話も何ですし、取り敢えず講習を始めちゃいましょうか!」
ハウラ室長の声掛けにより、私は教卓の前に立った。




