16.城の散策、そして元素と異能
執務室を出た後、ジースさんは城についての注意事項を伝えた。
「カリンさん、城の中はとても広いので迷われない様、ちゃんと私について来て下さいね」
「はい!」
「それから、城にいる時は決して一人にはならないで下さいね。城の外もまたいずれご案内しますので、それまでは城の外も出ないで下さい」
「分かりました!」
「それではご案内しますので、ついて来て下さい」
ジースさんに言われた通り、私は後に付いて行った。
最初に案内されたのが、医療術師が主に仕事する、医療室であった。
医療室は昨日行った調合室と隣接していた。
「医療室は主に怪我や病などを診る所です。その隣にはそれぞれ部屋が用意されていまして、ベッドなどが備え付けています」
(成る程ね、つまり病院みたいな所なのね)
「此処は大体騎士団の方達が通う事が多いですね」
そう言って、ジースさんは医療室をノックする。
「失礼します」
ジースさんが中に入ると、私も後を追うように中に入る。
ジースさんは近くにいた医療術師に説明をする。
「すみません。今この方に城の案内をしていますので、中を少し見て回ってもよろしいでしょうか?」
「こっ、これはジース様!? どうぞ、ゆっくりご覧になって下さい!」
医療術師はジースさんの顔を見るなり慌てていたが、快く許可が出た。
医療室の中は調合室よりも広く、人の数も多かった。
「ハウラ室長も言ってましたが、やはり医療術師は多いですね」
「はい。騎士団の人数が多いので、このぐらい人数が居ないと回らないんですよ」
ジースさん曰く、騎士団が怪我をするのは頻繁にあるらしく、訓練さえ怪我が絶えないとか。
お陰で医療術師はいつも忙しいらしい。
「まぁ、訓練とは言え、常に真剣でないと死と隣り合わせですからね」
「そう、ですよね」
昨日の出来事を思い出す。
死者が出なかったから良かったものの、出てもおかしくはない出来事だった。
本当に助かって良かったと心から思う。
「さて、次の方へ案内しますね」
「はい」
ジースさんは医療室を出て、次の場所へと案内する。
「次は騎士団の訓練場に行きましょうか」
騎士団の訓練場は中央部の奥の方にあるらしい。
中央の廊下を歩く際、綺麗に整備された花壇や噴水などがあり、改めてお城に来てるんだと実感する。
「綺麗ですねぇ」
「ここも綺麗ですが、ここよりも綺麗な所がありますので、後程案内しますね」
「はい!」
私は楽しみにしながら、綺麗な庭のある廊下を進む。
庭を抜けて少し進んだ先に、騎士団の訓練場があった。
「ここが騎士団の訓練場になります」
「おっ、大きいですね」
訓練場の建物は体育館並に大きく、想像してたのとは少し違うイメージだった。
「てっきり訓練場って外でするものだと思ってました」
「ええ、大体は外ですが、天候に左右されないよう室内の方を作ったんです。勿論、外にも訓練場はありますよ」
そう説明した後、ジースさんは訓練場の中へ入る。
訓練場の中に入った瞬間、更に私は驚く。
体育館の様に広々とした空間だと思っていたら、各々部屋が設置されていた。
「訓練場の中にはそれぞれ種目別で部屋が割り振られてるんです。剣術、マナ、筋トレなど様々な種目があるんです」
「そうなんですね、ちょっとハイテクな感じでびっくりしちゃいました」
「そうですよね。これらを設立する様指示をなさったのは殿下なんですよ」
「そうなんですか?」
「はい。殿下は騎士団の指揮を上げる為、色々考えた末に出来た施設なんです」
やはり、私が思っている以上に国の為、城の配下の為に色々考えてるんだと改めて思った。
「あの王子も大変なんですね」
他人事の様に聞こえてしまうが、やっぱり凄い立場の人物なんだと思った。
「今は騎士団の者が数名訓練してますので、少し見ていきましょうか」
ジースさんは手前にある部屋の中に入った。
中に入ると騎士団の人達がもの凄い勢いで剣を奮っていた。
どうやらこの部屋は剣術の稽古場の様だ。
すると、訓練してる人達の中に知ってる顔を見つけた。
向こうも私達に気付いたみたいで近付いて来た。
「ジース様にカリンさん!」
近付いて来た人物は先程王子の執務室で会った第三騎士団の団長さんだった。
確かアレク団長だ。
「どうしてこちらに?」
私達が来た事にアレク団長は疑問に思ったようだ。
「実はカリンさんに城の案内をしてまして」
「そうなんですね。とは言え、訓練なんて見てもあまり面白くないと思いますけど…」
アレク団長は苦笑し、指で額を掻く。
その言葉に私は首を振り、否定する。
「そんな事ないですよ! 皆さん一生懸命で凄くカッコいいです!」
私の言葉に目を見開いていたが、その後少し照れ臭そうに笑った。
「女の人にそう言って貰えると、なんだか力が湧いて来ますね。ありがとうございます。凄く嬉しいです」
アレク団長が照れるものだから、私まで照れてしまった。
(ヤバッ!? 私ちょっと恥ずかしい事言っちゃったかも!?)
気付いてしまったら余計に恥ずかしくなって来た。
そんな様子をジースさんが横で微笑ましく見ていた。
「え、えっと、それでは私はこれで失礼します。団長が訓練をサボってるなど、団員に思われては指揮が下がりますので」
そう言って、アレク団長は元の持ち場に戻って行った。
「彼は剣術にとても優れている方なんですよ。彼は他の方々の様に強いマナを持ち合わせてないんです。ですが剣術の腕はかなりのもので、剣術だけで団長まで昇り詰めた方なんです。それに彼は団員に良く慕われています。性格の良さが団員に伝わってるのでしょうね」
確かに、アレク団長は見ても分かる程、優しい性格をしている。
自分を犠牲にしてまで仲間を助ける人だ。皆に慕われるのが良く分かる。
剣術の訓練風景を見た後、次の部屋へと向かった。
「次の部屋はマナの訓練を行う所です」
「マナの訓練ってどんな事をするんですか?」
正直想像が出来なかった。
魔法の様に何かを出したりするものだろうか。
「そうですねぇ、マナにはそれぞれ元素をお持ちなのはご存知ですか?」
「いいえ、マナにも元素なんてあるんですか?」
「はい、マナ元素はとても強いマナを持っている人に見られるモノなんです」
ジースさん曰く、マナが弱い人は元素因子が薄いらしく出せないのだそうだ。
だが、強いマナを持つ者は元素因子が濃いので元素が造られる構造になっているらしい。
「ジースさんや王子も元素を持っているんですか?」
「はい、私も殿下も元素は持っています。そもそも元素とは地、水、風、火等、様々な属性があるんです。私は風の元素を持っています」
「王子はどんな属性を持ってるんですか?」
「殿下は氷の元素を持っています」
確かにあの王子にはお似合いな属性だ。
そして元素の話を聞いて、一つ気になることがあった。
「そう言えば、王子は神眼を持っていますよね? これは元素とか関係があるんですか?」
同じマナを使うのに違いがイマイチわからない。
その疑問にジースさんが答える。
「神眼は元素とは違います。神眼の様な特殊なモノは"異能"と言うんです」
「異能…」
そう言えば、お爺ちゃんの手紙に異能って文字があった気がする。
「異能ってなんなんですか?」
「そうですねぇ、異能に関しては資料が少ないのでなんとも言えないのですが、分かるとしたら"血"ですかね」
「血?」
「はい、異能を使う者は代々血筋により受け継がれるものなのです。ただ、血縁関係が皆受け継がれるとは限らないんです。殿下は受け継ぎましたが、陛下や第一王子である殿下の兄上も受け継がれておりません。恐らく殿下は異能を持つ血が濃いのでしょう」
「じゃあ、誰でも異能を使える訳じゃないんですね」
でも、お爺ちゃんの手紙によれば異能者が居るから薬師が少なくなったと書いてあった。
これはどういう事なのだろうか。
色々考えている内に二階にあるマナ訓練所の部屋へと着いた。




