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14.王子との朝食、そして思わぬ気遣い


 小鳥の(さえず)りで目を覚ますと、窓の外は太陽が上り、部屋を明るく照らしていた。

 昨日は色々あり過ぎて疲れていたのか、ぐっすりと眠れた。

 お陰でいつもより遅く起きてしまった。


「……夢じゃあ、なかったみたいね」


 正直、昨日の出来事が全て夢であったなら、どんなに良かった事か……。


「まぁ、異世界に来た時点で夢もなんもないけどね」


 私は取り敢えず、ベッドから起き上がり、横に置いていた靴を履く。

 すると、タイミングを図られたかの様にドアの向こうからノック音と共に声を掛けられた。


「カリンさん、お目覚めになりましたか?」

「あっ、はい!!」


 ジースさんの声だった。

 私は慌てて、寝間着を脱いで横に掛けてある服を着る。ぐしゃぐしゃになった髪も手櫛で整える。


「入っても宜しいでしょうか?」

「はい、どうぞ!!」


 ジースさんが部屋に入って来ると、いつもの笑顔で挨拶をして来た。


「おはようございます。ゆっくり眠れましたか?」

「あっ、はい、凄く眠れました!!」


 慌てていた事もあってか、返事もなんだかおかしくなった。

 少し恥ずかしくなり俯いていると、ジースさんは気にしていないみたいで話を進めてくれた。


「それは良かったです。慣れない所ですから、ちゃんと休めていたか心配で。

 それで、まだ疲れが取れてないと思い、暖かい飲み物をお持ちしたんです。どうぞ」


 ジースさんはまだ湯気が漂うカップを私に差し出した。


「ありがとうございます」

「熱いのでお気をつけ下さい」


 私はカップに入ってる飲み物をふぅーふぅーしながら、ゆっくり口へと運んだ。


「……おいしぃ」


 飲んだ瞬間、甘いミルクが口の中いっぱいになっていく。

 身体全身がポカポカになっていった。


「……これ、生姜も入ってますね」

「はい、少しだけ入れてあります。身体があったまるんですよ」


 生姜は冷え症や血行促進に効果がある。なので身体がポカポカとあったかくなるのだ。

 甘さもあるので疲れが一気に吹っ飛んだ。


「喜んでくれて何よりです」


 ジースさんは私が飲む姿を笑顔で見詰めていた。

 ちょっと気恥ずかしさを残しつつ、私は全部飲み干した。


「朝食の準備も出来ていますので、食堂の方へ行きましょう」

「はい!」


 私はジースさんの後を追い、昨日向かった食堂へと向かった。


「そう言えば、あれからあの王子はずっと仕事してたんですか?」

「そうですねぇ、本人を見て頂ければ分かりますよ」


 そう言って、またいつものニコニコな笑顔を向ける。


(……やっ、やっぱりジースさん、怖い……)


 優しい顔をしているのに、何故か背後にどす黒いオーラを背負っている様な、そんな感じがした。

 私は苦笑いしつつ、ジースさんとの距離を少し離した。

 そうこうしている内に食堂へと着いた。

 ドアを開けて食堂の中に入ると、美味しそうな香りが鼻を掠めた。


(いい匂い……)


 食堂の中が朝食いい匂いがいっぱい広がっていた。

 そして、私がいい匂いにつられていると急に横から声がした。


「邪魔だ、早く座れ」


 びっくりして横を振り返ると、そこには王子が立っていた。


「おっ、おはよぉ」

「…………」


 驚きながらも一応挨拶してみるが、見事にスルーされた。


(なっ!? 挨拶したんだから何か返しなさいよ!!)


 無視された事に苛立ちを覚えながら、私は昨日と同じ席に着く。


「殿下、カリンさんが折角挨拶をしていらっしゃるのですから、殿下も挨拶してあげて下さい! 挨拶は基本なんですよ!」


 私の挨拶を無碍にした事で、ジースさんは王子に対して注意した。

 何か言い返したそうな顔をしていたが、ジースさんのあの笑顔で何も言えなくなったようだ。


「ジースさん、別に気にして無いので大丈夫ですよ」


 本当は凄くムカついたけど、敢えて言わない。


「カリンさんはお優しい方ですね。殿下とは大違いですよ」


 本人を前にして堂々と言い張る。

 私はチラッと王子の方を見ると、不貞腐れた顔をしていた。

 それによく見ると、目の下に隈が見える。

 ジースさんの言う通り、顔を見れば一目瞭然だった。


(あの様子だと徹夜明けみたいね。だから機嫌が悪いのか……)


 私は仕方ないと思いながら、目の前に広がる美味しそうな朝食を食べる事にした。

 朝食も夕食と同様、めちゃくちゃ美味しくて、私はペロリと平らげた。

 それを終始見詰めていた王子は、何故か少し引き気味でいた。


「なっ、何よ?」

「……いや、お前のその食いっぷりに、段々餌を食べまくる豚の様に見えてな、つい引いてしまったんだ」

「ぶっ豚!? ちょっ、ちょっと聞き捨てならないんだけど!! 誰が豚なのよ!!」


 私はテーブルを乗り越える勢いで立ち上がった。

 自分で言うのもなんだが、私は一度も太った事はない。体重は維持し続けてる為か、あまり太らない体質なのだ。

 でも何故か、昨日からめちゃくちゃお腹が空いてて、ついいつもより食べてしまう。

 食べる事は好きだけど、普段はそんなに食べない。


「普段はそんなに食べないわよ! でも何だか知らないけどお腹空いてて食べてしまうのよ!」

「…………」


 勢いのまま言ってしまうと、何故かまた王子に見詰められる。


「こっ、今度は何よ!?」


 じっと見詰められるとどうしていいのか分からなくなってしまう。

 動揺する私の様子を見て、王子は不敵に笑みを浮かべた。


「いや、何でもない」


 なんだ、それは……。

 何でもない筈がない。最後の笑みが物語っている。


「何なのよ! 教えなさいよ!」


 王子の態度にムキになる。


「………………」

「無視しないでぇ!!」


 王子は構わず、朝食を摂る。

 一体何だって言うんだ。

 訳も分からず、私は納得いかないという顔をする。

 すると、今まで黙って私達のやり取りを見ていたジースさんが、微笑みながら口を開いた。


「カリンさん、殿下はカリンさんを心配してるんですよ」

「ジース!!」


 黙りを決めていた王子が急に声を出す。


「心配?」

「はい、昨日カリンさんを急に城へ連れて来たのもそうですが、治療やらで色々大変でしたからね。疲れが残っていないか心配だったんですよ。それに、朝持ってきたホットミルクも殿下に頼まれて持って来たんですよ」

「え…」


 私は急いで王子の方を振り返る。

 王子は横を向いていて顔が見えなかったが、耳が赤くなっているのが見えた。


(マジですか…)


 あの王子が本気で照れている姿を見て、本当に心配してくれたんだと思い、嬉しくなった。


「心配してくれてありがとう! でも大丈夫よ! あのホットミルクのお陰で元気でたから!」


 笑顔で答えると、王子はフンッとそっぽを向いてパンをかじっていた。


(素直じゃないわね)


 それでも王子の小さな気遣いが、私にとって心も身体も軽くした。

 朝から思わぬ出来事にルンルンな気分でいると、朝食を食べ終わったアルカが昨日の事について話があると、王子とジースさんと共に昨日城に入って一番最初に入った執務室へと向かった。



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