13.二人の会話、そして満天の夜空
フッと窓の方を見ると、いつの間にか夜になっていることに気付く。
(もうこんな時間か……)
一息吐こうと机の上を見るが、まだまだ書類が山積みで、溜息が出る。
これでは朝までかかりそうだ。
気怠い思いでいると、ドアをノックする音がして、俺は慌てて手を動かす。
「入れ」
ガチャっとドアが開いた先には、俺が思っていた人物がいつもの笑顔で立っていた。
「失礼します、殿下」
恐らく俺がまたサボっていないか、確認しに来たに違いない。
「どうやらずっと頑張っていたようで良かったです。また私の見えない所でおサボりになるかと思っていましたが」
やはりそうだった。
「…まだ根に持ってるのか?」
「そうですね。これまで私の監視を掻い潜り、挙句に私に神眼をお使いになったのですから、怒らない方が無理ですね」
笑顔で語っているが、目が笑っていない。
「ジース、確かにサボった事と神眼を使ったのは悪かったが、結果、俺がサボらなかったら、あいつとは出会って無かったし、今回の件もどうなっていたか分からなかった」
「それはそうですが、だからと言ってサボっていい理由にはなりませんよ?」
言い訳をしてみたが、ジースには効かなかった。
(ッチ! いつまでもねちっこい…)
「何か仰いましたか?」
心を読まれた。
もはや悪魔の様な微笑みだ。
俺はこれ以上ジースを刺激しない様、話を逸らした。
「……ところでジース、あいつはどうしてる?」
「カリンさんですか? カリンさんなら出された料理全て食べまして、今はお部屋の方で休まれていますよ」
「……そうか」
「…………」
ジースは黙って俺を見詰める。
「なんだ?」
ジースはさっきとは一変して困った様な顔をする。
「……カリンさんには仰らないんですか?」
ジースの言おうとしている事は分かっている。
「俺がそれを話したら、あいつが困惑するだろう。それに本人は気付いてない。なら、まだ話さない方がいい」
そう、まだあいつには話さない方がいい。
あいつは今まで自分の中に起きている事に気付かずに過ごしていたんだ。
無意識とは言え、あいつのアレは周囲に悟られては、あいつが危険だ。
あいつは分かりやすい。
なら、まだ言わない方が得策だ。
しかし興味本位で拾ったのが、とんでもないモノだったとはな。
「ジース、この事は父上にも報告はするな」
「陛下にも、ですか?」
「正直、父上も信用ならない。何を考えてるか分からない人だからな」
「……分かりました」
「それとジース、信用なる人物を連れて来てくれ。万が一の為に備えとく」
「私がお選びになっても宜しいので?」
「ああ、頼む」
「かしこまりました」
そう言って、ジースは部屋を後にした。
俺は再び窓の外を眺める。
(今日は満月か…)
夜空には雲一つ無く、月だけが綺麗に輝いていた。
明日がどんな日になるのかを考えながら、俺は再び手を動かした。




