3話 使えないスキル?
教会に入った僕達は、その神秘的な空間に目を奪われる。
「凄いね〜」
「ああ。こんなの初めてだ」
壁や天井は、真っ白でそれでも複雑な構造で作られている。そんな事を考えていると背後から声が聞こえた。
「綺麗でしょ?みなここに来る者は、一度必ず足を止めるのだ」
振り返るとそこにいたのは40〜50歳ぐらいのおじさんで顔には、皺が所々に刻まれている。白一色で統一され、所々に金色の刺繍が入っている服を着た神官様だった。
「これは、神官様!お目に掛かり光栄です」
アヤがすぐに跪き、神官様に挨拶をする。僕もそれに並んで挨拶をする。
「ご挨拶申し遅れました。ルカ、ルカ・エヴェルトです。準男爵ルイス・エヴェルトの息子です」
「私は、アヤ。アヤ・シュタインです。子爵カイル・シュタインの娘です」
神官様には、アヤも跪かなければならない。神官様は、貴族で言うと公爵の位なので僕達は頭が上がらない。
「これはこれは、ご丁寧にどうも。私はこの王都の教会の神官を勤めている、ワルス・キラーズだ」
「あの…………」
「何だね?」
僕が呼びかけると頭を?にした神官様がこちらを見る。
「その……笑わないんですか?僕の家は、準男爵ですよ?今まであって来た人は、僕達家族に蔑んだ目を向けて来たので…………」
エヴェルト家の人達は、貴族と言っても1番下の準男爵であり上級貴族は平民と同じ目で見て来ることが多かった。僕の中では、それが堪え難い苦痛でありこの家に産まれた事を後悔する日も度々あった。そんな中でアヤと出会いこの世界がまるで眩しい太陽に変わった瞬間だった。その日から僕の日常は毎日、楽しくて仕方がなかった。アヤに会わなかったら今の自分はいないと断言できる。アヤには、本当に感謝してもしきれないぐらいだ。
「私はね、自分が偉い人間だからって自分よりも下の人を見下したりするのは、好きじゃないんだよね。だってみんな同じ人間、同じ命を持った人達だしね。それと、創造神様もそんな事は望んでないと思うからね」
僕は、その言葉を聞いて何か胸から込み上げて来る物を感じた。
(ああ、この世界にもこんなにいい人がいるなんて………創造神様ありがとうございます)
「ありがとうございます。そんな事を言われたのは初めてです」
「それは、良かった」
「良かったね!ルカ」
アヤを見るとまるで自分の事のように嬉しそうにしていた。
「そう言えばここに来たのは、スキルのことだったね」
「「はい!」」
僕達は、スキルの事をすっかり忘れていた。早く聞きたい事もあり少し興奮気味で返事をする。
「1人ずつやるからね。まずそこのお嬢さんから」
「はい!」
アヤは、目を輝かせながら神官様の方へと向かう。神官様の元へ着いたアヤに神官様は目を閉じて集中する。
「創造神様よ。私に人を見る力を与え、そしてこの幼き命が長く灯るように見守っていてください」
ポワァァァァァ
神官様がそう言うと、白い光がアヤと神官様を包み姿が見えなくなる。10秒ぐらい経ち光も収まりアヤと神官様の姿がハッキリと見えてくる。
「これは、素晴らしい!」
神官様は、今日一の声でアヤに向かって言う。
「どうでした!?私のスキルは!?」
「お嬢さんのスキルは、回復魔法(中)と風魔法(大)だね」
神官様がそう言うとアヤは、満面の笑みでこちらを、振り返える。
「ルカ!私、凄いかな?」
「ああ!アヤは、やっぱり凄いな」
僕がそう言うと、顔を赤くしていやんいやんしてしまうアヤ。回復魔法(中)と風魔法(大)は、本当に凄い事だ。普通の人は、スキル1つだけで風魔法(小)などだ。小や中や大などと言うのは、その魔法の強さを表している。魔法の強さは、全部で5つあり下から、
小、中、大、超大、極大となっている。
中でも、王国の護衛になれることだって出来るし、大なら国王の側近になれるだろう。それでこそ、超大なら英雄と言ってもいいだろう。極大は、ここ何百年も現れていない。最後に現れたのは、400年前だ。
たしか、その人の名は、アイル・エヴェルトと言う名前だったか?家と同じ家名は、偶然だろう。
金があれば、もっと調べられるのに…………貧乏な家じゃ本など到底無理な話だ。
「次は、ルカの番だよ!」
「ああ!」
アヤにそう言われ、急いで神官様の方に行く。
「神官様、よろしくお願いします!」
「はい、こちらこそ」
僕がそう言うと神官様は、先程アヤにやった事を繰り返す。
2人が白い光に包まれ、やがてその光がおさまると神官様が頭を?にして僕のスキルを告げる。
「君のスキルは……………囁きだ」
「囁き?」
今まで聞いた事もないスキルに僕は、頭を悩ませる。
「神官様。囁きとは、どう言うスキルなのですか?」
「それは、私にも分からない。このようなスキルを見たのは、初めてだ」
神官様も知らないスキルと言うことは、もしかしてハズレスキルなのか……………………。
「そう落ち込むでない」
「そうよ、ルカ。まだハズレスキルだと決まった訳じゃないし…………」
「いいよアヤ」
アヤは、僕の気持ちを察したようだが、今の悲しみからはそんな事はどうでもいい。
(何で、僕ばかりこんな目に遭わなくてはならないのだ?なぜ、僕ばかり苦しまなくてはならないのだ?なぜ!どうして!教えてくれ!誰でもいいからこの苦しみについて教えてくれ!僕はただ、今まで世話になった母上や父上それとメイに、少しでも嬉しそうな顔をしてほしかっただけなんだ!それなのに、囁きとは何だ?ふざけているのか!)
ルカは、胸が張り裂けそうな思いで自分の心に語りかける。そんな事をしても、誰も返事をしてくれない事を、分かっていながらルカはやめずに語り続ける。
「ねぇ、ルカ…………大丈夫?」
「大丈夫…………だよ………アヤ」
アヤに悟られないように、笑顔を作る。アヤは、それでも僕が大丈夫じゃない事を、気付いたらしい。
「ルカ!さっきは、ごめんなさい!自分のスキルを自慢するような事をして」
「いいよ、アヤは天才だって元から分かっているし」
アヤはまた悔しそうな、それともどこか過ちを犯したような顔をする。
「今日は………もう疲れたよ。アヤ、帰ろう」
「う、うん………分かった」
「ありがとうございました。神官様」
「ああ」
神官様も、同情するような悲しそうな目を向ける。僕にとってそれは、自分に惨めさを感じさせるだけだった。
教会を出て、王都の門を潜り外に出る。道中の会話は、行きと比べると全くと言っていいほど、静かだっだ。途中途中に、アヤが話しかけて来るがすべて素っ気無い態度で返してしまう自分に、どんどん嫌気がさしていた。家に着く頃には、アヤの口数も減っていき2人の間に不穏な空気が流れる。
1時間半頃、やっとの思いで家に着きアヤと軽く別れを言う。
「ルカ…………じゃあね……」
「うん……」
アヤは、何度も此方を振り向き心配した目で自分の家に帰って行った。
(僕も、帰る………か)
とぼとぼとした足取りで家のドアを手で押し開ける。音に気付いた誰かが2階から、バタバタと音を立てて降りて来る。
「お兄様、お帰りなさい!」
「あぁ。ただいま………」
見ると、満面で笑みで階段から降りて来たメイだった。僕は、アヤと同じように、素っ気無い態度で返すもメイは、そんな事には気付かないらしい。
「どうでした?お兄様」
「別に、そこら辺の人と同じだよ」
流石に、僕の機嫌に気付いたメイは、罰の悪そうな顔をする。
「僕は、自分の部屋で休む事にするよ……」
「わ………分かりました。ごめんなさいお兄様…」
騒ぎを聞きつけた父上と母上が来るも、事態を察した2人は、メイを連れて奥へと促すようにする。
「ルカ、今日はゆっくり休みなさい」
「はい、母上」
母上と父上も、アヤと同じ心配した目をしながら奥の部屋へと消えていく。
階段を上がり自分の部屋のドアを開け、そのままベットに倒れ込む。
「はぁーー…………アヤとメイに明日謝らないとな……」
今日は、疲れてた事もあり直ぐに、夢の世界へと旅立ってしまった。
♢♦︎♢♦︎♢
『………て』
(誰かの声が聞こえるような)
まだ深夜と言う事もあり、頭の回転が追いつかない。
『起きて』
(やっぱり!でも、誰だ?)
流石に目を覚ましたルカは、声の正体を探る。
『こっちです』
そんな声が聞こえたと思うと、頭が急に痛みだし、その場で蹲ってしまった。
「痛い………何なんだよ」
頭を抑えながらゆっくりと目を開けると、目の前に光の柱が見えて来た。意味が分からず呆けていると、またあの声が聞こえて来る。
『その場所を目指すのです』
言われた瞬間手足が、勝手に動き出し自分の意志とは関係なく、光の柱へ走り出していた。
ドアを蹴飛ばし、階段を転ぶように降り、庭の柵を飛び越えて果てしない光の柱へと向かう。
だんだんと、走る事が気持ち良くなりいつしか、自分の力で走っていた。
途中にモンスターや人などが、自分を振り向き驚いた顔をするが、今はそんな事はどうでもいい。
「あと少し、あと少しだ!」
夢中で走っていたので、光の柱が直ぐ目の前に迫っている事に気付かずにいた。
気付いた時には、光が放たれている場所までもが、見えていた。そこは、洞窟だった。
「よっしゃあ!走りきったぞ!」
まだ12歳が、この距離を走ったと信じる者はいないだろう。なんせ、自分の家から100Km以上も離れているのだ。無我夢中で走ったとはいえ、この距離を数時間で着いたとは、もはや化け物と言ってもいいだろう。
「そう言えば夢中で走っていたから気付かなかったけど、ここどこだよーーー!しかも、雪まで降ってるじゃん!」
ルカのいる場所は、吹雪と言ってもいい程の雪が降っており自分の肌を打ちつけ、当たる度に背筋が凍りそうになる。
「早く、洞窟の中に入ろう」
その洞窟は、とても不思議な場所だった。外の温度をまるで遮断しているかのように、とても快適だ。夜なので、暗いと思っていたらそんな事はなく、むしろ明るいぐらいだ。明るさの正体は、鉱石だ。
(いや、これは宝石か?)
そんな事を、考えているとまたあの声が聞こえてきた。
『こっちです』
すると、次は光の柱ではなく光る道が目の前に現れた。
「ここを通れってことかな?」
僕は、その光る道を進んで行く。洞窟は、以外と長く案内がないと迷ってしまうほどだった。
数十分歩いた頃、開けた場所に来る事が出来た。天井が空いていて、真ん中に祭壇らしき物があり、天井から降り注ぐ光が当たりなんとも言えない空気を放っている。
「どこだここ?」
本日二度目の、言葉を放ったのだった。
投稿が遅くなり、すみません。
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